第47話 2088年3月23日 日本国 長崎県 佐世保特例市 無限教会

第三次世界大戦では旧中国に蹂躙された九州全地方、半世紀経とうとも復興とは程遠く、居残った人々が懸命に生きる

そして、長崎県佐世保特例市 戦災を辛うじて逃れた小高い丘の上は未だ手入れが入る その上部に趣も深く佇む無限教会、礼拝を終えた人々が晴れやかに帰路へと


毎日の礼拝も終り、振り向くシスター未来、クールな面立ちも優しさに満ち問い掛ける

「何度もくどい様ですがお聞きしますね、いつまでお二方を匿まえば良いのですか」

長椅子からつい両手をパンと叩き、只頭を深く下げる男、堂上、

「そこ、当分ここでお願いします、よろしくシスター未来」

長椅子から続く両手のパンと叩き、同じく頭を深く下げる男、宮武

「ここ、追い出されたら、寂しくて耐え切れないよシスター未来、ねえ」

シスター未来、くすりと

「そうですね、サンクトペテルブルクの元老院に宮武さんの尾を送りましたから、追っ手は来ないでしょうが、何れは誰かしらの審問者が来られますよ」

堂上、不意に

「それ、よく考えたらまずいですよね、俺たち死んでる事になってますよね」

シスター未来、ふわりと

「ご心配無く、私も一筆書きましたから、発覚したら同罪ですよ」

堂上、くしゃりと

「ああ、またシスターに迷惑掛けちゃってるし」

宮武、飄々と

「これから懺悔室行こうかな、ねえシスター未来、お話聞いて貰えます」

シスター未来、ゆっくり頬笑む

「宮武さんからは、たくさんお聞きしましたから、結構ですよ」

宮武、身を乗り出しては

「いや話は尽きませんよ、なんせこの堂上さん、勢いで関門トンネル決壊させちゃいましたからね、信じられないですよね、あれ、俺の話じゃないか」

堂上、宮武を叩く

「ふざけるな、お前も絡んでるんだろ」

シスター未来、ただくすりと

「仲がよろしいのですね」


礼拝所に近付いて来る老紳士、揚々と、爪先

「おお、シスター未来にお前等、仲間に入れなさい」

シスター未来、こまっては

「これはこれは爪先さん、お忙しいのご苦労様です」

爪先、頬笑んでは一礼

「シスター未来は、今日もまことに輝かしい、ささ、話を続けましょう」長椅子に滑り込む

宮武、朗らかに

「爪先さんはケツ叩くのが仕事ですからね」

堂上、溜息混じりに

「はー、爪先さんも人使い荒いからな、そこ、どうなんですかね」

爪先、思わず堂上を叩く

「いいから九州は働き手が圧倒的に不足してる、四の五の言わず手伝え」

堂上、遠い視線で

「まああの日、5トントラックに潜り込んで力尽きて、佐世保まで流れてきたのが運命なのかな、しかし5トントラックって、九州に低陸橋無いの本当なんですね」

爪先、視線も遠く

「そこは、九州は戦中即最前線で、そん橋頭堡作る暇はまるで無い」

宮武、破顔

「まあ、あの時のクリスマスのパンとスープ美味しかったですね、いやー、今でも鮮明だな」

シスター未来、苦笑しては

「爪先さんが見つけて、お二人運び込んで来た時はびっくりしましたよ、”この二人を助けて下さいって”、海水に浸かったお洋服からは塩が吹いて、既に低体温症で死ぬ寸前でしたよ それでお二人からお話を聞いて、もう、びっくりより呆れましたよ、いるのですね、噂通りの武士さんって」

堂上、不意に

「運いいよね」

宮武、頷き

「そうそう、」

爪先、堂上と宮武の頭を容赦なく叩く

「お前等、堂上、宮武、シスター未来が医師免許持ってなかったら、本当に死んでたんだぞ、大体、クリスマスイブの日に死ぬ阿呆が何処にいる!儂は絶対許さんからな、」不意に瞳が潤む

堂上、ぽつり

「その節は御迷惑掛けました」

宮武、真顔で

「爪先さん、泣かなくてもいいじゃない」

爪先、烈火の如く、堂上と宮武を張っ倒す

「もう情けなくて、涙も引っ込んだわ、いいかお前等、シスター未来の為に誠意を持って働け、儂はついでいい」

宮武、ぼやいては

「爪先さんのついでの方が、仕事量が多いけど」

爪先、吠える

「結果論を言うな、いいかこの無限教会の評判落とすな、兎に角働け」

堂上、思い描いては

「人不足か、ああ九州解放新聞の朝刊読みましたよ、でも何ですね、全米軍、急にやって来て、トラップ撤去するって」

宮武、淡々と

「日本国も終戦以来、トラップ撤去殆ど手つかずで、誰もやらないし、NPOの安い賃金で働かせられるの何ですし、頃合いじゃないですか と言うか俺たちの職無くなるね」

爪先、従容と

「まあ安い賃金でもこれが精一杯だよ、十分佐世保に貢献したし感謝もしてる、職が無いなら、お前等枇杷畑手伝いに来なさい」

宮武、引いては

「えーカステラ工場も手伝ってるのに無理、爪先さん知ってるの、2シフトから3シフトになってフル稼働だよ」

堂上、宮武を叩く

「お前が断れないから、俺迄駆り出されるんだろ」

宮武、恐る恐る

「それ、観光客に言って下さいよ、ここんとこ増えてるから人手が必要なんですよ」

堂上、思いを巡らせ

「佐世保、準警戒地域なのに本当よく来るな」

橋爪、意気揚揚と

「ふん、儂がオールフェリー港を誘致したからだ、何年掛かったと思ってる、30年だぞ、全く日本政府は何時になったら機能するんだ」

シスター未来、窓辺の桜の花びらを拾い上げては、神々しくも

「この通り桜が咲き乱れてますしね、当分忙しいのは続きますよ、皆さん」笑みが溢れる


暫しシスター未来に見とれる、堂上宮武爪先


堂上、我に返り

「まあいいか、お土産も渡されるし」

シスター未来、悦に入り

「お二人特製のカステラ美味しいですよ」

宮武、破顔

「本当、」

シスター未来、つられては破顔

「ええ」

堂上、宮武に視線送り

「宮武も、たまにはいい事するじゃん」

宮武、苦笑

「ころころ変わるな、堂上さん」

爪先、不意に溜息

「職を掛け持ちしてくれるのは有り難いが、大体お前等、お金を何の為に使ってるんだ、繁華街にも出て歩いてないんだろ、どこで息抜きするんだ」

堂上、事も無げに

「ああそれですか 麓のアスレチック、素っ気ないから拡張してますよ、上がって来る時見てますよね」

宮武、頻りに頷く

「そうそう、そこに注ぎ込むも何だけどね」

爪先、驚きも隠せず

「おお、おお、完成したあれか、よし今度、新生開所式やろ」

堂上、にべもなく

「いいですよ、そんな大袈裟な」

シスター未来、胸に手を当てては万感の思い

「いいえ堂上さん宮武さん、非常に良い事です、子供達も禁止されている森への立ち入りへ、漸く無くなりましたからね」

爪先、我が事の様に

「分かったな、シスター未来の言う事は絶対だ、やるぞ」

堂上宮武同時に溜息

「やれやれ、」

シスター未来、溢れる笑みをつい口を手で隠し

「おかしい、日増しに似て来るのですね」

堂上、指差す

「こいつと」

宮武、指差す

「堂上さんと」

「いやー」堂上宮武同時に手を振る


礼拝所に入ってくるフードコート姿の女性5人

一人進み出る、一際高い長身の女性

「シスター未来、農作業終ったので皆の勤労票にサイン頂けますか」

シスター未来、勤労票を受け取り、作業鞄から印鑑を取り出しては印を押す

「それはご苦労様でした皆さん 今日のトラップ撤去は、朝方に堂上さん宮武さんが一定量取りましたので有りません、お寛ぎ下さい」

副島、勤労票を受け取り

「来たばかりで、無限教会に何も貢献してませんよ」

シスター未来、慇懃にも

「いいえ副島さん、皆さん良くお働きですから、焦らず復興中の佐世保の街を見て回るのをお勧めしますよ」

副島、にべもなく

「シスター未来、それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」


副島の後に、次々続く勤労票を渡す女性の列


定位置の後ろの席に戻る副島に、声を掛ける爪先

「副島さん、宜しいかな、お暇の様でしたら売店の売り子どうですか、皆畑を抱えて手が回らないのですよ その佇まい接客業に向いていますぞ、是非にでも」

堂上、苦笑

「無理無理、こんな無愛想に売り子務まるかよ」

副島、吐き捨てては

「堂上、とことんクズね」

堂上、事も無げに

「気に入らないんだよ、その余裕」


真っ二つに緊迫する一同


宮武、愛想笑い

「ははー、でも美味しいから、どの売り子さんでも買っちゃうかも、ね」

爪先、取り繕う様に

「お前等は茶化すな、副島さんとお姉さん方、他にも仕事有りますから検討してみて下さい、さあどうぞどうぞ」爪先、鞄から次々求人票を抜いては皆に渡して行く

副島、一礼

「爪先さん、有り難く検討させて頂きます」連れの女性達に素っ気なく求人票を手渡す


女性一同、定位置の礼拝所の後側の席で、求人票見ては和気藹々と


堂上、首を傾げては

「しかし何で今頃、全米が手助けしてくれるんだ」

宮武、淡々と

「師匠曰く一橋財閥が全米にロビー活動したとかです 全米も日本からの移住多いですから、復興支援に乗ったんじゃないですか 選挙対策はどこも似たり寄ったりですよ」

堂上、思い描いては

「一橋財閥か、フロントの頭取、齢80才の割にすげ頭切れて可愛いらしいじゃん」

宮武、一笑に付しては

「切れて可愛いって、80才のおばあちゃんでしょう」

「あれ、一橋?」堂上と宮武共に首を傾げる「ないない、」共に爆笑

堂上、思案顔で

「それより、撤去の仕事無くなるな、ここの無限教会手伝おうか、教室もう少し増やしたいし」

宮武、身を乗り出しては

「堂上さんのあの設計図なら、音楽室、視聴覚室、体育室等々、教会に通って来る子供全部受け入れられますよ」

爪先、感嘆しては

「堂上は手先が器用なものだ」

堂上、とくとくと

「おとんから、散々仕込まれましたからね、おもちゃ欲しければ自分で作れって」

爪先、唸っては

「つくづく、出来たお方だ、堂上の父君は」

堂上、くすりと

「まあ、いつか言っておきますよ」面持ちも新たに「それより体育室だとはしゃぎすぎるし、もう少し補強しないと駄目かな、まあ設計図また見直すか」

シスター未来、嘆息

「そうですね、早速視察に入られた全米の軍人さんも通って来られているので、何かてんやわんやなんですよ 改装中に付き無断で入るのお断り出来ますね、今日からそうしましょう、札を作っておきますね」

宮武、目を見張り

「あれ、受付のてんやわんやって、それなの」

堂上、舌打ち

「まあ間違いなく、口説いてるな」

爪先、憤慨しては

「ああ、ちゃんと見とる、幾度となく足しげく通って来とるよ」

堂上、苦笑混じりに

「それって爪先さんと同じじゃない」

爪先、ふんぞり返っては

「一緒にするなと言いたいが、そこはシスター未来の佇まいだ、儂は通うぞ」

堂上、くすりと

「そこはちょっと控えましょうよ、まあいいです、しつこい奴いたら追い返しますよ」

宮武、前席に身を乗り出しては

「ねえ、シスターもそれなら早く言ってよ」

シスター未来、深く息を吸い

「堂上さん宮武さん、くれぐれも抜刀は禁止ですからね」凛と「ただ一般の方であれば口説かれるうちも花なんでしょうね」笑みが溢れる

堂上、舞い上がっては

「やべ、シスター、soクール」

宮武、胸を押さえては

「フー、やばい、ドキドキする、何これ」

爪先、丹念に十字を切る

「ああ、後光見えるぞ」

堂上、尚も

「ねえシスター、化粧すれば、ミラノコレクション出れますよ、アジアンビューティーってやつで そう紹介しましょうか、ペールがいいかな、超懐かしい」

宮武、思い描いては

「やべい知ってる、ペール、キス魔じゃん、まあ一回り違うし、それはそれでokかな」

シスター未来、頬笑む

「挨拶が丁寧なのですね、人柄が伺いしれますね」


後ろの席から舌打ち音

宮武、気遣う様に

「ちょっと、罰当たりかな」

堂上、苦笑混じりに

「そっちじゃない、ほっとけ、」

シスター未来、微笑

「そうですね、ボランティアのセレブレーションではお茶目にドレスも着ますが、手が空いたら手縫いの新調も良いですかね」

爪先、感嘆しては

「おおお、いつぞやかの謝恩会、モード枠もとは、貪欲ですな」

宮武、思わず立ち上がり

「いいですいいです、脚はどんと出しましょう、こんな感じです」立ち上がっては右手を小脇に左足を差し出すポージング「これで寄付がっぽりですよ」

シスター未来、上機嫌にも

「ええ、こうですか」宮武に見よう見まねで右手を小脇に左足を差し出す同じポージング

堂上、痛々しくも

「シスター、勢い余ってお尻も振れてますから、引き締めて、自然にぎゅっと」

シスター未来、修正しては

「こうですかね」

堂上と宮武、同時に

「そうそう、」口元が緩む

爪先、咽び泣く

「おお、お前等、シスターおいたわしや」

堂上、声を張っては

「よし有り、ポーズ研究の為にも、ねえ今迄の写真とか見せて下さいよ、お願い、シスター未来」

宮武、嬉々と

「俺も、」

シスター未来、頬笑む

「いいですね、お二人との写真も溜まりましたし、皆さん一緒に見ましょうね そうですね、10時のお茶の時に一緒にアルバム整理しましょう」

「イエス、」堂上と宮武ガッツポーズ

「イエス、」爪先も負けじとガッツポーズ


スッと刃物が擦れる音


宮武、声を押し殺しては

「だから、何挑発してるんですか」

堂上、視線も逸らさず

「目障りなんだよ、」

シスター、前席に歩み寄っては堂上の額に詰め寄り

「堂上さん、仲良く出来ないものですか」

堂上、とくとくと

「俺はシスターと仲良く出来れば問題有りません、何れもです」

宮武、額を寄せ合う

「俺も俺も、」

爪先、つい額を詰め寄る

「お前等コソコソと顔が近いぞ」


“コホン”後ろの席から咳払い


堂上、堪らず副島に向き直る

「おい紗子、暇なら芝刈りにでも行けよ」

宮武、不意に

「あれ、副島さん、紗子さんって名乗ったっけ?」

偉丈夫にも、副島

「礼拝堂でベタベタ駄弁るなんて相当ね、余裕あるなら、堂上こそ働きなさい」

シスター未来、宥める様に

「副島さん、語らう事も大切です、互いに知り合わなければ、信仰を掘り下げられませんよ」

副島、尚も

「すいません、今求人票一通り見ては手が一杯です」

シスター未来、珍しくもピシャリと

「副島さん、方便も程々ですよ」

堂上、後ろに振り向いてはほくそ笑む

「怒られてんの、」

宮武、溜息混じりに

「また挑発する、」堂上の腕を抑え込む


春の日差しが、間断無く礼拝所に注がれ、一時をほのぼのとする一同


宮武、不意ににやり

「そうそう、師匠の加賀さんがニューヨークで京おでん屋始めるとかなんですけど、手伝えって、何度も催促来てますよ 確かに飲食業も興味湧きますけど、それって仕込とかで自由な時間持てませんよね」

堂上、思い描いては

「一攫千金も程々にしとけって事だろ、京おでんな、悪くないぞ」

宮武、嬉々と

「おっつ、興味あるんですよね、そりゃ京都の人達に散々お世話になりましたからね、恩返しも込めて貢献もしましょう どうです堂上さん、手伝って下さいよ、かなり器用ですからいけますよね」

堂上、唸っては

「うーん、でもニューヨークだろ、焦らず合流しろよ」

シスター未来、不意に窓に視線を移し

「少々寂しくなりますかね」

爪先、涙脆くも

「いやーこの年では、別れは堪えるな どうだ、教会の寄宿舎が狭いなら、いい物件紹介するぞ」

シスター未来、つい剥れては

「かなり失礼ですよ爪先さん」

爪先、立ち上がっては謝辞、

「これは失礼しました、シスター未来 いや、そもそもだな、お前等の部屋が汚いからいけない、廃屋の古紙回収して抜き出しては溜め込むな、失礼だぞ」

宮武、憮然と

「いやいや、決して平成のグラビアとかじゃなく、全部建築絡みですよ、近代アートの参考になりますって」

堂上、ただ

「でも、ここの心地はいいけど やはり、いつまでもな…」

シスター未来、はっとしては

「如何ですか、この際名前を変えるのも有りですよ 密かにローマ参画政府に申請しずらいならサンクトペテルブルク公国の伝手が有ります、そうです、お二人すでに死なれた事になっていますし、これでは表立つ事もありません もう少しお考え下さいませんか」

堂上、悩まし気に

「まあ増築の設計施行もあるし、長くなるだろうし、どうしよう、まあ託せる事も出来るんだけど、悩むな それに全ての山間部は未だ復興遂げてないしな、どうするか」

宮武、苦笑しては

「いや、こちらも、珍しく師匠からの催促の文が三通も来てるんですよ 決して怒りはしないんですけどね、どう返事書いていいかな」

シスター未来、微笑

「佐世保の皆さん好意的ですし、私的にはここにいる事をお勧めしますよ 宮武さんのお師匠さんには感謝の文もしたためましょう 堂上さんは…迂闊な事書けませんのでちょっとお時間頂けますか それがいいと思いますよ、」

宮武、嬉しくも

「おお、やった、シスターと同意見」

爪先、何度も頷く

「ああ、儂もだ」

堂上、後方の副島をちらりと

「まあ、そうですね」

シスター未来、苦笑混じりに

「もう爪先さんは、仕事しないんですか」

爪先、微笑

「シスター未来、儂くらいの名士になりますと、信仰が仕事みたいなものです そこから得られる答えは皆に諭してるつもりです」丹念に十字を切る

宮武、爪先に指差しては

「もう、シスターと話したいだけでしょう」

シスター未来、敬虔にも

「私は構いませんよ、爪先さん、答えが全て見つかると良いですね」

爪先、感極まる

「よし、改めて了解頂いたぞ、生きている内に佐世保を咲き誇らせるぞ」

宮武、くしゃりと

「佐世保って、桜の剪定も総動員ですよね、ちゃんと指定区域決めましょう」

爪先、とくとくと

「いいか、私の子供頃に見たあの桜並木に漸く近付いたんだ、そこは是非共お願いしたい」

シスター未来、不意に

「九州占領と開放から、今日漸くここですね、皆さんにはただ頭が下がります」

堂上、副島の視線を気に止めながら

「それで、宮武の紹介、というのが気になるけど、第二の人生がニューヨークというのも悪くないんだよな」

シスター未来、不意に瞳が潤む

「その選択肢は残りますか、寂しいですね」

爪先、嘆息

「堂上も、何故話を戻す、切ない事を言うな」

堂上、思いを馳せては

「いやいや、そこは先のお話であって、全米にいた頃の仕事も中途半端になっちゃてるし、色々悩むんですよ」

爪先、ぴしゃりと

「いいから堂上、シスター未来を泣かすな、ここにいろ、佐世保にいろ」

堂上、思いを巡らし

「ですからね、揺れてはいますけど、佐世保には必ず帰ってきますから そう、どこかで踏ん切りは必要です ちょっとか、少しかですからお願いしますよ」

宮武、不意に

「でもですね、ニューヨーク行っちゃうと、漏れ無く縁談も付いて来るとかなんですよ うっかり乗っちゃって拘束の強い女性だったら、佐世保無理かも」

堂上、宮武を叩く

「だから宮武、美久里さん、どうしたいんだよ、誓紙どうするよ、ぶっちゃけ結婚扱いだからな」

爪先、怒りも露わに

「おお、宮武、お前、それでチャラついていいのか、」

シスター未来、頬笑む

「まあ宮武さん、お目出度い事は早く言って下さらないと、ホールケーキ用意しましょう」

宮武、引いては

「えっつ、皆、そんな重いの」

堂上、とくとくと

「とは言え、厳密に言えば武士に限っての誓紙の白紙の罰則は無いけどな、普通なら派閥抗争が100日間続く位だ」

宮武、顔が歪む

「はあ、禍根残り過ぎでしょう」

堂上、尚も

「所詮は誓紙だ紙だ、生憎美久里さん一般人だから派閥も無いし、何とか凌げるかもな でもな、美久里さん真っすぐだから絶対答えないと駄目だからな」

宮武、閃いた様に

「ふーどっちも危ういな、そう、師匠の面子も潰せませんし、縁談で挨拶程度ならセーフでしょう、それ、」

堂上、嘆息

「だから、縁談の席設けられて、どうやって断るんだよ」

宮武、尚も

「いやいや、職業武士なら、大抵逃げますって、しきたり山程有りますからね」

堂上、溜息混じりも

「まあ若い人なら、そんなところか、やんわりとな」

シスター未来、ふわりと

「あら、もし縁談の席に宮武さんが来られたら、私は断りませんよ、皆さんもそうだと思いますよ」

宮武、照れては

「えっつ、自分もシスター未来のチョイスも入るの、かなり嬉しい」

堂上、項垂れては

「何かな、俺ガックリだよ、シスター未来、俺じゃないの」

シスター未来、破顔

「お二方頼もしいですよ、贅沢な悩みです、選べないですね」

爪先、思わず声を張る

「お前等は、いいな、」

シスター未来、嬉々と

「ただ堂上さんは、まだ所帯持たれていますから、私は何も言えませんね」

堂上、ただ上機嫌に

「そんなの離縁状も受理されて別れたから、もう自由ですよ、いやもう忘れちゃいました、はは、」


“バキンバキンバキンバキン”尚も後方の席からボールペンの折れる音が響き渡る


堂上、にやりと

「何に怒ってるやら」

宮武、うんざりと

「この剣先、うすうす気付いてるんでしょう」

シスター未来、堂上と宮武に額を近づけ

「気を付けて下さい、ナイフの研ぎ方が堂にいってましたよ」

堂上、事も無げに

「ふーん」

宮武、深く息を吸い

「いよいよか それじゃ、荷物まとめに入りましょうか」

堂上、従容と

「荷物も何も刀もだけだしな」

シスター未来、影を落とし

「致し方無いのですね」

爪先、詰め寄り

「いや急すぎるぞ、お別れ会位させろ」

堂上、晴れがましくも

「いいえ、客分にしては長過ぎました、頃合いですよ」

シスター未来、胸に手を当て

「いいえ客分なんて、私達の心の中ではそうは受け止めていません、無限教会含め立派な家族ですよ」

堂上、狼狽えては

「ええまあ、そう言われれば、そうなんですけどね」

シスター未来、切に

「ここは、はいと言って頂けますか」

堂上、逃げ場も無く

「はい、」やっと頬笑む

シスター未来、連れて頬笑む

「結構です」

宮武、思い描いては

「まあ、色々名残惜しいけど、あのお土産全部置いていくんですか、勿体ない、あっちに行ったら簡単に甘味処手に入らないですよ」

堂上、しかめっ面で

「いいや嵩張りすぎだよ」

シスター未来、従容と

「賞味期限迫ってるのありますので、仕分け手伝いますね」

堂上、不意に

「あと菜穂子経由の美久里さんから送られて来た来たDVDどうする、100作品越えてるんだろ」

宮武、くしゃりと

「もう筆まめだね美久里さん、まあいいや、散々見たからもういいですよ」

堂上、尚も

「まあ、教会ののライブラリーとして入れて貰うのも有りだな」

シスター未来、嬉々と

「大歓迎ですよ、英語の教材にもなります」

宮武、嬉々と

「ああ、でもシスター始め皆と仲良く見れなくなるね」

爪先、嘆いては

「いいな、お前等は、そんなに楽しいか無限教会」

宮武、事も無げに

「もちろん、」

堂上、微笑

「やっぱり自由はいいよな、俺ってこうじゃないとさ」遠い眼差しも、思い出した様に宮武を只叩いては「宮武も、美久里さんに返事位書けよ、いつまでも死んだ振りしてもばればれだろう」

宮武、目を細め

「それだったら堂上さんも、米上さんにしたためましょうよ、ごめんなさいの一言で終るでしょう」

堂上、くすり

「絶対嫌だ、米上とはもう別れたんだ他人だよ いいか仮にしたためたら、八つ当たりで堂上と加賀さんのところにも本格的に乗り込むぞ、洒落にならないって」

宮武、呆れ顔で

「堂上さん、あなた、何をしたためるんですか」


投げ放たれたボールペンが一直線に堂上に迫る 事も無げに掴む堂上

堂上、動じもせず

「危ないな紗子、やっぱりそっちの陣営はどうしてもやる気か、」

副島、後ろの席からくすりもせず

「あら惚けてるところ、すまないわね、凄い手が滑ったみたい」

宮武、構えては

「いや副島さん、その軌道当たったでしょう、その勢いボールペンでも抉られちゃうよ」

爪先、つい立ち上がり

「危ないよ、副島さん、シスター未来に当たったらどうするのかね、」

シスター未来、偉丈夫にも

「爪先さんご心配無く 副島さん、教会内は傷付け無いで下さいね、子供が真似をしますからね」

副島、果敢にも

「シスター未来ご心配有りません、その気になれば、そこの二人きれいさっぱり何時でも仕留められます」

シスター未来、まなじりを上げ

「副島さん、その躊躇い、拙いですよ、命取りになりますよ」

副島、拳を固める音が礼拝所に響く

「シスター未来、肝に命じます」

堂上、舌打ち

「始まったな、」

宮武、苦笑

「これ、一戦交えるのかな やはり米上さん陣営なの、堂上さん下手な別れ方したから狙われてるんでしょう、」

堂上、宮武に目配せしては

「あっちの陣営に勝てる訳無いだろう、苦手なんだよ」

副島、立ち上がり大音声

「そうよ堂上、無駄な足搔きよ 散々世界中日本全国探し回って、辿り着いたと思ったら、また逃げる算段なんて、許す訳ないでしょう」フードコートを脱ぎリバーシブルに着替えると、ベスト部に30本のスローナイフホルダーが隈無く施され臨戦態勢 付き添いの女性達4人も素早くリバーシブルに着替える

宮武、刀を手に

「で、これって、」

堂上、刀を手に

「だな、」

堂上と宮武、脱兎の如く礼拝所の窓の欄干を跨いでは

「シスター未来、また」宮武、手を振る

「近いうち、また」堂上、嬉々と手を振る

副島、声を荒げる

「逃がすな、全員招集しなさい、」

堂上、欄干を跳ね

「行くぞ、」

続く、宮武

「はい、」


爪先、事も無げに

「ああ、あいつら、愛想の無いお別れだな、武士とはいつもこうなのか」

シスター未来、涙腺が緩む

「いいえきっとまた来られますよ、ここ佐世保に」

爪先、席にゆっくり腰を下ろし

「いやいや、忘れるなと言っておいて、覚えてるのかあいつら」

シスター未来、厳かに

「爪先さん、良い旅を祈りましょう、堂上さん宮武さんの未来は御心のまま、どこまでも繋がり、きっとまたお会い出来ますよ」

シスター未来と爪先、同じく手を組み祈る



教会の丘の森を一気に下り、獣道でも次々降り注ぐ合金スローナイフの嵐 無尽に切先が翳める音が止めどなく鳴り止まず 

宮武、身震いしては疾走

「これなら、トラップ全部取らなきゃ良かったな」

堂上、𠮟咤しては

「出来るか、まだやんちゃが出入りしてるの注意してるだろ」

宮武、鞘で枝を払っては

「ああもう、一体何人いるんだよ」

堂上、鞘で枝を払っては

「分かる、少なくても5人だ」

宮武、枝を尚も払う

「それ見たままですよ、そんな訳ないでしょう、この手数、絶対おかしい」

堂上、枝を尚も払い

「追いかけてくる人数で安心するな、囲む筈だから突っ切るぞ」

宮武、目を見張る

「げっつ、まだいるの、」

堂上、尚も枝を払い、木の根を跨ぎ疾駆

「いいか、最近入って来た麓までの女性全部だ、いいから逃げろ」

宮武、つい丘を下る速度を上げる

「うわ、ねえ、こんな暗殺集団いたっけ、京都に」

堂上、尚も疾駆

「いいから速度上げろ、それを言ったら皆半殺しだ、絶対言うな 特に紗子の事だ、使い手ばかり集めた筈だ、抜かるなよ」

宮武、鞘と左手で枝を払いながら

「もう、あの剣圧見過ごしたのがそもそもか、何で早く追い払わなかったんですか 紗子さんって副島さん知ってるなら、どうにか折り合い付けて下さいよ」

堂上、鞘と右手で枝を払いながら

「紗子は同級生だ、あの癇癪持ち、怒ると何するか分かったものじゃない」

宮武、不意に邪魔な太い枝を素早く抜刀、擦り抜ける

「だったら、絶対仲良くすべきです、シスター未来のお言葉忘れてません」

堂上、𠮟咤

「宮武、道作るな 紗子のツボは一切分からん、心の綾がそう簡単に通じる相手じゃない」

宮武、嘆息

「京都、色々深いな」

堂上、嘆息

「京都全部知ってる奴なんて、誰もいない」

尚も合金スローナイフの嵐が、堂上と宮武を追い詰める


副島、疾走も激しく、只丘を下る

「ねえ堂上、何で逃げるの、宮武のミイラ取りになったの、米上さんの元に帰りなさいよ」


宮武、一瞬振り向くも

「えっつ俺悪役、」

堂上、声を張り

「ふざけるな紗子、これが連れ返す奴の所行かよ、」

宮武、尚も分け入る

「連れ返すって呑気ですよ、絶対嬲り殺しにされますよ」

合金スローナイフの勢いが増し、樹木を斬り裂き飛んで来ては、間合いが徐徐に迫る

副島、声が響く

「大丈夫、半年あれば傷口塞がるわよ、早く大人しく寝転がりなさいよ」

宮武、只身震いしては

「痛そう、」

堂上、目を見張りながら

「ナイフだと抉るぞ、ふざけるな」


尚も飛び交う合金スローナイフ 追っ手の女性達、突き刺さったナイフを軽やかに抜いては、只管投擲


宮武、不意に立ち止まっては

「降参するの有りなの!」

宮武に向って無数に飛び込んでるくる合金スローナイフの剣山

宮武、辛うじて樹木の陰に隠れ難を逃れる

「ひー」

堂上、ただ声を張る

「もう大声出すな、走れ、俺に追いつけ」

宮武、飛び跳ねては脱兎の如く

「どんなセンスなんですか、あいつら」

堂上、うんざりと

「あっちは、空間把握能力抜群だ、兎に角センスの外に走れ、」

宮武、憤慨しては

「だったら獣道走る意味無いですよ、何やってるんですか」

堂上、意を決し

「そうだな、もう凌いだ、出る、」

堂上と宮武、勇躍獣道を飛び出し、丘の急斜面を一気に下る


急斜面の先の坂道には、白い日傘白い一張羅の令嬢

「おおっつ、なんですか、ひょっとして、堂上さん、宮武さん、何してるんですか」目を見張る


宮武、驚きつい立ち止まる

「やっ奇遇、美久里さん、」

堂上、𠮟咤

「そこ、逃げて」

不意に空を見上げる、美久里

「野鳥かな、」

空には黒い点、次第に迫る

宮武、只目を見張る

「ナイフ、」

堂上、声を張り

「もう日傘に隠れろ、」

堂上と宮武に守る様に挟まれる、美久里

「ちょっと、なんですの」


日傘にぎゅうぎゅう詰めに収まる、美久里堂上宮武

“ガツガツガツガツガツガツガツガツ“の鋭い音が間断無く白い日傘を責め立てる

程なくナイフの雨霰が白い日傘を拉げる

宮武、まなじりを上げ

「冗談じゃない、半殺しじゃなく、本当に本気じゃないですか、」

美久里、事も無げに白い日傘を放り出す

「よく防弾の日傘と分かりましたね」

堂上、目を見張ったまま

「ミチコロンドンブレン特製でしょう、元の上さん持ってた」

宮武、不意に我に帰り

「それより、」白い一張羅の美久里の右腕を抱える

堂上、はっとしては

「逃げよう、」白い一張羅の美久里の左腕を抱える

美久里、要領得ないまま

「えっつ、何です」


転がり拉げた白い日傘に、尚も直上から突き刺さる合金スローナイフが修繕を繰り返すアスファルトの田舎道をも抉る


堂上と宮武、美久里の両脇を抱えてはひた走る、

一目散に坂道を下り、佐世保の港へと走りに走る

美久里、目を見張り

「何の、揉め事なんですか」

堂上、苦い顔で

「ちょっと、厄介でね」

宮武、じりりと

「舌噛みます、本気で逃げないと」


坂の下で構える女性が、つい吠える

「ちょっとー」その女性米上、短くしたセミロングカーリーヘアーがたなびき、リフレクションスカートはくるぶしまですでに展開


坂道の下りの疾走を止まらぬ一同

堂上、歯噛み

「何かがまずい、」

美久里、刮目

「分かります、そこ曲がりましょう、何で私迄、」

一同急速旋回

宮武、吠えては

「いやだいやだ、あの人に絶対絡まれたくない」

堂上、動悸も上がり

「見た目正解だ、完全武装だったよ」

宮武、焦るも

「勝てそうにないですよ、追って来る手勢に、あの大ボス」

美久里、堂上と宮武見比べては

「でも、どうしても逃げるんですか、米上さん相当睨んでましたよ」

堂上、額にうっすら汗

「話すと長いんですよ、後で」

美久里、頬笑み

「ああ、それは、あれで、これで、堂上さんの泣けるお言葉とか、武士の尾とか、凌ぎ合いとかですか」

堂上、不思議顔で

「泣けるお言葉?ん、まあ、察して知ってるなら早い」

美久里、目を丸くし 

「えっつ、大晦日の大型特番とお正月の追加特番見ていません?全米でも放送されましたからね、お二人の三度の鍔迫り合い、堂上さんは可哀想ですが名前出ましたけど、宮武さんは辛うじて名前は出ていませんよ、かなり配慮しましたね」

堂上、歯噛みしては

「ああループタイカメラか、俺が出ちゃってるの、見るも何も朝から晩迄祈念ミサだったからテレビどころじゃないし、」

宮武、吠えては

「だから、シスターから録画ビデオ借りようと言ったでしょう」

堂上、負けじと

「12時間も見れるかよ、それに追加番組もだろう、もう思い出すのもうんざりだ」

宮武、不意に照れては

「三度って、頭突きから、うわ、」

美久里、破顔

「ええ、恋の火花が見れました」

宮武、捲し立てては

「それ、まさか超重量戦車も」

美久里、尚も

「はい、T28DESですね、危険ですから製造中止になりました」

堂上、頭をもたげては

「まさか、三度って、関門トンネルも」

美久里、嬉々と

「勿論、ライフラインの老朽化と旧中国軍のトラップは怖いですね、その線ですからね」

堂上、絶叫

「やばい、すげー有名人じゃん」

宮武、身も凍る勢いで

「うわ、まずいですって、環境省の調査官も何れ追って来ますよ、補償費とんでもないですよ」

美久里、思案顔

「限りなく老朽化と戦後処理の線ですよ、そうですね、でも、」

宮武、食い下がる

「やっぱり、でもなの」

美久里、照れては

「ええ、堂上さんのホテルでの一人語り全部が女子のツボで、皆切ないのですよ、堂上さんどうされますか」

堂上、目が吊り上がり

「ちょっと待った、あれ録画されてるの、ああ、米上のカメオカメラの方か、何だよ一体、何だよ、」

美久里、微笑

「しまった、見てないなら、素直に帰ったかもしれないのに、でもあのホテルのシーンが無いと番組繋がらないのですよ、でも照れますよね、凄い照れますよね、ついでに言うと最後の方の結婚式のビデオは構成がずるいかな…やはり『あなたの向こうで』見ましょう、絶対ですよ」堂上の腕を揺する

堂上、首を傾げては

「ん?まあいいや、」意を決し「ニューヨークへ逃げます、やっぱり距離をおきたい」

宮武、けんもほろろに

「そこなの、ほほ、」

美久里、破顔

「おお、唐突ですけどトントン拍子ですよ、ですからお迎えに来ました、お二人を準備中の京おでん:細腕の看板に入れたらいい具合です」

堂上、何度も

「ええ俺も、なんで」

宮武、驚き隠せず

「看板の話聞いてないよ、えっつ、でもいいの?第三帝国に付いてたのに、顔バレしてるんでしょう」

堂上、苦笑

「もういい、俺との決着で禊は終ったろ」

宮武、溜息

「まあ、二度と戦いたくないですけどね」

美久里、とくとくと

「そう『あなたの向こうで』がいい宣伝効果になったようです、今からニューヨークのテナントの前に並んでる人いますよ、きっと試食出さないと帰りませんね」

宮武、喜び爆発

「やほー、超人気、」

堂上、感慨深く

「その前に味で勝負しろ、」

美久里、軽やかに

「ふふ、味なら私の保証付きです、さあ急ぎましょう、夢と希望のニューヨークへ、」尚もスピードを上げる

宮武、思いも深く

「幸先いいね」更に疾駆

堂上、苦い顔で

「いっそ、全部仕切り直しだ」更に疾駆

美久里、隊列崩さず

「そうです、順風満帆ですよ、もっと人生楽しみましょう」

宮武、首を傾げる

「前まで儚そうな感じだったのに、何で」

堂上、苦笑

「何か宮武、美久里さんに捕まってねえ」

宮武、居たたまれず

「ニューヨーク行ったら縁談有るんだけどな、まあいいや、これ聞かなかった事にね」美久里の腕を確と掴む

美久里、不敵な笑み

「無理に縁談断らないで下さい、きっと楽しいですよ」宮武の腕を幸せ一杯に掴み返す


丘を下った先の間近に見え始めたオールフェリー発着場には、無数のフェリー客船が往来、幾重にも伸びる白波が未来を示す 

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ザ・エッジ 判家悠久 @hanke-yuukyu

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