第2話 深海の太陽

 スクールカーストというものを実感したのは高校生のときのことだが、同時に太陽を認識したのもそのときだ。

 私はいわゆる最底辺であって、顔は悪くないといわれたが、変わり者だからという理由だった。それは高校生らしく同級生に「なぜ彼女ができないか」という議論を持ちかけたときに言われたことだ。そのときにスクールカーストなるものを実感した。

 そのとき私には好きな子がいた。ところが、その子はスクールカーストでいうところの最上位にいるらしかった。

 いざスクールカーストの色眼鏡をかけさせられてしまった私には彼女は輝いて見えた。

 どうにもこの眼鏡を外すことはなかなかかなわないらしい。諦めという感情を自覚できるようになってしまって、悲しかったが、そこには彼らの言葉があったからかもしれない。

「お前は結局チョウチンアンコウなんだよ。で、彼女は高嶺の花」

 たしかにそうだな。チョウチンアンコウは深海で太陽を目の前に掲げて生きている。恐らく本当の太陽を認めることはしないだろう。

 そうだ、私はチョウチンアンコウだ。生きているうちに太陽を認めることはできないし、目の前には偽物の太陽がある。

 私の人生は所詮その程度なのだと、このとき初めて理解した。

 私は、生き抜くために偽物の太陽にすがることを覚えたのだ。

 私の目の前にある深海の太陽は、挫折の象徴だった。

 チョウチンアンコウは今日もまた、目の前の太陽にすがりついている。

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