DRIFTER

「しばらくぶりねジャスティン。調子はどう?」


「まずまずさ。先月は危なくアマゾンの奥地で焼き討ちに遭うところだったけどね。それよりCANDY、もっと声を掛けて欲しいな。キミの依頼なら喜んでディスカウントすると前から言ってるじゃないか。」

イタリア訛りの英語で、相変わらずレディーの心を掴むコツを心得ている。


「フフフ。あたしにもプロフェッショナルとしてのプライドがあるもの。仕事を始める前からまけてくれだなんて言いたくないわよ。失敗したら形振り構わず頼むけれどね。」


「キミが失敗したら、ボクらの所為でもあるじゃないか。ボクらは運命共同体なんだからね。忘れないでくれよ。」


「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。今回は事前連絡しておく時間も無かったので、うちのボスから連絡が行ったと思うけど、詳細は聴いてるかしら?」


「事の次第は理解しているよ。もっともこれからの具体的な動きについては、おふたりの指示を仰ぐ様に会長から申し使っているけどね。」


とまあこんな感じで、ボス共々配下のトレジャー・ハンターまで、一様に世話になるケースもある。

特に今回はWTHAの威信が掛かっている訳だから、いくらあたし達がルーキーだといっても失敗は絶対許されない。

幾ら金が掛かってもいいから、スペシャリストに依頼してよしとのお許しを得ていた。


「実はまだあたし達も今回の仕事の全体像を把握しきれてないの。だから、ポイントポイントで状況判断しながら作戦を立てていく様になると思うの。焦れったく思うところもあるかも知れないけれどどうか力を貸して頂戴ねジャスティン。」


「勿論だともCANDY。ボクに出来る事があれば何でも言っておくれよ。」

彼とは、以前ボリビアの古代遺跡発掘で行動を共にして以来の仲で、特に南米や中東での仕事で、同行を依頼する事が多い。

但し、彼自身が非常に有能なプロフェッショナルである事から、他のトレジャー・ハンターとの競合になる事も多く、必ずしも此方の希望が叶う訳ではない。結局は早い者勝ちがこの業界の常識。けれども、今回は恐らく彼の力が必要となるであろう事が予想出来たので、エマジェンシーなミッションを印象付ける上でも、誰よりも力関係が上位の会長自ら直々に依頼を掛けてもらったって訳。どの業界でも大切なことは同じ。最終的にはコネクションと縦割りの優位性がものを言うのよね。戦略家は、こうした準備段階から人を動かしていくものなのよ。根回しは効率的に、トップクラスに君臨するボスほど上手に使えってね。そうすれば、自分もトップの力を有したのと同然になるのだから。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る