第13話 ダサいファッション

ふたつめの組からのいじめも、まあ似たようなものである。

彼女たちとは、ある大学の授業で一緒になったのだが、その授業が終わって次の期以降、同じく遠巻きに噂のような事をされるようになったのだ。

わたしの方を見て「口拭いてるよ」とか、笑われたりとか...そんなふうだった気がする。

こちらも、彼女らと直接何かがあったわけじゃない。

たまたま授業で1回、彼女らのうちの1人とペアを組まされた、ということぐらいしか記憶にない。

だが...おそらくであるが、理由はわたしのファッションにあったんじゃないかな、と感じている。


オタク少年で、ファッションに興味なんかなかったわたしだ。

服も、親の金でしか買ってもらった記憶がなく、買う場所はいつもユニクロと決まっていた。

そんなわたしが、まともなファッションセンスを持っているはずもなく、また、友達とファッションの話をするはずもない。

だから、まともなセンスのファッションなんてできなかった。


大学生活が始まれば、そんなわたしがファッションに苦労するのは目に見えていた。

そこで、多少なりともそのダメなファッションセンスをカバーしようとした。

高校時代の友人のひとりに、ファッションセンスを持ったヤツがいて...仮にNとしておこうか。

大学1年目の時、そのNから、多少のファッションのアドバイス...のようなものを受けるようにしたのだ。

だが、そんな付け焼き刃では失敗する事も多かった。


もともとはユニクロのみの無難かつダサいファッションであったが、オシャレに見せようと努力して、逆に変なファッションになってしまうことがあったのだ。

例えば、色の組み合わせ方がおかしいとか。

薄いTシャツを1枚で着ていたので乳首が...とか。

夏に近く、暑くなっていたにもかかわらず、春のアウターをそのまま着続けていた...とか。

そういう話はいくらでもあった気がする。

もしかしたら、そのうちのどれかが彼女たちにとって、なにか嘲笑の対象になるようなものがあったのかもしれない...。

彼女たちとは、例の高校のクラスメイト以上にもう会う可能性はないだろうが、もし覚えていたら何がネタになったのか、訊いてみたいものだ。


ともあれ、やる気のなさ、大学の授業についていけない事で、成績は低下するのみの状態に陥ってしまった。

さらに、いじめがあったことなどが合わさり、もともとなかった自分に対する自信が完全に失くなってしまったのだ。

その結果、大学に行くことすらままならない、留年を重ねるだけの堕落した大学生活が始まった。

そんな大学生活は、大学5年目まで続いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る