第23話 邂逅


憂はお礼を言う暇もなく、一矢様と、同じクラスの方かしら。。。と考えた。


多分違う。。。憂は、一矢様のクラブのお友達かしら?とバッジを思い出そうとした。ギザギザしたマーク。。。


さっきの人の手。。。まるでピアニストみたいに柔らかく、しなやかだった。。。


無意識に一矢の手のひらと比較して、クラブの人じゃないのかしら、と憂は、スーツの左についていたバッジを忘れないようにもう一度思い浮かべた。


どちらにしても、こんなに泣いていたら、満山家の人にも見られてしまう。


ハンカチで涙を拭うと、グレープフルーツかシトラスのような柑橘系の香りがした。ううん。。。ちがう。。。レモン?


後から気がついた。レモンバーベナの香り。。。


ゆっくり歩き出すと、先に行ったはずの薫子が華やか過ぎず、地味すぎない黄色の着物にあでやかなオレンジの金銀の帯を締め、歩いてくるのが見えた。

大柄な薫子はまるで大人のように見える。小さな自分とは対照的だった。

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