14 カオリ

 歌い終わって外に出ると、まだ空は暗くて。



 2000.05.20/SAT/014/kaori/



 時間がきて外に出てカラオケ店の目の前にとまっているアストロに乗った。

 私の車が置いてある鶴舞に戻ってケイタにキーを渡す。ペーパードライバーだって言うケイタにミニを貸して、美嘉ちゃんがケイタの隣に乗った。

 ジュンは一号線を回って一九号線を熱田神宮沿いに走り、駐車場の入口の手前で左折のウィンカーを出した。

 神宮の駐車場にアストロを止めて冷たい空気の中に降りる。少しするとミニが駐車場に入ってきて、反対側に曲がって離れた場所に止まった。


「急ブレーキだし、ぶつけそうになるし! あせるって!」


 ケイタの運転は最悪だったみたいで美嘉ちゃんが興奮していた。



 車の後ろからジュンが毛布を二枚出して一枚をケイタに渡した。ケイタは毛布を持って美嘉ちゃんとミニの方に歩いていく。私はジュンと一緒にアストロの後ろのシートに戻った。


 ジュンが車の天井から大きな布を張ってフロントの景色を隠す。

 並んで一枚の毛布を被って、香水の甘い香りの中でしばらく話していた。


「ここいい?」


 ジュンが私の膝に頭を乗せて、眠そうな真っ赤な目で聞いた。


「いいよ。寝る?」


「寝る。おやすみ」


「おやすみ」


 ブルガリブラックの香りと、柔らかそうな髪と綺麗な横顔。

 シートにもたれたまま目を閉じた。



 眠れないまま随分時間がたって、一度目を開けたとき。

 ジュンは起きていて私の顔を見ていて目が合った。


 ずっと起きてたの……?


 すぐに目を閉じて二度と目が開けれないくらい、ひとりでドキドキしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る