百合色の世界

星成和貴

天使のイタズラ

「おはよう!」

 後ろから声をかけられて、抱きつかれた。

「あ、お、おはよう」

 その声で彼女が誰か悟り、その過度なスキンシップに胸が高鳴った。

「あれ?元気ないね。どうかした?」

 その体勢のまま、顔を覗き込んでくる。すると、顔が近くに来て……。

「う、うん、大丈夫」

 じゃないよ!そんな近くに顔があったら、心臓がドキドキして爆発しちゃいそうだよ!ねぇ、わたしを殺す気なの?あ、でも、そうなると、彼女は殺人罪で捕まっちゃう?よし、死なないように何とかしよう。

 あぁ、でも、目の前のそのプルプルの唇、見てると吸い寄せられちゃう。このまま、わたしの唇をそこに重ねたらどう思うのかな?

 て、ダメ!そんなことしたら、変だよ。友達同士でそんなことはしないし!

 と思ったら、彼女の唇が近づいてきて、わたしの頬に触れた。

 え?何したの?キ、キス?

 あ、天使がいる。お迎えかな?

 あ、違った。天使のように可愛いいつもの彼女だった。

「顔真っ赤になってる。可愛い!」

 今までくっついていた彼女が離れていった。わたしの正面に回って後ろ向きに歩く。

「ところでさぁ……」

 彼女が話しているけど、頭の中はさっきのキス(?)で一杯でちゃんと会話ができない。


 でも、仕方ないよね?

 あんなことする彼女が悪いんだよね。

 だから、今くらいは上の空で会話しててもいいよね。


 友達以上になりたいけど、女の子同士じゃ無理だもんね。

 でも、女の子同士だからこうやって抱きついたりしてくれるんだよね。


 わたしの心はいつも、天使のような彼女の無邪気な言動に乱されている。

 これからもずっと。

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