これは確かに兄妹による科学的見知の無い思考実験譚だ。

第二幕、まで拝読させて頂きましたがなるほどこれはミステリーでありながらもアンチミステリーの属性も十分に隠されています。
各幕、中心となる事件発生後、主人公の二人である湯島兄妹の妹、泪ちゃんを通して捜査状況を知る涙君。

それとは別に淡々と捜査は進み、親戚の泉水おば…お姉さんを中心に事件は一応の解決を迎えます。

それに違を唱えるのは安楽椅子探偵ポジションのイケボ(妹談)な兄。状況証拠から導き出される犯行動機とは別に心理学的見解により容疑者達の外郭から真に操られた、操ったであろう真犯人を推測します。含みを持たせた状況に違う角度から刺し込む兄の思考実験。アンチミステリーとも言えるその見解をどう捉えるかは読者次第です。

人物の役割配置とその幕に合わせた心理学的要素の限定的采配のバランスが見事です。読者が混乱しない様に踏み込んだ用語は多用せず、登場人物達がまるで道化の様に私達にそのヒントを与えてくれます。

本格ミステリーにアンチを少々混ぜた兄へ愛を捧げる妹とそのパンツの物語。

ところで……泪ちゃんの携帯電話代とバッテリー…そんな装備で大丈夫か?
大丈夫だ。溢れすぎている兄への愛が奇跡を起こすのですよ。

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