第41話 森は厄介

 朝になり、また荷馬車に乗り込む。近くに前の荷馬車の持ち主とあの剣士が話をしていた。荷物は半分くらいだった。まだ負傷者もいるし、荷物も戻ってないから、今日はここで待つんだろうな。



 今日は森の中を何度も抜けた。回避したら時間かかるのかな? 森での戦闘は大変なんだけど。地図を広げ森の広さに諦めた。もちろんニケの解説付きだ。相変わらずこの世界の地図はわからない。ってかどうやったらわかるのか聞きたいけどニタの例の『トオルって……』っていうのは嫌だしな。


 森だと一文字が有効だ。狭い場所での戦闘だから。やっぱりこの荷馬車の戦闘員たちは強い。いつもは俺らが主体なのに、よほど荷馬車の旅に慣れているんだろう。

 牛の群が前から突っ込んできた時には地雷切りであっさり終われるんだけど、そのあとが大変だ。何せ一本道を走ってこちらに向かって来る。道に一面牛、牛、牛。さすが、牛だよ、重い、すごい重い。けれど、運ばないといけない道の脇へ。道の脇に山盛りの牛の残骸。あとからくる奴らはこれ見てこの道を通るんだよな。すごいやる気がそがれるな。



 一番厄介なのはムササビ。原型を飛行中しか現していない、もう完全な魔物。

 これが木から木へ飛び移っている。よく木が折れないものだと心配するほど飛んでくる。もちろん爪での攻撃つきで。魔法使いが雷を落としてくれたんで生き延びたムササビを切りつけて終了。戦闘は過酷だがムササビは魔法でほとんど森に落下したんで、道に転がってる少ない魔物の死骸を道の脇に運んで終わる。


 結局どっちにしても疲れる戦闘になる森。平原がいいよ。一時期の平原に対する恐怖心は一変する。俺たちの戦い方、戦闘力と共に。



 街に入った時には肩の痛みが少し戻ってきたけれど、昨日とは違っている。治ってきてるな。というか、また鍛えられてる?



 もう気にするのはやめた。あの倒れた荷馬車を見たら、関係ないと思えた。魔物は人間を狙っている。実際みんな商人は連れている。剣士や魔法使いや魔術師を。



 目的の街に着いた。この荷馬車はここまでだ。

 降りてすぐに、商人には見えない勇者伝説好きな荷馬車の主が言った。

「この先のテルーニャにいくんだろ?」

「ええ」

 テルーニャはニタの目的の街だ。だからこの世界の地図には無知な俺でも知ってた。

「俺もここで荷をさばいてから、また仕入れてテルーニャまでいくんだがこのまま乗るかい?」

「はい!」

 良かった。この先に行く荷馬車はどんどん減って行くだろう。魔王の城の直前まで行く荷馬車はほとんどはないだろうから最後は徒歩を覚悟してたのに。あの剣士達はこの荷馬車専属なんだろうか? やたらに強いのはそのせいか。

「テルーニャには特産品があってな。それが高値で売れるんだ。明日は荷を売ったり買ったりするから、明後日出発だからな」

「はい。わかりました」



「良かったね。トオル」

「荷馬車探しで苦労しなくてすんだな」

「ね、ね、明日は休み! なんだよね」

「ああ。うん」

 これがあったんだ。忘れてたよ。リンは飛び跳ね……てるのかもう。疲れはどこにいったんだ。

「俺は書くから!」

 早いなルート。これは勇者伝説には入れないのか? ある意味戦いだが? 勇者はすごく戦ってるぞ!

 まあ、こんなことを伝説に書かれても困るんだけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る