第7話 人間転生転換期1

 カドゥ神は一部のセカンロイドの声に悩まされていた。

 彼らは投票警察と呼ばれる存在で、不正は許さぬ、断固として排除されるべきであると主張する者たちである。


「やあカドゥ神、大変なようだね」


 ナルゥ神の声だった。カドゥ神は抱えていた頭を上げて、懐かしい来訪に笑顔を浮かべ――、そのまま凍りついた。

 ナルゥ神が、その手に拳銃を持っていたからだ。


「ところでカドゥ神、神の代替わりというものは知っているか?」

「し、知ってはいるが、それがどうした?」

「セカンロイドの声はもはやあなたへの怨嗟に成り果てている、ということだ」


 何を言われているのかは理解できていた。

 だからこそカドゥ神は必死に頭を下げ、


「ま、待て、話し合おう! まだわたしにチャンスがあっても――」

「手遅れだ」


 ナルゥ神が、銃の引き金を引いた。

 直後にはカドゥ神の頭がはじけ飛ぶ。しかし、血や臓物は一切流れなかった。カドゥ神の体は小さな光の球になり、あたりをさまよう。

 

 その光がやがて、方針を得たように一つに固まり――、

 艶のある黒髪を持った女子大生くらいの姿になる。


「無事に代替わりは成功したようだな」

「ええ、みたいですねっ。すがすがしい気分です!」

「……さきほどと比べると、変わり過ぎな気もするが」

「気にしたら負けですよっ。さあ、いっぱいお仕事するぞーっ!」


 かくして、新生カドゥ神は仕事を始めた。

 民衆の声は参考程度に聞きつつ、同一工場で作られたであろうダミーロイドを用いた不正票を暴き、候補者に罰を科した。


「いや、それはいいのだが、なぜ……桃色ブリーフでさらし者なのだ」

「神になる前、好きだった古い作家さんの作品にそういうのがあったんですっ。でも実際に見ると、なんというかこう、ひきますねー、この光景」

「じゃあやめてやってはいかがか……」

「却下ですっ」

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