第6話ローラIII


【サイド・ローラ】

 セバスチャンの顔色が冴えない。

 昼間のあれかなあって思うけど、さして興味もないし、お互い仕事があるわけだしさ。放っておいたわけよ。

 そしたら夕方にクラリスが来店した。セバスチャンの店に。

それだけで決定的に……決定的だった。

 少女みたいに髪を垂らしたクラリス。なんで名前で呼ぶかって? セバスチャンがそうするからよ。そのうつむいた顔を見て、彼はなぜか洗濯物を自分が運ぶって、言ったんだ。

 嫌な予感がした。

 なーんせ、クラリスは私らとぜーんぜん、違って見えるからさあ。

 上品だし、いつも着飾っているし、洋服持ちだし? セバスチャンには上客なわけだし、ま、常連さんよね。

 だけど、荷物は荷物。彼女は自分で運べないものは持ち込まないし、今までずっとそうだった。

 だけど、そのときだけは違ってた。

 うつむきがちにぼそぼそと話して、細い肩をすぼめて、まるでみすぼらしかった。だから私は彼の反応について、なんにも言わなかった。客と店員って言っても、人と人なわけだし。そういうこともあるよねって感じでさ。

 それがなによ?

 彼、なんで帰ってこないの。今夜。

 私のごちそうは? なんにもないの?

 ふざけるな! どれだけお腹すかせてると思ってんの? みじめ……。


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