魔王はチキンに見えます

後方で大爆音が聞こえる。何が起きたのか検討も付かない。

今、サラマンドラは首都グレンタスについたところだ。グレンタスの住人は大慌てだ。謎の爆音がなんなのか分からないから、恐怖する者も居る。あと少し。あと少しで魔王城 火炎城に着く。主のところまであと少し。



「うぬっ!」

セラフは一瞬痛みを感じた。分身が死ぬと、自分自身にもダメージが少し来る。が、分身だってセラフの瞬間移動能力を持つため、相手に近づかれたら自動で帰還する予定だった。だとすると敵は分身体よりも反応速度が速かったのか?

元々分身体を本体に取り込む事で、分身体のすべての記憶を手に入れられるのだ。途中で分身体が死ぬと、ほんの一部の記憶しか手に入らない。その一部の記憶の中に、信じられない所があった。ヴォルケノンタウンが火の海になっていた。都市は超厳重な警備に加え、多属性の結界を張ってある。難攻不落なのだ。その都市の一つが、崩壊していたのだ。緊急事態だ。ルシファー様に連絡を、、、



「、、、、。」

セラフの報告を受けたルシファーは無言でその場を立った。

「ヴォルケーノタウンが何者かの手によって陥落した。アザゼル。アスタロトに連絡を頼む。サタナキアは戦闘の準備を急げ。ダンタリオンは魔力通信を今すぐグリフォンに繋げ。あとの者はサタナキアの援護に回れ。急ぐのだ。」

ダンダリオンは魔法通信でグリフォンと繋ぐ。

「おい!このバカ鳥め!何をやっているのだ!?お前の所のヴォルケーノタウンが陥落しているぞ!」

「何って言われてもなぁ。実はゴブリントロールが殺られちゃって、四天王全員で様子見に行かせたんだけど、フレイヤから連絡が来ないんだよね。で、何だって?ヴォルケーノタウンが落ちた?んな訳ないだろ。」

「本当だ。セラフから連絡が入っている。」

セラフは優秀な諜報員だ。彼の名を知らないものはいないし、彼の情報に偽りが無いのは、魔界の上層部でも噂だっている。

「セラフが?!じゃあマジなのか?」

「呑気すぎるだろ。急いで見に行ったらどうだ。」


「バサバサ」

グリフォンの後ろに一人、いや一羽の火の鳥が着陸した。四天王サラマンドラだ。

「報告します!四天王フレイヤ、並びにオークマスターが、何者かによって死亡しました!」

「何!本当か?」

「更に、ヴォルケーノタウンの方角にて、大きな爆発と共に煙があがっております!」

一瞬の沈黙。

「なあルシファー。全魔王に緊急事態として魔法通信をしてくれないか?その何者かは俺が何とかする。ついさっき軍事関連の準備も整ったから、ちょっくら行ってくるわ。」

「分かった。」






俺は範囲を結界に設定し、ヴォルケーノタウンの外にまで瞬間移動テレポートした。街の外は比較的安全だった。

たまたま牛がおまけで付いてきたので、ちょっと情報収集をしようと思う。思ったのだが、四天王を見つければ自然に魔王も見つかるのではないのか?ならこのおまけに魔王か四天王の居場所を聞こうかな。街一個壊しちゃったけど、しょうがない。今更後の祭りだ。今は魔王を倒すという目標に向かって、前向きに頑張らないと。あと魔王倒さないと、街の修繕費取られたりしないか心配だ。お、牛が起きたっぽい。


「おい、牛野郎。」

「貴様 、、、何をした!?ヴォルケーノタウンが、、、我々の街が、、、」

「いいか?今すぐ俺の質問に答えろ。答えないとお前をサーロインステーキにしてやる。」

「、、、、」

「四天王か、魔王の場所を教えろ!今からそいつをぶっ飛ばしに行くから。」

「ほう。魔王をお探してんの?ならここに居るけど。」

後ろで声がする。振り向くと大ぶりのチキンが飛んでいるではないか。

やばい。もうなんか食べ物にしか見えないわ。それにしてもあれが魔王?鳥じゃん。いやむしろ鶏だよ金の体に赤の鶏冠がついてる。少しカッコ良い感じだから、まあ鶏以上孔雀以下って感じ?

「俺は魔王グリフォン。この炎国ウエストバーズを治める者だ。率直に問う。貴様らは敵か?それとも違うのか?」

「て」

「お話が聞きたいだけです!」

俺が敵だと言おうとしたら、タクに遮られた。

「我々は、異世界から連れてこられました。いったいどうすればいいのですか?人間界に戻って普通の暮らしがしたいのです。」

異世界。魔界上層部では、殺さないといけない存在と定められている。なら、こちらも質問をしたらすぐに殺すか。

「では人間よ。私の可愛い四天王たちを殺したのは貴様らか?」

「え?」

え?四天王達を殺したのは、、、コイツらじゃないのか?まあいい。これ以上聞くこともない。さっさと殺すか。

「もうお前達に用はない。こんがりと焼かれて死ね。」

「は?お前が死ね。」

「駄目だドラゴン!奴を殺してはいけない!」

殺すなだと?殺らなきゃ殺られるのは分かりきった事だろ。殺さずに俺達が生き残る、、、なら捕獲か?捕獲→キャプチャー 。よし。

「キャプチャー!」

バシッという音がして、グリフォンは地面に叩きつけられた。グリフォンはロープのような物で固定されていた。幾らもがいても切れないし、ほどけもしない。更に、自分の魔法が使えなくなってしまった。

こうして魔王グリフォンは、あっけなく捕まった訳だ。



少し遠くで様子を見ていたセラフ。グリフォンが捕まった事をすぐにルシファーに伝える。

ルシファーは魔法通信で、全魔王に、グリフォンが捕まった事を伝えた。

サバイバル7日目。悪魔は大きな誤算をしていたことに気づく。魔王が捕まった。今や炎国の全権は1人の少年が握る事態となっていた。ゲーム始まって以来、最大の魔界の危機だ。




龍のステータス


レベル 146 (ファイアのサイズは小型トラックよりも少し大きい。)


新呪文

特殊魔法

超稀少級 「キャプチャー」


称号 西の支配者


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