第7話 手鏡


キスしない、と言ったのに、一矢の柔らかな唇が押し当てられ、あろうことか、温かい一矢が自分をこじ開けようとした。憂は思わず抗って、一矢の胸板を思い切り押し返した。


我に返ったように一矢は、ごめん。。。憂ちゃん、お人形みたいにかわいいから。。。つい。。。本当にごめんね、許して?


そう言った。


『 一矢様、狡い。。。』


憂は思わずそう言った。


。。。何もしないって。。。言ったのに。。。。


憂は驚いて、無意識に自分の唇に触れ、生暖かい初めての感触に、それから咄嗟に、鏡。。。と、ビーズのバックを探した。


他の人が見たら。。。外から分かってしまう?憂は、そう口には出さずに、ビーズのバックを開けて、そこに着いている小さな鏡を覗き込んだ。



別に何ともなってない。。。ただ、いつもそうかもしれないけど、真っ赤だった。右の人差し指でそっとなぞっても別にいつもと何も変わりがなかった。


でもさっき、一矢様。。。



恥ずかしさで目を閉じて、それから少し怒ったようにビーズのバックを閉じた。


『 本当にごめん。。。僕からお兄さんには、頼むから。。。


憂ちゃん、僕のこと嫌いかな。。。? 』


一矢は、俯く憂の両手を取った。


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