第3話 誰か彼女を助けてください

 結局あれから何年経っても、安田さんの消息はわからないままだった。姉は大学卒業後、保田ほださんとは別れて別の人と結婚した。

 保田ほださんがその後どうなったのかは知らない。

 私も会社勤めになり、3年前に海外出張でアメリカのオレゴン州に行った。初めての海外は、残念ながら仕事だった。ちょうど薔薇のお祭りをやっていたそうだが、仕事が押していてパレードは見に行けなかった。そして、海外の空気は新鮮だったが、ここが自分の居場所だとも自分は変わっていけるんだとも思えなかった。


 安田さんの夢は、毎年見る。最近は安田さんと会話することが少なくなったように思う。ただ、最後にいつも言われる。

「こちらにはこないのですか」

 あの日、安田さんを無理やりでも押しとどめておけば良かったんだろうか。何が起こったかわからない、飛行機は通常通り飛んでいる、ただ保田さんから来るなと言われただけの状況で? それとも安田さんについて行けばよかったのか?

 元々、保田ほださんからは女性だけで行動するのは……と言われていたではないか。私は無責任だったのだろうか。悩んでいても答えは出ない。申し訳ないが、しばらくすると忘れてしまう。そしてまた、この日が来ると思い出す。


誰か、彼女を助けてくれませんか。

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