第11話リリアーナ・ノワール③

 リリアーナとの試合も最終戦に突入する。現在互いに1勝1敗。この勝負を制した者が真の勝者となる。

 敗北許されないこの1戦、高速展開と高火力で敵を圧倒する自殺的スーサイドブラックを使用するリリアーナは先攻からスタートの為、有利といえる。先の勝負同様、初手からリアニメイト戦術による『アニステルトの疫病犬』を展開し、ナナキのマナクリーチャーを除去し、マナ基盤を破壊すれば先の1戦同様の圧勝になるからだ。そして先攻の為、阻害されずに出来る。

 当然リリアーナはそれを把握しているが、余裕はなかった。引っかかっていた。前の勝負におけるナナキの動きの無さ。そしてナナキの言葉を。

 故にリリアーナには油断は無かった。確実なる勝利を得る為、サイドボーディングも、よりむごいまでに相手をメタった形にした。

 

(負けよう筈がない。相手の急所を刺せれば……)


 不安はある。されど自信もあった。リリアーナの現デッキはナナキのデッキより上を行っている。その自負が自信を保たせていた。

 そんな思考が入り混じりながら、シャッフルを終え、ナナキの目の前にデッキを差し出すリリアーナ。手元に震えや冷や汗などは無い。心理的に自信が上回っている証だ。


「カットをお願い」


 ナナキを真っ直ぐと見据え、そのままナナキの手前にデッキを置く。


「ああ。こちらも頼む」


 ナナキが返事を返し、同じくリリアーナの左手前に自身のデッキを置く。左手はリリアーナの利き腕はない。先のやり取りでもあったナナキ流の配慮だ。


「そんな気を使わなくてもいいのに……」


 ぼやきながら、左手前に置かれたデッキに目線を切り替えるリリアーナ。この場面で尚配慮ある行動。これはナナキもまた心に澱みなく平常を表している。

 リリアーナは手渡されたナナキのデッキを見て、心に一切の迷いや怯えが感じられなかった。60枚という枚数のカードが1枚1枚乱れる事無くピッタリと、山となり積まれているからだ。1枚たりとも1ミリ程もはみ出さず、山を作っている。まるで軍隊の整列の様な美しさと不気味さを兼ね揃えていた。


(……大した奴ね)


 見惚れる様な美しいデッキを眺め、リリアーナは心の中でナナキを称えた。そして認めた。ナナキは自分よりもメンタル面では上にいる相手だと。


(だが、勝負は私が頂く)


 リリアーナにも自信がある。故にその程度では動揺などはしない。左手を使い、ぎこちない動きで山を3つにわけ、それを無作為に並べてまた一つの山にした。


「カットは終わったわ」


 一言添えてカットしたデッキをナナキの手前に差し出すリリアーナ。


「こちらも準備完了だ」


 カットを同じく済ませたナナキがリリアーナの右手前にデッキを差し出す。そのデッキは相も変わらず、美しく揃えられていた。

 

「では……始めましょう」


 デッキが置かれた事を確認したリリアーナが開始の声を上げる。その声と同時に、両名ともデッキを指定位置にセットした。


(先手1ターンで勝負がほぼほぼ決まる。初手次第なら……負ける要素はない)


 気合を新たに、デッキの上からカードを引いていくリリアーナ。1枚引いては右てから左手に引いたカードを一切カードを見ないで手渡し、また右手でカードを引いていく。その作業を6回行い、全て終わってから運命を決めるカード、初手手札を確認した。それを確認し……勝利を確信した。


(理想形とまではいかないけど……勝ちうる)


 最高の形ではないが、勝利を確信するほどの手札に安堵と自信が籠るリリアーナ。

 対してナナキは手札を確認した後も、これといって変化はない。無表情に近い。それが返ってリリアーナには不気味だった。

 しかしリリアーナは臆さない。それ以上に手札が仕上がっていたからだ。


「では始めるわよ。私のターン」


 一声を上げ手札のカードを1枚引きぬくリリアーナ。最終戦が開始された。


「エネルゲン(黒)をセット。更にエネルゲンをタップして『血の代価』をプレイする」


 この対戦で幾度となく展開されたリリアーナの動き。初手『血の代価』はリリアーナの操るスーサイド・ブラックにおける理想的初手だ。高速展開が決まったような物になる。


「そして2マナを使い『思考殺し』をプレイする」


 開幕からのハンデス。これ1枚で情報量という面において、圧倒的にリリアーナが優位に立つ。


「さあ、手札を見させて頂ける?」


「ああ」


 流石に今回はギブアップをしないナナキ。対抗策は無いので何も出来ない為、手札を全て表向きにして場に置く。

 ナナキの手札は基本エネルゲン(緑)1枚。特殊エネルゲン『亡骸色の墓碑銘』1枚。結界術『停滞の心得』1枚。クリーチャーカード『エルフのスカウター』1枚。カウンター呪文『魔術散破』1枚。バウンス呪文『三世帰り』1枚だった。


『魔術散破』 コスト (青)

魔術

対象の呪文1つを打ち消す。

SS:C コモン


 形としては悪くない手だ。『亡骸色の墓碑銘』の起動コストとして3枚捨てるにしても3色確保した形になっている。しかも基本エネルゲン(緑)を確保した形だ。リリアーナからすれば、潰せれば優位になれるカードだ。

 しかしそれ以上にリリアーナに吉報だったのはカウンターとバウンス呪文が入っていた事。1戦目では使用されていない呪文だ。サイドボーディングで投入したか、温存していたかの2択だ。

 そしてこの2枚は青。ドローソースも青。2戦目で基本エネルゲン(青)を確認しているので、ナナキのデッキのマナエネルゲンの投入比率も予想が建てられる。リリアーナの予想は緑3青2白1特殊エネルゲン4と予想。青によってもカウンターとドローで時間が稼げるし、緑はマナクリーチャーをプレイするのに確保して当然。ならこの中で潰しておくべき手も決まる。


「特殊エネルゲン『亡骸色の墓碑銘』を捨てなさい」


 リリアーナはまず相手の基盤潰しから始める。『亡骸色の墓碑銘』が無ければ手札の『魔術散破』『三世帰り』『停滞の心得』はまず腐る。更に『エルフのスカウター』はダブルカラーコスト。エネルゲン緑か特殊エネルゲンを再度引かなければ、展開しずらい。序盤のテンポを削ぎ、展開力と速度で圧殺する戦術の片鱗とも言える選択だった。


「了解した。解決だ」


 『亡骸色の墓碑銘』を墓地に置くるナナキ。その後公開していた手札を裏向きにして左手で束ねて回収する。

 ナナキの一連の動作を確認したリリアーナは、更に展開する。


「対応後、残りの黒マナで『アニステルトの先兵』をプレイ。SS:B」


『アニステルトの先兵』 コスト 黒

パワー2 タフネス1 タイプ 魔族

『アニステルトの先兵』が場に出た時、あなたは2点のライフを支払う。

SS:B コモン


 デメリット持ちクリーチャー。性能はそう高くないがマナコストの安さが強みだ。マナ加速無しで初手パワー2持ちが展開できる為、攻めがスムーズに行える。


「ターンエンド」


 リリアーナはこれでライフ15点となる。体力差は大きく開いたが、情報量と展開力で大きくリードを取った形になる。


「俺のターン」


 ナナキがリリアーナのエンド宣言を確認した後、移行宣言をとる。そしてすぐさまデッキからカードをドローした。


「エネルゲン(緑)をセット。ターンエンド」


 特に動きはなく、ナナキはエンド宣言を言う。


「私のターン。アンタップフェイズ、ドローフェイズドロー」


 リリアーナのターンに移行。カードをドローし、更に展開を進める。


「エネルゲン(黒)をセット。更に黒2マナで『旋回する狂獣』をプレイ。SS:B」


『旋回する狂獣』 コスト ①+黒

パワー2 タフネス2 タイプ ビースト

飛行

『旋回する狂獣』が戦闘でダメージを受けるか与えた場合、あなたは1点のライフを支払う。

SS:B コモン


 飛行持ちクリーチャー。リリアーナの合計パワー値が4になる。


「バトルフェイズ移行。2体でアタックよ」


「通しだ」


「ダメージチェックが入り、私のライフから『旋回する狂獣』の効果で1点失われるわ」


 このアタックでライフはナナキ16。リリアーナは14となるスーサイド・ブラックとしてはいささかスピード不足だが、パワー値では大きく差をとった形になる。


「ターンエンド」


「俺のターン。ドローフェイズドロー」


 ターンが移行し、ドローを行うナナキ。このまま手を拱いていてはやられる。展開を促進させるカードをナナキは欲していた。


「特殊エネルゲン『水連の結晶』をプレイする」


『水連の結晶』 特殊エネルゲン

『水連の結晶』をタップする:あなたのマナプールに①を加える。この時、あなたは1点のライフを支払ってもよい。支払った場合、あなたがコントロールする基本エネルゲンが引き出せる色か、あなたがコントロールするエグジスタンス状態のカードの持つ色のいずれか1つを引き出す。


 ナナキの思いは伝わり、展開を促すカードを引いて来た。『水連の結晶』は自分のコントロールするカードの色を1点と引き換えに1マナ引き出せるカードだ。最大6色まで引き出せる事が可能だ。

 現在ナナキの場は基本エネルゲン(緑)1枚のみ。『水連の結晶』は緑マナのみ引き出せる事になる。

 

「1点のライフを支払い緑を引き出し、2マナで『エルフのスカウター』をプレイする」


 ナナキのデッキに置ける、回転率を高めるキーパーツ『エルフのスカウター』が展開される。これでナナキのデッキは大きく回る形になる。

 しかしリリアーナは動じもしない。元より手札を確認した時から、既に潰せる策を持っていたからだ。


「そして『エルフのスカウター』をタップし、『翻弄するエルフ』をプレイ」


 展開後、直に能力を起動させるナナキ。デッキからカードを選び、場に展開する。その後カードをシャッフルする。


「カットを頼む」


「ええ」


 シャッフルしたデッキをリリアーナに手渡すナナキ。受け取ったリリアーナはカードを3つの山に分け、それを積み直す。それが終わるとナナキに手渡す。

 処理が終了され、場には2体のクリーチャーが張られる。


「バトルフェイズ移行。『翻弄するエルフ』でアタック」


「通しよ」


 初めて攻勢に出るナナキ。リリアーナのライフが12となる。


「ターンエンド」


 エンド宣言を行うナナキ。場の2体のクリーチャーはタフネス2の為、『アニステルトの疫病犬』が展開されても、能力で倒される心配は無い為、基盤が安定する。

 しかしリリアーナもそんな事は百も承知だ。当然対抗策は控えてあった。


「私のターン。アンタップフェイズ、ドローフェイズドロー」


 カードをドローし、ナナキに対して攻め立てる。


「エネルゲン(黒)をセット。黒2マナを支払い『散華』をプレイ。SS:Cよ」


『散華』 コスト 黒黒

魔術

クリーチャー1体を対象とする。対象のクリーチャーを生贄に捧げる。

SS:C アンコモン


「当然通しよね? 貴方の手には対抗できる策が無いものね」


「ああ」


「対象は『エルフのスカウター』よ。生贄に捧げない」


 ナナキは無言で頷き、墓地に『エルフのスカウター』を送る。

 『散華』は現環境における最強のクリーチャー除去呪文とも言われる除去呪文だ。理由は『炎刃翼のサラマンダー』のような破壊されない耐性にすら問答無用で刺さる点。それでいてデメリットもなく2マナと軽い。

 そして【青黒コントロール】が現環境に置いて、最も強いとされる理由の一つ。青の優秀なドローとカウンターに、黒の最強クラスの除去呪文が混じるのだ。並のデッキでは太刀打ちすら出来ない。

 

 それ程まで環境に影響を与えているカードだ。当然ナナキはリリアーナのデッキに『散華』が入っている事を知っていた。

 更に言えば手の内にある事も把握していた。だからこそ、『エルフのスカウター』を攻撃手段にも防御手段にも使わず、即能力を起動させた。すぐに除去されると踏んでいたからだ。

 それをナナキはリリアーナの『思考殺し』の時点で把握していた。本来ならナナキのデッキに置いて、最も回転率に影響する『エルフのスカウター』をあの時、リリアーナは選ばなかった。選ばない時点で、敵にクリーチャーを処理する手立てがある事が読める事が出来る。


 読んでいた想定内の動き。その為、ナナキは至って冷静。重要パーツの『エルフのスカウター』を失っても顔色変えずに、リリアーナを真っ直ぐと見つめていた。


(動揺なし……尊敬すらしてしまうほどね)


 リリアーナはそんなナナキに見つめられ、感心していた。ポーカーフェイスすら超え兼ねるその変哲の無さに。

 頭で分かっていても人間は感情を完全には処理できない物だ。顔であれ、声であれ、何かしらに感情は憑依する。

 しかしナナキにはそれが無い。そしてリリアーナには自分にはそれが出来ない事だと理解している。故に尊敬の念すら抱いているのだ。


「でも、勝つのは私よ。バトルフェイズ移行。2体でアタックよ」


 考えを一旦、思考の片隅に置き、攻撃に転じるリリアーナ。場の状況はリリアーナが優位だ。


「対抗はしない。通しだ」


 フルアタックが通り、ナナキのライフは12になる。リリアーナは『旋回する狂獣』の効果により、1点のダメージを受けて9となる。


「ターンエンドよ」


 エンド宣言を行うリリアーナ。


「俺のターン」


 以降宣言と共に、アンタップ処理を済ませ、ドローフェイズに移行するナナキ。場は圧倒的劣勢。マナ基盤か、緑のクリーチャーかの何方かが必要な場面だ。


「ドローフェイズ……ドロー」


 カードをドローするナナキ。ドローしたカードを眺める。それをしばらくして手札に加えてから、エネルゲンを1枚タップした。


「緑1マナを支払い『エルフの女魔術師』をプレイする」


 6色全てを出せる『エルフの女魔術師』をドローしたナナキ。すぐに展開する。

 当然だ。相手であるリリアーナの手札は現在0枚。以降はデッキトップ次第だからだ。この場面に限り、最も警戒されるであろうこのカードはフリーパス当然になっていた。

 しかし『エルフの女魔術師』はプレイした最初のターンは能力が起動できない。次のリリアーナのターンに『アニステルトの疫病犬』か『散華』を引かれれば、3マナ確保している為、直にでも飛んでくる。

 その為、次のリリアーナのドローは重要な場面だ。『エルフの女魔術師』は除去されれば、ナナキは今後の展開に大きく支障をきたす。そうなればリリアーナの猛攻に対して防ぐ手立てはない。

 逆に『エルフの女魔術師』を野放しにしていれば、回転率が大幅に上がり、ナナキのデッキはその本領を発揮する。そうなればデッキトップ勝負になるリリアーナが大幅な不利となる。


「バトルフェイズ移行。『翻弄するエルフ』でアタックする」


 ここで初めて攻勢に出るナナキ。リリアーナのライフが7となる。ライフ差においても差が開いてくる。


「ターンエンド」


 エンド宣言を行うナナキ。


「私のターン。アンタップフェイズ、ドローフェイズ……」


 今後の勝負を占う、リリアーナのドロー。このドロー次第で今後が左右されると言っても過言ではない。

 故に知らず知らずの内にカードを引くリリアーナの右手には、期待を憑依した力が籠っていた。


「ドロー」


 カードを引き、素早く確認するリリアーナ。

 確認した後、直に不気味な口角の吊り上がりをナナキに見せた。


「3マナ全てを支払い、追加コストとして『旋回する狂獣』を生贄に捧げて『寄生植物・アニステルト・アマリリス』をプレイするわ。SS:C」


『寄生植物・アニステルト・アマリリス』 コスト①+黒黒

パワー2 タフネス 2 タイプ 植物 ゾンビ

『寄生植物・アニステルト・アマリリス』をプレイする追加コストとして、あなたがコントロールする黒のクリーチャー1体を生贄に捧げる。

このカードが場に出た時、あなたは『寄生植物・アニステルト・アマリリス』をプレイする際に生贄に捧げたクリーチャーをゲームから除外してもよい。除外したクリーチャーのタフネスと点数で見たマナコストと同じマナコストの黒のカード1枚を手札に加えてもよい。

SS:C レア


 他のクリーチャーに寄生して召喚し、そしてそのクリーチャーの栄養価からカードと言う実を付ける悪魔の花。能力発動条件にタフネスとマナコストが同一数値の物でしか発動しない事、そして手に入るカードも同じでなくてはならない。何も考えず投入しても、効果は発動できない面倒な代物だ。

 しかしウィニー構築の様な低マナ圏で固めるタイプのデッキなら、発動条件を満たす事はそう難しい事でもない。

 そして現在のリリアーナの状況には、うま味十分なカードだ。条件を満たせて、且つ手に入れられるカードがハンデス呪文の『思考殺し』か除去呪文の『散華』の

どちらかと、質が高いからだ。


「対抗策は無い。通しだ」


 解決され、カードが場に出る。それと同時に『寄生植物・アニステルト・アマリリス』の能力が解決される。


「生贄に捧げた『旋回する狂獣』をゲームから除外し、私は『寄生植物・アニステルト・アマリリス』の能力で、墓地にある『散華』を回収する」


 リリアーナは『散華』を選択した。墓地にあった『散華』を回収し、手札にするリリアーナ。リリアーナの唯一の手札となる。


「更にバトルフェイズ移行。2体でアタックよ」


 そのまま攻撃に移行するリリアーナ。


「通しだ」


 ナナキの対抗はなく、2体のアタックが解決される。ナナキのライフが8になる。 リリアーナのデッキには『アニステルトの暗殺者』がある。マナコストは3マナで支払い可能。更にブロックされない効果を持つ。もし次のターンに引かれて、展開されれば、その場で敗北もある。8点もあるのに実はナナキも既に危険域に達していた。


「ターンエンド」


 終了宣言を発するリリアーナ。手札の『散華』は現在マナが無い為、使用は出来ない。その為『エルフの女魔術師』はこのターンに限り、見逃す形となる。


「俺のターン」


 ターン以降後、アンタップとドロー処理を済ませるナナキ。

 このターンは『エルフの女魔術師』を起動できる。しかし次のターンにはリリアーナの『散華』によって除去されているだろう。


「『エルフの女魔術師』をタップして白マナ生成。2マナ支払い『停滞の心得』をプレイ。対象は『寄生植物・アニステルト・アマリリス』だ」


 次のターンに除去される事を想定し、能力を起動させるナナキ。これによりリリアーナの『寄生植物・アニステルト・アマリリス』は無力化。更に『停滞の心得』はあくまでもナナキがコントロールする呪文。その為『水連の結晶』が、白マナを生成する事が可能になった。

 これによりナナキが盤面に置いて有利に立つ。


「更にバトルフェイズ移行。『翻弄するエルフ』でアタック」


 対抗策は無い為、当然攻撃が通る。リリアーナのライフは5となり、危険域に到達した。状況は圧倒的にナナキが優位だ。

 しかしリリアーナには依然として余裕があった。この状況下に置かれても平常そのもの。意に介していない。

 リリアーナには自信がある。この状況を打開させる自信が。


「ターンエンド」


 エンド宣言を行うナナキ。そしてリリアーナのターンが始まる。

 

(直に教えてあげるわ。今の貴方のそのプレイングはミスだと。今の私のデッキに対してはね)


「私のターンね。アンタップフェイズ、ドローフェイズドロー」


 カードをドローし、その自信はより絶対な物となる。思わず口角が上がり、唇は不気味な歪みを見せる。リリアーナは恐れすら感じてしまった。自分の引きに……


 現環境においてはゆったりとした展開が続いていた。だがこのリリアーナの引きにより、勝負は更に混沌と化す。

 この最後の一戦、大いに荒れた物になっていくのだった……





 

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Magician`s Legacy――魔獣が刻む黙示録 和大雄 @qnpn

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