CONFIDENTIAL TALK
「話は17世紀初頭にまで遡る。とある錬金術に関する書籍がヨーロッパで発表された。当時はまだまだ教会が権力で施政を支配していた時代だ。錬金術などといった真新しい学問なんぞは如何わしい、妖げだとして異端視の対象とされていた為、当初はごく限られた者のみにひっそりと流通していた。だがその斬新な主張や、見たことのない洗練された精神性によって、当時の流行の先端をいく詩人や文筆家、哲学や自然科学を中心とした思想家らが虜となり、次第に愛読者の数を増やしていった。彼らの口コミによって、その知られざる存在であった件の書は、倍倍的に噂が噂を呼び、たちまちの内に多くの人々に知れ渡ることとなる。しかしながら、流行の中心源となるべき肝心の著者が何者であるのか、その正体の一切が謎のベールに包まれており、読者の誰も知り得なかったことから、その噂には嘘か誠か虚言に近い尾ひれがつきまとう様になり、其れが益々人々の耳目を集めることに繋がったという。」
ここまで一気にまくし立てて説明した所で、会長はグラスの水で喉を潤し、一息入れた。
「とても興味深い話ですね。」
おとなしくそばだてていた耳を休めると、あたしは合いの手を挟んだ。
これまで錬金術についてあたしの知っている知識と云えば、正直なところ、映画や小説の題材になっている様な眉唾なものばかりだった。
でも会長にたった今聴かされた話は、これは社交辞令でもなんでもなく、いちトレジャー・ハンターとしての知的好奇心を存分にそそられるプロローグに思われた。
あたしのハートの琴線に、熱反応して伝わってくる。
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