FACTOR-2 異形(avan)

「うっ、うぅっ……!」

「おい」

「イヤッ!」

「おい」

「やめてッ!」

「んだよ……」


 手をさしのべても、すぐに弾かれる。なにを怖がられたのかと問われれば、答えることは出来る。だが、いつまでたってもここにいるという訳にも行かない。


「ったく……」

 どうせ手をさしのべても弾かれるだけなのだ。ならいっそ、とーー

「おい、聞け」


 強引にでも彼女の手首を掴んで顔を上げさせる。

 彼女は翔の思惑通り、ハッとして翔の顔を見上げる。恐怖に怯えた、その眼をじっと見据え、やはり翔は呆れて溜息を吐いた。


「こっから離れるぞ」

「えっ」

 翔は彼女の手を引いて立ち上がらせる。


「どっかに親玉がいる。そいつに遭う前に離れるぞ」

「親……玉……?」

「さっきの奴を作る奴だよ」


 説明しすぎるのもここでは面倒になった。翔はそのまま彼女の手を引いて、現場から離れようとする。

「ちょ……ッ、ちょっとっ」

「…………」

「ちょっと待ってよ!」

「後だ」

「待ってってばさ!」

 何故か、翔の手を解こうとして、且つ後ろへと引っ張ってくる彼女に少々苛つきを感じ始めてきた。


「んだよッ!」

 彼女の手を離してやると「うあっ」と地面にこけそうになったようだ。よほど強く握っていたのだろうか、手首を痛そうに振っている。その後、手首を押さえた後、


「ねえ、君ってさ――」

「ん?」

 翔でもなにを聞かれるのかすぐわかる質問をしてきた。


「何なの?」

 翔はこの問いに対してどう答えればいいかわからず、しかしちょっと考えて、

「魔法使い」

「え?」

「みたいな……」


 と、自分でもこれは違うと思いながらそんな答えを出す。

「魔法使い?」

 やはり、伝わらなかったようだ。

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