第34話 森
ガサガサ
ガサガサガサガサ
ガサガサガサガサガサガサ
ここは森を抜ける道。
ガサガサガサガサガサガサガサガサ
あの、魔物だと思われるものがチラッと見えてどんどん増えてるんだけど。運転している商人いいのか? このまま突っ切るつもりか?
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ
ダメだよ。まだ森の出口も見えてない。どう考えたって突っ切れないだろ?
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ
数が増えたんでハッキリ見えた。姿が。早くにやった方がいいんじゃないか?
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ
ようやく荷馬車は止まる。
「魔物お願いします」
荷馬車の持ち主、簡単に言うなよ。こんな状況最悪だ。魔物は森の中にいる。
でも、やるしかない。
リンに頼む。効くだろうか? 魔物相手に。
リンの呪文が聞こえる。空から降ってくるバナナの山。
ドサドサ
見事なバナナの山盛りだな。見た目は相変わらず完璧だ。
と、次々に姿を現す魔物の群。引きつけるだけ引きつけたいが、これにつられたのか? と一匹がバナナを手に取る! よし! だけどバナナは剥けない。そこまで表現してないって。次々とそれに加わるゴリラなのか猿なのかな、魔物の群。剥けないので怒ってバナナを投げ出した。もう限界だ。
「ニタ凍らせて!」
ニタの呪文が響く。
ガチガチガチ。
バナナとともに足元が凍る魔物の群。
「行くぞ!!」
魔物を切りながら思う。バナナに寄ってきた魔物。魔物って普通に食べてるのか? なんで人を襲うんだ?
凍ってる魔物にさらに森からもどんどんと出てくる魔物。ゴリラって言っても牙はあるし、爪も凄いのがついてる。さらに強そうな肩だし。威力は凄い。切りっても切ってもキリがない。船の激闘を思い出して地雷切りが使えないのが、我ながらすごく残念だった。
あたりが紫に染まるまで戦いは続いた。息も乱れる。頼む、もう出てくるな。
ようやく魔物の出現がなくなった。バナナはもう消えている魔物をどけて道を作る。
「ニタは休め。顔色悪いぞ。って!! ツバキ肩切れてるぞ!」
「ああ、うん」
ツバキ、めちゃくちゃ顔色悪い。いつから切られてたんだ。
「ジュジュ頼む」
「わかった。ツバキ登れる?」
「僕も引っ張るよ」
ニタとジュジュでツバキを引っ張りあげる。
「おい! ルート! お前はこっちだ、魔物を運ぶぞ!」
知らん顔で荷馬車に乗ってる魔術師。働け少しは。
あれ? リンがいない。そういえばバナナの群れもその後そこらに降らせたイガイガもない。
「リン? リン!」
魔物の死骸の山に混じってリンは倒れていた。
背中に大きな切り傷。意識もない。俺はリンを抱き上げ荷馬車へ運ぶ。
「ツバキごめん。リンのが酷い。ジュジュ先にリンを!」
そのまま荷馬車乗せるとニタとジュジュが抱えてリンを連れて行く。ツバキも苦しそうだ。
あ! 魔術師!
振り返り、渋々魔物を運んでるルートを連れてくる。
「な、何?」
「魔術師の仕事だよ。ツバキを頼む」
「あ、ああ。わかった」
ツバキを胡散臭いが一応魔術師であるルートにまかせて魔物を運ぶ。この森から早く去らないと。
全ての魔物を道の脇に運んで荷馬車に乗る。やっと走り出せる。
リンは意識を取り戻したみたいだ。
「リン、大丈夫か?」
「うん。ごめん途中から意識がなくなって」
「いいよ。無理するなよ」
四方八方からの攻撃だった。造形魔法には向いてない戦場だった。描いてる時が危ない。
意外にツバキの傷が治っている。最初にジュジュが治癒していたけれど、それ以上に治っている。魔術師の治療は見てたけど、ルートのは早いな。見かけ以上の魔術師なのか? こんな胡散臭いが。
「ツバキ肩ほとんど治ってるけど、痛みはないか?」
「治ってるよ! 俺が治せばあっという間さ!」
ルートに聞いてない。それにそんな自信あるならさっさと名乗り出ろよ。治すって。ルートの胡散臭さに拍車がかかっただけだった。
ツバキ、ルートの治療をそんなに嫌そうに受けないでくれ。仕方ないんだ。リンの方が深手だから。
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