初めての異世界編

第5話

 1


 寝ころんだまま。


 おもいまぶたをひらく。


 目のまえには、抜けるような青空がひろがっている……


 あたたかい風がふく……異世界にきたのか……?


 顔をたおすと自分のまわりには、


 せたけのひくい植物が生えている。


 ――ピントが合わず。ぼやけてみえる。


 腹のあたりが、きゅうくつで頭をおこす。


 体のうえ。自分のからだほどの四角い箱がおいてあった。


 箱はヒモで巻いてある。


 周りをみまわすと、数十メートルさきに大岩があり、


 その背後には、森がとりかこむように左右へのびている。


 大岩の反対がわは地平線がみえる。


「右も左もわからねえな……」


 しかし、それは他の冒険者も同じだったはず……


 いや、彼らは記憶すらないのだ。


 そんな彼らを助けるもの――それはたぶんこの箱。


 箱には「開けてください」と書いてある紙。


 ヒモをといて開ける。


 箱の中には、ごちゃごちゃと物がつめこんである。


 ナイフ。剣。缶づめが三十個。水の入ったビン十本。

 皿。粉の入ったビン。液体の入ったビン。厚さ3センチほどの紙幣とサイフ。

 ランタン。台座つきの球状のぶったい。マント。

 ねぶくろらしきもの。絵のかいてある板と玉。

 ぶ厚い本。葉っぱの入った、大きめの箱が2種類。

 人形のはいっている箱。電卓のような機械。巻物。

 何もかいてない紙のたば。


 上には冒険ガイドブックと書いてある冊子。


 普段は説明書をよまないが……


 そうはいっていられない――読むか。


『こんにちは。まず、気候によってはさむいので、マントをはおりましょう』


 俺はとりあえず。黒色のマントをはおった。


『モンスターが怖い人は、モンスターよけのお香を焚くことができます』


『ガイドブックを、安心して読みたい人は焚きましょう』


 まじで? 野生動物とかいんの? こえー……


 念のために、モンスターよけをすることにするか。


 いきなり来て、パニックになったら困るからな。


 すぐに、効果が出ないものかもしれんし――俺はランタンを付ける。


 周囲に『もや』がたちこみ――だんだんと、におってきた。


『次は地図のみかたです。地図は、水平におきましょう。球をおき。止まったところが現在地です』


 俺は支持通りにこなす――球が止まり現在地が分かる。


 しかし、地図にかいてある文字が読めねえな……


『ここで質問があります。下に記載されてる文字は、読めますか……?』


 ミミズがのたうっているみたいな文字が書いてある。


 ……読めねえな。


『読めなかった人は、同封されているテキストBをみてください』


 これAだったのかよ。


 俺はテキストBを取りだして読みはじめた。


『あなたにひとつ、残念なお知らせがあります。あなたは、記憶を受け継いだ人ですね』


 ……お、おう。そうだけど……何だ……?


『あなたは自力で学習しないことには、この世界の住人と話すことも。この世界の文字を読むこともできません』


 2


 ――しばらくの間。俺は脱力と絶望で呆然としていた……


 これか……クレームの主因は……外国語が苦手な俺にどうしろってんだ……


『前世語と異世界語。両方に対応してある書物がはいっていますので、それで勉強しましょう』


 この、ぶ厚い書物か……そんなので簡単に覚えられたら就職してたわ……


 くっそー。どうすんだよこれ……


 お金みたいなものがあるから。


 しばらくは大丈夫だろうが。路銀がつきたらやべえ……


 俺は足をほおりだし――その場にあおむけに寝ころぶ。


 テキストAの続きもまだあるが、見るきにならなかった。


 ――しばらく考えながら。幾度か寝がえりをうっていると、


 あるとき。灰色の紙が目にとまる――

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