13 カオリ

 ライブが終わって照明が明るくなったフロアから奥のロッカールームに向かう。美嘉ちゃんと同じコインロッカーにしまってあったアウターやバッグを取り出すと、ジュンとケイタが待っていて四人で外に出た。

 クラブの前の舗道に座ってこれからどうするか話していてカラオケに行くことになった。


「裏に車がとまっとる」


「ペケジェイは?」


 ジュンは車を持っていないと言っていたからバイクで来たと思っていた。


「好きだと思って。アストロで来たんだ」


 ジュンの笑顔を見ながら、アストロを「いい車だね」って言ったことを思い出した。





 高架下をくぐって裏の通りを歩く。アストロは一つ目の交差点の舗道に沿うように斜めに駐車されていた。

 ジュンが後ろのドアを開けると、車の中に使い込んだスケボーが置いてあった。


「スケボーやんの?」


「最近はやってねぇけど」


「なんかやってよ」


「できるかなー」


 ずっとやっとらんで、と笑いながら、縁石でスライドした。


「なんとか飛べるわ」


 前はフリップもできたんだけど、とデッキを回そうとして何回か失敗した。

 ケイタが「貸して!」ってオーリーしようとして転んだり、すごい勢いでプッシュしてまた転んだ。


 さっき。上に座っていて、ぼんやりしていた時のことを思い出す。ジュンはDCの白いスケシューを履いていた。フリップとかデッキを回すトリックは私にはできない。縁石に飛び乗って降りるのがやっとだ。

 ジュンのスケボーのデッキは裏が擦り切れて絵が全部消えてぼろぼろになっている。あんなにテールが削れていたら、私だったらオーリーもできないかも。相当うまかったんじゃないかな。


 どうしてスケボーまでナツと同じなんだろう。

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