中堅冒険者の街・ブーストその②

「ここがブーストねぇ…」


俺たちはエミリアによるテレポートにより、目的の場所「ブースト」に着いた。あたりは暗くてよくは見えないが、家の作りはアクセルの中世ヨーロッパ風と違い、木製の家が多い。なんか日本の金持ちの小さな別荘が建て並んでるようだ。



「それでは、私はこれで」

「うん。ありがとうね。エミリア」

「助かりました。えーと…エミリアさんでいいですかね?」

「いえいえ、エミリアさんでもエミリアでも構いません…よ…」


さすがに合ったばかりの礼儀正しいお姉さんに呼び捨てできるほどの神経はない。そんなことを思ってるとエミリアが下を向いて何かを考えている


「どうしたの?エミリア?」


とクリスが尋ねた数秒後、何かを思い付いたように手のひらを叩くと俺に向けて


「そういえば、あなたの名前を聞いてませんでしたね!お名前は?」


笑顔で訪ねてきので少しドキッとしてしまったあんなに美少女に囲まれていたのにまだ慣れて

ないのか!いや中身が問題なる連中ではあるが…

そんな動揺が口にも出たのか少し噛みながら言ってしまった


「サ、サトウカズマって言います。」

「そうですか。不思議なお名前ですね。で、あなたに言っておきたいこがあるんです」

「?何でしょうか」


初対面の俺に対してなんだ?と思った矢先、エミリアの言い放った言葉は…

「彼女、初めてなので、やさしくしてあげてくださいね♪」

「え!?」

「ちょっとエミリア!?何言ってるの!?」

「では、お二人で素敵な夜を~♪帰るときは宿まで来てくださいね♪」

「ねぇ!?エミリアァァァ!!?」


エミリアはそれだけ言い残すと、夜のブーストに消えていった…

しかし、俺がモテ期なのは間違ってなかったわけで。さらに急に宿なんて…。エリス様は案外大胆なようだ…





ん?エリス様で初めてを使う?つまり俺は真の女神が初めての相手なのか!ヤバイ。これまでにないぐらい心臓がバクバクしてきた。お父さん。お母さん。おれは女神の導きによって大人の階段をついに登ります!


「全くエミリアは……助手君いくよ!………………って何顔赤らめてるの!?」

「ん!?え!?あ!?えーと、えーとべ、別にエリス様との初めてを頭の中で妄想してた訳じゃないよ!さっそく宿へいこう!」

「じょ、助手君ってば何言ってるんだい!?色々ツッコミたいけど目的忘れてない!?神器の回収に来たんだよ!?」

「え?それは嘘でホントは俺との愛を育むための…」

「違うよ!何言ってる!?エミリアに騙されないでよ!」


嘘なのは知っていても少し残念だなぁ…

やっぱりクリスの姿とはいえ、エリス様と思うと慌てる姿は可愛い。さらに冗談のつもりで言っててもガチで照れながら慌てるあたりがさらに可愛い。やっぱり正ヒロインはここにいたんだ。


「冗談ですよ。何慌ててるんすか、お頭。さっさと行きましょう」

「切り替え早いね!?あんまり君とそういう噂にはなりたくないから慌ててたんだけど…」

「さらっと酷いこと言いますね、お頭!というか、もう何度も体を触りあった仲じゃないですか。今さら何を…」

「それ君の一方的なセクハラだよ!!?」


そんな風にギャアギャア言い合ってると


「うっせぇぞ!冒険者かなんだか知らねーがイチャつくなら宿行きやがれ!」


「「す、すいません!」」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「意外とでけぇな。いや、ダクネスの家に比べたら全然か…」

「まあ、この街を支配してる貴族だしね。ダクネスのところは貴族の中でもトップだけど、この貴族は真ん中ぐらいだしね。到底及ばないかな」


俺たちは先ほど怒られた場所から 離れて貴族の屋敷へ侵入できる場所から来ていた。屋敷の外見はレンガで出来ており、俺らの屋敷と似ている感じで、大きさは俺らの屋敷の2倍ぐらいでぐらいといった感じか。なんかシルバリアファミリーの家を再現したみたいだ。侵入ルートはクリスが既に手配してあるみたいだ。俺はエミリアにバレないように外していた仮面を付けた。これをはめるとテンションが自然に上がる。今日は満月ではないので絶好調ではないのだが。


「よし、俺は準備OKだ。で、どうやって入るつもりなんだ?」

「うーんと、まずは屋敷の中に入る方法なんだけど、この屋敷には煙突が3つあるでしょ?そこから入ろうと思ってるんだけど」

「なるほど。ん?でも、煙突の下って普通は暖炉とかじゃないか?今は煙が出てないから火はついてないとしても、暖炉があるとなるとリビングとか広間とかでバレやすいんじゃ?」

「さすが助手君!話が早くて助かるね!実は二手に別れてやろうと思うんだ」

「え?」

「実はこの3つのうちどれかが大広間ということはわかったんだけど、どれかがわからないから、二手に別れて、もしどちらかが大広間に落ちてバレたとしてももう一人が神器を回収出来るようにしたいからね。さらに一人が見つかっておとりになってくれればそれで、もう一人が順調に進めやすくなるかもね」


中々盗みをするには強引な気もするが…わからない限り、理に叶った作戦だ。


「了解です、お頭。とりあえず、バレるまでは作戦を決行して、バレたら逃げるの優先でいいですね?」

「そうだね。バレてさらに逃げ遅れたら、大声で叫んでね。まあそれはないと思うけど」

「それはフラグになるんでやめてください。というより、もしバレてどちらかが、撤退したかわからないと不便じゃありません?」

「確かに一理あるね。まあでも、誰かにバレたらそれでどたばたしたり、屋敷を守ってる騎士たちの掛け声で聞こえるから問題ないし、大丈夫だよ。…なんて言ってるうちに時間は迫ってるから助手君、急ぐよ」

「わかりました、お頭。ところでお頭。煙突ははどれにするんですか?」

「あ、そういえば。どうしようかなぁ…」


煙突は綺麗に三つ並んでいる。俺もどうするか。基本的に真ん中は大広間っぽいよな。そうなると、右と左…

ここはクラピカ理論で右いきますか。


「「じゃあ、俺(私)右で」」











「「やっぱ俺(私)は左で…」」


決まらねー…


「えっと、どうします?お頭」

「じ、じゃあ、私左行くから、助手君に右は任せたよ?」

「了解です。じゃあさっそくいきますか」

「うん。お互い無事にたどり着けるといいね」

「お頭、フラグ建てすぎです」


俺たちはそんな会話を交わしてそれぞれの煙突に入っていった…

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