第17話

「大変珍しい仏像があると聞いてやってきたのですが」

「そうですか、それは遠いところをご苦労様です、こちらです」

和尚は私にその仏像を見せてくれた。 見たところ千手観音のようだ。 ところが普通の千手観音は手に手に仏具や日輪などを持っているのだが、この像はバナナ、りんご、みかんなどの果物や、パン、ご飯、スイカ、玉ねぎなど、食べ物ばかり持っているのだ。

「なんですか、これは」私は和尚に思わず尋ねた。

「大欲は無欲に通ずと申しまして、これは食欲でも表しているんでしょうな、いずれにしても近年の作品だと思われます、あるいは戯れに作られたものかもしれませんな、ほら、あそこの手をご覧なさい」和尚の指差した手を見ると、カップケーキのような物を持っている。

「なんですか」

「ゼリーです」

「なぜ、ゼリーだとわかるんですか」

「彩色して、わざわざはがした跡がありましてな」そう言って、和尚は笑った。 私はゼリーを見つめ直した。 プルプルと震えたような気がした。

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