心の貧困~貧困と精神疾患の問題は別物か

「非の打ち所のない貧しい人」ってどこにいるの? 〜高校生バッシング、もういい加減やめませんか http://www.huffingtonpost.jp/karin-amamiya/children-deprivation_b_11672198.html


 この大元の実際の問題となっている先のNHK番組は私自身は見ておらず、Twitterタイムラインから流れてきた情報で知ったのですが、今ちょっとした一大トピックとなっている様子。勿論、その「貧困」や「生活保護」という問題は、今後の自分自身にも十分当てはまるかもしれないことで、そちらから考えても個人的に身につまされることであり、その点でも自身でも真剣に考え、論じなければならないこととも思うけれど。


 ただこの件におけるバッシングの被害者の気持ち的に自分自身に照らし合わせて考えるのならば、何となくの感情として自分自身の精神疾患の問題としても十分何がしかの感慨を感じうることができることのような気がしてしまう。はたして貧困と精神疾患とは?おそらくは、「一見したところ、そうとは思えない」――ここがたぶん私自身が感じる双方の共通点と言えるのかもしれないが。その意味で今回の問題に、若干の個人的な思いがよぎってしまった次第。


 前職の天然石通販会社に勤めていた際、実は自分のこの病気「社会(社交)不安障害」について、よせばいいのに立場上の上司含め一部の人に、これまで感じてきた心の辛さや身体的苦痛について、今まで辿ってきた自分自身の半生含め、その経緯を手紙ないし口頭でカミングアウトしてしまったのですが、結果言われたこと、そして自分自身でも得られた結論は、「そのことを仕事上の言い訳にしてはいけない」ということ。


 勿論、私自身も一般論として究極的にはそうだと思います。だからってそれを仕事ができない理由にすることなんかできない。それとこれとは別問題だ。ただ......一個人の感情としての問題を考えた場合、こうした精神疾患的なデリケートな問題を自身の身に抱えている人と周囲に認識して貰っているのといないのとでは、大きな隔たりが。それでも、それは無関係だといえるのか。そんな余計なことは周囲には伏せておいた方がよいのか。正直それは私自身にもわかりません。


 結局その「余計なカミングアウト」によって、その人たちとの間に些かの溝が出来てしまったかもしれません。今はもうその会社も退職してしまっており、既に自分自身の過去の記憶と化してしまっているけれど。それでも、結局のところ「解っては貰えなかった」という、重いしこりが心に残ってしまったかもしれない。やはり普通の常人と、こうした目に見えない病を抱えている人とでは解り合えないのか?私はその人たちとはやはり違うところにいる人間なのか。


 私自身としても、普段は別段普通に暮らしているし、精神科で処方して貰っている薬を飲んでいるため以前ほどの生活上、仕事上の支障はそれほど感じてはいないのですが、それでもふとした瞬間に襲う対人関係における妙な違和感。自分は何かまずいことでも言ったのだろうか?何かしてしまったのだろうか?......そんな風に感じてしまうほど、自分に対する他人の態度や顔色などに不穏なものを感じてしまう。そして常に悩んでしまう。はては、そこに居づらくなってしまう。一体どうしたらいいのだろう、と。そう悩まずにはいられない。自分は何をしても他人から嫌われてしまうのだ。それこそ極端すぎる考えはないと自分自身でも思いはするものの、本当にそうとしか思えない瞬間があり、何となくこうして自分自身をやっていることに否定的な感情があふれてしまう。


 そして、ともすれば普通の人のように当たり前に勤めなければならないことにも、どうして?といった疑問が湧いてしまう。これは実際に義理の叔父にも言われたことなのですが、やはり何か仕事をしていなければならない。勿論それは今後の生活上の収入源などを考えれば当たり前のことかもしれませんし、単なる甘えた考えかもしれない。が、ただ今の自分自身の状態を考えると体力的なことなどもあり、それほど稼げるとも思えない。......だから今後、生活保護を、という話も今出てきているのであって(「亡くなった両親のこと、そして現在いま」参照https://kakuyomu.jp/works/1177354054880832188/episodes/1177354054881137205


 本音を言えば、私個人としては、そうまでして自分自身の身を粉にしてまで、あくせく働きたいとは思いません。そう、自分自身の夢を犠牲にしてまで......それ以上に、その結果身体を壊してしまったら元も子もない。上記のサイトで語られている今回の貧困問題でも、実際に生活保護を受けている人たちが、そういった理不尽な心の悩みを抱え、そのことで生活上おおいに身につまされている。「自分は生きていてはいけないのか」「普通の人間らしい豊かな生活をしてはいけないのか」――。


 リンク先のサイト記事でも言われていることですが、こうしたバッシングが当事者の精神状態を極限まで追いつめてしまう。加害者(と言われることにも身に覚えがないだろうが)からすれば、決してそんなつもりはなかったかもしれない。が、ネットやマスコミで広がった情報に何の気なしにふと漏らした感情や呟きが、そうした多数の身に覚えのない悪意として広まり拡散してしまう世の中。先日の某俳優の不祥事に際しメディアの前で謝罪した母親女優の件を思い出してみても、国民的アイドルグループSMAPの解散事件にしても、誰か悪者を設定して徹底して叩く、という行為が当たり前のことのようになり不特定多数の悪意が生まれてしまう社会。


 これも少しだけ横道に逸れる話だけれど、先頃、自著「破婚」を出版された作詞家の及川眠子さん。シリーズの映画が大ヒットし社会現象にもなった某アニメーション作品の主題歌ほかを作詞している方ですが、そのテーマソングの印税によって億単位の収入を得ており、文字通り「遊んでいても巨額のお金が入ってくる」状態なのだそう。それでも外国人の元夫に大金をつぎ込んでしまったことで文字通り全てを失ってしまった彼女。実際に著書を読んだわけではないのですが、やはりこの方のような人は金運がよいとは決して言えないのだろうな、と。相対的にそれが幸せとも思えませんし。


 そして才能は超一流でも本人の人間性が、などと揶揄され、おそらくこういうのも名が売れ富も得て世間的に成功した人へのやっかみの一種なのだろうなと思ったけれど、本当はもっと根が深い問題がここにも表れているのかもしれない。ふと、そんな風にも思ったりした。ふとした言動とか振る舞いや生活行動などが、ネットなどのメディアに広まると、些細なことでも話題にし、少しでも叩けるような余地があれば徹底して叩いてみせる。まるで獲物を血祭りに上げるハイエナのように、だ。そしてそれは、本人たちにしてみれば、ちょっとした暇つぶしや本来は声に出すまでもない単なる心の声でしかなかったりする。


 私自身、将来的にそうした“有名人”になったり、たまさかネットやマスコミの話題になったりするような存在になるようなことなど、たぶん今後ないとは思いますが。ただ――「それ」を理由にすることで世間から責められたり、貧困や生活保護の問題もですが、それで遊んでいるとか怠けていると言われることで、本来の本人の人間的な何かが失われるようなことになったら。それによって、むしろ自死さえ選んでしまう人もいる。それほど厳しい世の中なのか。無意識にでも誰かを責めずにはいられない、そんないたたまれない思いで世はあふれているのか......。


 ネットやTVなどのマスコミを通じて、思いもしない悪感情が確固とした形を取って忽然と出現する現代。それ以上に、今の世の中が格差や精神の貧困に、むしろあふれているのではないかと感じてしまうほど。ほぼ一般に平均的な人々は、誰も彼もがただ当たり前に働き娯楽を楽しむような(それが悪いわけではないけれど)漫然とした画一的な生き方しか知らず、特に若い人中心に本来の自分自身を開放することさえままならない社会。だからネットを通じて無為のままに不特定多数の感情が容赦なく爆発する。


 そんな中でやはり自分自身の「夢を持つ」ということが、どれほど大事なことか。それそのものは、おそらくその人だけにしかない唯一のオリジナリティなのでしょう。そのたったひとつしかない「あなた」というオリジナルを持つことの大切さ。それはイコール、その人が自分らしく生きることにほかならないと思います。


 本当に皆が皆、そうしたものを持って、本当の意味で心豊かに生きていけたら。


 今回の件では、私自身の精神疾患のこととは別に、こうしたことが実は今、大きな社会問題となってきているような気がしてなりません。特に今後の社会を担っていく若い人たちの間で物言わぬ絶望があふれるような世の中であってはいけない気が。その点では、私自身の世代はまだよかった。徒に夢にあふれていた子供時代。たとえそれが、形のない手には取れない絵空事だったとしても。何事もイメージすることによって、その意識の広がりによって、目に見える目の前の現実は形作られていくのではないかと思います。だから。


 “心の貧困”があふれる世の中であってはならない。心からそう思います。

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