第5歩 〖微笑〗

 少女は白銀の髪を揺らし、そう儚げに微笑んだ。


 「・・・・・・・・・え?それって・・・」

 「そういう、決まりなんです・・・」

寂しそうに、そう言って彼女は笑った。

真紅の瞳をほんの少し、潤ませながら。


 「あ、そうだっ!お腹、空いてますよね?冒険者さん」

話題を切り替えるように、少女は胸の前でぱんっと手を叩き、そう問うてくる。

「え?あ、うん・・・。確かに、空いてるけど・・・・・・・・・」


 ーーーそういえば、僕はどれくらい寝ていたんだろう。

   随分とお腹が空いている気がする。感覚的には、2食程抜いたくらい

   かな・・・。

「では、少しお待ち下さい!すぐに持ってきますので!!」

そう言い、少女は部屋を出ていった。


 「・・・それにしても、綺麗な部屋だなぁ」

今、レイが座っているベッドには四方にカーテンが付いている。

そして、見上げれば天井にはシャンデリア。

外見からも想像がついたが、すごい豪邸だ。


ーーーあの子一人だと言っていたけど、この家の家主は・・・・・・・・・?

   というか、そもそも、なぜこんな森林地の中にこんな・・・。

   それに、さっきの彼女の言葉は。


   ・・・・・・・・・分からないことだらけだ・・・。




 しばらくして、少女は戻ってきた。

「熱いかもしれないので、気をつけて下さいね?」

そう言ってスープの入った椀を差し出してくる。

「あ、ありがとう・・・ございます」

受け取ったスープを口に運ぶ。


 「どう、ですか?」

彼女は恐る恐るそう、聞いてきた。

「!・・・おいしい・・・・・・・・・」

「よ、良かったです・・・。そう言って貰えて」

彼女は、ホッと胸を撫で下ろす。


 「これは、君が・・・?」

 「はい、幼いころより自分で作ってきたので」


 ・・・また、その微笑だ。

寂しそうに、悲しそうに、彼女は笑う。



 気づけば、レイは少女の頬に手を伸ばしていた。


 「・・・・・・・・・え?」

驚いた様子で彼女はレイをじっと見つめた。

「あ・・・や、ご、ごめっ!」

レイは慌てて、手を離す。

「い、いえ!大丈夫、れひゅ・・・」

ーーーれひゅ?

彼女の顔が若干赤いのは、気のせいだろうか。

「と、とにかく、スープ。飲んじゃって下さいね?」

ガタッと、椅子を鳴らし、勢いよく立ち上がった彼女はそう言い残し部屋から出ていった。


 ◆◆◆


 少年は出会った。

 少女は出会った。

それは偶然か、それとも必然か。

奇跡か、運命か。


 彼等は歩いていく。

 道を進んでいく。








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