この素晴らしい世界に道連れを!

ユアシアン

プロローグ 1

 あなたにとって、人生のターニングポイントと言うのは何時でしょうか?


 夢を見つけた時? 尊敬する人物に出会えた時? ちょっと被りますけど恋をした時でしょうか?


 こう言っている私自身も、人生のターニングポイントと言うものはありました。 しかし、それはその中のどれにも当てはまりませんでした。

 何故なら――――





 それは、私がいつものように携帯をいじりながら登校をしていた朝の事でした。

 まだ夏ではないのに日差しはすごく良好。 人によっては暑く感じるかもしれません。 実際私自身も、早くも制服を半袖のセーラー服といった夏服に変え、胸下辺りまで伸びている髪を左右二つに結ったクールビズスタイルでいました。


「はぁ〜……店舗限定かぁ……うちみたいな田舎からじゃ、都会は遠いしなぁ」


 そんな私が今携帯で見ているのは、とある人気ゲームの新作情報。

 そう、私は花も恥じらう女子高生の身でありながらゲーム大好きっ子であり、このゲームはそんな私も大好きなシリーズなので、できれば特典のついた限定版が欲しいところなのですが……ビックリな事に、なんと限定版は東京の店舗限定。 地図で見れば割と近いように見えるのですが、バスでも片道2時間は軽く超えます。


「さすがに東京は無理だよぉ…………なんでそんなクソな事をするの公式は…………」


 私にこんな仕打ちをする相手に怨念を呟いても、販売店舗が増えるなんて事はありません。

 この際です。 多少値が変動するかもしれないし発送日が遅れるザマを見せられるかもしれませんが、通販サイトを利用する事にしましょう。 背に腹は変えられません。 お金はお父さんにちょっとサービスすれば良い話です。 肩揉みくらいで良いかな? 良いよね? お風呂は流石にちょっと恥ずかしいし。 うん、よし! そうと決まれば早速チェック! ………………お?

 今、視界の端で緑色のジャージを来た男の子がすれ違ったのが見えました。

 多分同い年くらいに見えたけど、学校はいいのかな? と言うかここら辺に高校なんて一個しかなかったと思うけど…………あれ? 休みじゃないよね? あれー?

 何て事を考えながら、私は差し掛かった横断歩道を渡りながら、御用達の通販サイトにアクセスし、ゲームタイトルを検索します。

 そんな時でした。




「危ない!!」




 私が携帯をいじりながらいつも通りの登校している時、そんな声が横から聞こえたと思ったら、私は背中に強い衝撃と浮遊感を感じました。 誰かに突き飛ばされたようです。

 地に足がつかないまま、目線だけでそれが誰なのかを確認すると、そこには見慣れない男の子が必死な形相で両手を突き出していました。 まるで、何か危ないものから離させる様に。

 もしかして助けてくれたのでしょうか……? でも一体何から? 

 しかし、そのことを確認する事は出来ませんでした。 何故なら、その景色を最後に、私の意識はシャットダウンされましたからです。

 そして――――――――――――――




「……………ここ、は……?」


 気付いたら私は、真っ白な空間にいました。 いや、白というよりも無と言った表現の方が言った方が良いのでしょうか。

 無の空間。 それはどこか、ここが全ての始まりであるかのような雰囲気を醸し出しています。

 しかしそんな空間にも、私以外に存在しているものがありました。

 まず、私自身が腰かけている、ホームセンターにでも行けば自然と目にしそうな簡素な椅子。 それとは逆に、まるで玉座のように無駄にきらびやかな装飾が施されたこちらもまた、椅子。

 そして、その椅子に良く言えば優雅に、悪く言えば偉そうに腰かけた女性がいました。 同い年くらいでしょうか。

 稚拙な表現になりますが、すごく美しい人でした。 水色の髪は絹の様にと言っても失礼に値しそうなほど滑らかかつ艶やかで、顔立ちは美しいながらも幼い少女の様に可愛らしくもあり、体も出るとこは出過ぎない程度に出て、腰回りもキュッとして、短いスカートから伸びる脚は細すぎない程度に細いかつ肉つきは良いという素晴らしいプロポーションです。

 同じ女性として、本来は自信を失うべきなのですが、それすらも思わせない圧倒的美貌。 

 きっと誰もが彼女の容姿を見たらこう思うしょう。


 女神様、だと。


 私が「ほぅ……」と息を漏らしながら見とれていると、その女神様(便宜上こう言います)はその瑞々しい唇を開き、こう告げました。


「ようこそ死後の世界へ。 私はあなたに新たな道を案内する女神アクア。 日比田ひびたつみれさん。 残念ですが、貴方の人生は終わってしまったのです」


 そう、私の人生のターニングポイントそれは――――私の人生の終わり。 私自身の死でした。

 しかしそれは、私の第2の人生の始まりでもあったのです。


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