第17話 夢の中へ

 さて、今晩はどんな奴が来ても油断しないぞ!

 昼間寝ていたからか、それともこの休憩後にまた戦闘という状況に慣れてきたからなのか、その両方なのかはわからないが昨日よりも体力的にもかなり楽な戦闘が続いた。もう魔物のレパートリーがなくなったから魔物に慣れたのもあるのかも。

 勇者のつるぎでガンガンと魔物を切り倒していくのは爽快にさえなってきた。まあ、紫色の液体が船に着かなかったら、だが。

 そろそろ朝方、巻いてない方の貝の群が襲ってきた時。なんか、いけそうな気がしてきた。ちょっとやってみよう。いい感じに四匹同時に登ってくる。俺は真横にさっきまではコンパクトに振っていたつるぎを大きく一を書く感じで振ってみた。

 ブシュ

 ブシュ

 ブシュ

 ブシュ

 貝は四匹とも真横に切れて海に沈んでいった。

 やれた! つるぎは魔物に直接は当たっていない。俺は空を切っただけだ。

 よし! 次! ともう貝は全滅してしまっていた。

 ああ、もう一度試したかったのに。あんまり余裕のないところで実験したら悪いので今のがちょうど良かったのに。




「坊主! 今のすごいじゃないか!」

 もう俺、船長のお気に入りだな。見てたのかよ。この人余裕あるよな。船長って何者感全開のオーラを発しているよ。

「いや、ちょっとやってみただけで」

「浮かんだんだろ?」

「はい」

 そう、浮かんだんだ。頭にさっきの攻撃が。

「それは魔法と同じで剣士も修行を積むといろんな技が使えるんだ。お前のはつるぎが違うからやっぱり技も違うなあ!」

 また、修行って、俺修行してるの今? かなり実戦してる気がするんだけど。




 *




 朝日が登ってきた。昨日は長かったが今日は違った。まあ、怪我をしてジュジュに治癒され続けてさらに、リンとツバキが戦闘に入ってくれてたんでヤキモキする時間が長かったからだろう。今日は自由の身でしかも昼間に寝てたんで快調だった。




 さすが魔物すんなり朝は迎えさせてくれない。

「魔物だー! 右側!」

 夜警も声枯れかけてるし。交代してるのに。これで、まだ、魔物がウジャウジャの海じゃあないんだよな。魔王の城ってどうなってるの?



 右側に走りより下を見る。灯りは邪魔なので消されている。

 ああ、とどめかって感じでサメ来たよ。前にせり出してる口がかなり危ないんだよな。

 ってか夜警、なんで見えるんだ? 魔法? なんてまたどうでもいいことを考えてる。その間にもサメ登って来てるし。チッ。一匹が先陣切って登ってる。

 最初一匹を切ってからは怒涛のサメ尽くし。さっきの技を使う余裕なし。小回り振りで次々と薙ぎ払う。めんどくさいさっきのワザを使いたいが失敗すると船に上がられる。それは避けたい。昨日のエビの団体さんの二の舞いになりかねない。

 ちょっとこれ魔物多くない? 群れてる仲間の数なんだろうけど落差激しいよ。




 ハアハア


 息きれたけど何とか魔物を船の上に上がらせずに全部を海に落とした。周りの剣士も魔法使いも成長してるのか。昨日と違うのはそのせいか。



 腹減ったし、眠い。さっきので勘弁してくれ魔物。



 俺の願いが珍しく叶い、魔物の襲撃なしで食堂へ。

 昨日のことがあるからか、ツバキもリンもジュジュも駆け寄ってきて俺を叩く。なぜ怪我の確認が叩くなんだ。三人娘! 乱暴過ぎるぞ。ニタは相変わらず平和な微笑み。なんだ俺らの空気が緩んでるのはニタのせいだったのか。まあ、それに関係なくこのつるぎがなかったら俺たちは勇者一行には見えないだろうけどな。



 はあーベットがこんなに安息をくれるなんて! 疲れた体を横たえる。最後のサメめ! あれがなきゃもう少し楽な戦闘だったのに。


 気づかぬ間に夢の中へ。

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