第2話 人間転生黎明期

 きっかけはカドゥ神の意思表明であった。


「従来の神のみで決定する人間転生のやり方は古い。これより先は、民衆に支持される者が人間に転生するべきなのである。よって、これよりわたしの名のもとにコンテストを開催する」


 そのニュースはある種の衝撃を持ってセカンロイド界をにぎわせた。

 時は西暦三千年、人間の一部が神へと至り、人間に転生することのできる魂であるセカンロイドを製造するようになってから、およそ三百年後のことである。


 セカンロイドは人間に姿こそよく似ているが、人とは違い自らの名前すらろくに持てず、下手をすれば意思も矜持すらもない心の空っぽな存在である。

 彼らは折りを見ては人間に転生する機会を与えられる。確固たる魂を持ち、命を輝かすことのできるセカンロイドのみが神に認められ、人間として生まれ変わるのが通例であった。


 しかし、そうやって転生したセカンロイドの多くは生まれて二十年とたたずにのたれ死んでしまっていた。

 その現状を受け、カドゥ神は此度の英断に至ったのである。

 また、カドゥ神はこうも残している。


「民衆に支持された人格者であれば、人の世であっても生きていけるはずなのだ。従来の方法も続けていくが、こちらのやり方がよい結果を生むと判明したならば、いずれは廃止も考えている」


 厳密にいえば民衆に支持された者が人間に転生するという流れは少し前よりあった。だがその多くの転生者は、神によって下僕として使い捨てられてしまい、用が済んだらあとはのたれ死ねとばかりの扱いを受けていたのである。


 そのことに対し疑問の声が上がることは予想していたのであろう、カドゥ神は話をこう結んだ。


「ナルゥ神が管理している地区からの転生者の扱いについてはよく知っている。わたしとて所詮は外様の転生者だと道具のように捨ててしまったことがあった。だが、今回は自らが管理したコンテストの責を持つ覚悟がある。転生者のことは無論、全力でサポートするつもりである」


 その言葉を懐疑的に受ける者もいれば、盲目に信じる人間もいた。

 何はともあれ、カドゥ神主催の第一回、かくして人間に転生するようですよコンテスト、通称カクヨウコンが始まったのである。

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