続、目覚め

満月ゆるゆる空へ昇って

満月そびえる塔を照らす

あれから

あれから

3000回目の



満月



ゆっくり  瞼をひらいてみた

ぐるり   部屋を見渡して

するり   寝台ぬけだした

汚れた鏡の前に立つ

娘は首を横にかしげた

見覚えのない体つき

 腕も足もしなやかにのびて

見覚えのない髪の長さ

 銀色は腰までとどく


あの人は何処に

待っていると言った

あの人は何処に


あら あら おはよう

私の愛しいお姫様

竹の瞳のお姫様

とても美しくなったわね

いろんな男が求婚するわ

そうよ

あの時の私みたいに


窓辺からは女の声

魔女の

自分を目覚めさせた

憎き魔女の


待っていたはずの

者とは違う


娘は窓辺に歩みより

ぽつり ぽつり と

言葉を紡ぐ


誰もいない?

父様も母様も

メイドたちも

起きたくない

私言ったのに

起きたら一人

起きなくても

起きても一人

ひとりぼっち

この世界には

誰もいないの

父様と母様に

会いたい

死にたい

あの人に

会いたい

あの人会いたい人

会えないのは

とても悲しい


魔女は娘の頬を撫でる

優しく

優しく

涙をぬぐう


だめよ

生きなければ

生きて

私にその色を見せ続けて

その

なよ竹の色を

私の男あの人に会うまで


あの人に

会うまで


窓から風が吹き込んで

黒と銀がなびく

薔薇の香りに包まれる

月のような瞳と竹のような瞳が見つめあって

銀色の娘は瞼をおろす

竹の色が隠れる



いや



ぽつり

愛らしい声で囁いて

するり

窓から身を投げる




あら




魔女は困ったように

瞼を閉じて





あは



ふふっ



笑いながら

薔薇の花冠を掴む


ふふっ 愚かだわ


右手に傷をつくりながら

窓の外へ放り投げた



簡単に死ねるわけないじゃない




















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