第13話

〖第一章  交流会・運動会〗


ヴェアハノンはいまだどこかに隠れたままで出てこない。

そのままでいてくれるのもいいが毎日いつ襲ってくるのかびくびくする。

私たちのグループの発表は成功に終わった。

近くの城について調べようとしたのだがそれではつまらないと思ったので思い切ってその城を建てた人についてまとめてみた。

すると、以外にもクラスの評価が良かった。

しかも社会を教えてくれる先生からの評価も高かった。

この調子なら苦手の社会でももう少し頑張りましょうの評価はもらわないはず。


「せんせーおはようございます」

など一年生のかわいい挨拶がよく聞こえるこの季節。

四月は桜もキレイだしいいことばっかりで、一番好きな季節。

入学式がこの前終わり、一年生も学校にもうなれてきただろうか。

私はハルくんやサクちゃんと出会うまでひとりだったのを覚えている。

「一年生に戻りたいなぁ〜」

なんて冗談を言っていると身長のせいか、行っても間違えられないよとみんなから言われる。

大きくなって見返してやるなんて思っていると、

「ねーねー。小春こはるお姉ちゃん。みんな行っちゃったよ〜。私たちもいこーよ」

そうだった。

今は兄弟学級で遊ぶ濱っ子タイムだったのを思い出して、ハルくんとサクちゃんのところへむかった。

兄弟学級とは一・六年生、二・五年生、三・四年生でペアを一組ずつ分けていき、そのペアで水曜日の掃除の時間に遊ぶのが濱星小学校の伝統なた。

濱っ子タイムはその水曜日の掃除の時間のことだ。

私のペアは元気でかわいいい女の子で、山口ほのかちゃんだ。

本当は私の分身なのではないかというくらい私と性格も容姿も似ている。

違うところは髪の結び方が逆なの・・・・・と身長くらい?

「遅いよ小春!」

「遅いよ小春お姉ちゃん!」

ハルくんのマネをしたのは加賀樹かがいつきくんだ。

やんちゃでワルガキだが、女の子には弱いんだよね。

野球をやっているらしく坊主で丸顔。

目がくりくりしていてとってもかわいい。

「樹くん。お待たせ〜」

小春が抱きつくと樹は顔を赤くし、動かなくなっていた。

「小春! 早くしないとおわっちゃうよ」

「おわっちゃうよ」

本当に一年生はまねごとが好きだよね。

でも、そこがかわいいんだよね。

サクちゃんのペアさんは白崎心絆しらさきここなちゃんた。

髪は腰までの高さまであるロングヘアで、身体の割合が三対七と女子なら憧れるスタイルで美脚だ。

「本当に心絆ちゃんの足はキレイだし憧れるよね〜」

ほほをこすりながら言うのをみてさくらは少し軽蔑の目で見た。

しかし、心絆ちゃんはまんざらでもなさそうだ。

「小春お姉ちゃん! わたしは?わたしは?」

ほのかちゃんも何かほめて欲しいと言わんばかりは小春の服を引っ張り心絆ちゃんの足から話そうとする。

「ほのかちゃんの足もキレイだよ」

と、ほのかちゃんの足にもほほをこすり始める。

春翔と樹は二人揃ってため息をつき、あきれ始めた。

「んで、なにする?」

小春はもうみんな早く案を出してよ、誰のせいで時間がこくこくとなくなっているのよ!と言わんばかりに腰な手を当てながら言うと春翔たちはツッコミたくなったがこらえ、いや、スルーして、話を進めた。

小春は二人の足で温められたほほを膨らませ起こった表情を見せたがすぐに話に戻った。

すると、心絆ちゃんが

「ドッジボールやりたい!」

と言ってくれたのでドッジボールをやることにした。


「今日のドッジボール楽しかったね! ほのかちゃん強かったよ〜。バンバン当ててたもんね」

「えっへん! ほのか強い? 強い?」

ほのかちゃんは満面の笑みを浮かべ小春にデレデレだ。

「小春お姉ちゃんまた遊ぼうね!」

「また遊ぼうね!バイバイ」

ほのかちゃんと別れ教室に戻り、五時間目の授業を受けた。

五時間目は理科で星の勉強をした。

六時間目は国語で多くの人が寝ていた。


放課後になり、すぐに宮殿に行こうと思っていたが、ハルくんが六時間目からずっと寝ていて起きないので、起きるまで待つことにした。

三人になった教室ではハルくんを起こさないために小声で会話をしていると、パリーンと教室の窓が割れた音がした。

見てみるとグランド側の窓から教室へ何かが入ってきた。

初めは何か分からなかったがすぐに何か分かった。

「お主ら久ぶりじゃな。元気にしておったか」

私たちが本の中に吸い込まれてしまった時に出会った犬のシルクだった。

なぜ教室の窓から入ってきたのかなどツッコミたいことは山ほどあるが今はなぜこの現代に現れたのか知りたかった。

「シルクって昔の犬なんじゃないの? どうして今ここにいるの」

ハルくんが聞いてくれたが細かいことは設定上どうたらこうたらと訳のわからないことを言っていたので軽く流した。

ってか、ハルくん起きたんだ。

おはよう。

「そんなことよりお主らあの数のビートルをいとも簡単に倒してすごいのお。わしゃもビックリしたわ」

誉められたことは正直心の底から嬉しかったのだが三人の表情からはその嬉しさが感じられなかった。

シルクにどうしたのか聞かれ訳を話すとハルくんに銃を出すように求めた。


「要するにこの弾丸は銃のモードをチェンジする弾丸で、引き金を引くとシリンダーがまわってモードがかわるんでしょ? これを使ってあのビーストを倒して小春が封印していけばいいんでしょってかこれって前も聞いたような・・・・・・」

「そうじゃったか? 倒しただけでいいのはヴェアハノンだけじゃ。お主らの場合はそいつらの一体は運良く封印できたのじゃから大丈夫だとは思うが封印しなくては何度も生き返るから気をつけるのじゃよ」

シルクは心配性だな。私たちをもっと信頼してほしいと言いたいが会ったばっかりの人間を信頼するのは難しいよね。

すると・・・・・・

そこで時間切れを表すかのようにシルクは消えていった。

そしてハルくんの変身も溶けてしまった。


次の日の放課後私たちは教室で新任の中野氷織なかのひおり先生 (ひーちゃん)の到着を待っていた。

なぜ待ってあるかというと五月には運動会があるので、実行委員になったので集まることになっていた。

すると、パリーンと窓が割る音がした。

「シルク!窓から入るのは、やめな!」

昨日はシルクが来たが今日は思いもよらぬ相手が来た。

それは・・・・・・・・・・緑色のヴェアハノンだった。

ヴェアハノンは熊の姿をしたビーストのボスと聞いていたのでどんなのが来るのかと思っていたが、見た感じくまの着ぐるみを着た子供みたいだ。

緑色のヴェアハノンは生徒がいないことにほっとした表情を見せた。

その時シルクが私たちに戦い方を教えてくれているときに言っていた言葉を思い出した。

「ビーストにはいろいろな種類がいて、熊の形をしたヴェアハノンもいるのじゃ。そ奴らはほかのビートルとは違って人から出る体液を吸わなくては生きていけないのじゃ。だから弱い下っ端のビーストたちに人間を襲わせるのじゃ。ヴェアハノンの頭らへんを見てみろ。なんじゃわかるのか?そうじゃあの角を見るのじゃ。あの角が長い時は体液が足りないときじゃ。その時は人を容赦なく襲うのじゃ。気を付けるのじゃ。」

そうシルクは言っていた。

今、目の前にいる緑色のヴェアハノンは角が長いはずなのに人がいなくてほっとした表情を見せた。

なぜか考えていると教室の床がどんどん崩れ果てていく。

そして私たちは床にあいた穴の中へ落ちていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る