第23話 コミュ症からの脱却

洋服屋というのは、普通の接客業とは違う。

その最大の理由が、お客様との距離感が近いことにある。

お客様ひとりひとりをよく観察し、お客様を相手にセールストークをしなければ売れない。

もちろん、前に働いたお店もそうだった。


だが、新しく入ったお店とは大きな差があった。

それは、新しく入ったお店の方が絶対的にお客様の数が多かったのだ。

前のお店はあくまで若者をターゲットにしたブランドだった。

新しく入ったお店は、老若男女のみならず、キッズにベビーまでターゲットにしたブランドだったのだ。


お客様が多いということは、それだけ会話する機会は増える。

お客様のことをよく考え、どう話したら売れるか?

どうしたらその服をいいと思ってもらえるか?

どうしたらいい雰囲気の会話を繰り広げられるか?

いつもそんなことを考えていたし、すぐに実践して、他のスタッフのレビューを受けた。

つまり、コミュ症にとってはとてもハードな環境下だった。


だが、そんな環境下にいたせいだろうな。

2年も経った頃には自分がコミュ症だったことを忘れそうになる程、コミュニケーションとるのが得意になってしまっていた。

前はコミュ症だったために空気を読めないような発言をしたり、タイミングを間違えたような発言も多かった。

けど、そんな失敗はいつの間にかどんどん減っていった。


こんな風に、自分に自信がない、コミュ症、将来が見えない...といういくつものコンプレックスの壁のうち、コミュ症を克服してしまった。

そうか、コミュ症を克服するためには、結局人より多く会話するしかないんだということに気づいた出来事だった。

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