閉じこもった、秋。

 秋になって再び学校が始まりました。

 友達と笑い合う日々。そして、会長を見つめる日々の再開です。

 夏に抱いた妄想の所為か、会長が私のことを時々見てくれているような気がします。実際はどうなのか分からないのに、とても幸せな気分になる。その度に、やっぱり私って会長のことが大好きなんだ、って思うのです。分かりきっているのに。馬鹿みたいに。



 しかし、そんな日々は長く続きませんでした。



 文化祭も終わって、空気も段々と冷たくなり始めた頃のことです。

 その日も、教室でいつも通りにクラスメイトと楽しく会話をしていました。

 ただ、そんな会話の中でどうしても、うん、って頷けないことがあって。柔らかい言葉で自分の考えを言ったら、その途端に冷ややかな視線を向けられて。

 それを機に、私を避けよう。私を追い出そうという雰囲気がクラスを包み込みました。

 心ない言葉を直接口で、メールで、SNSで言い放って。

 幼い子供が考えつくような嫌がらせをしてきたりして。

 そんなことをされて、嫌にならないはずがありません。それでも頑張って高校に通い続けたのは、憧れの会長がいる場所だからです。会長のことを遠くから見ていると嫌な気持ちも和らいでいきました。



 でも、会長に恋心を抱くことを否定されるようになりました。



 女の子が女の子に恋をするのはおかしい。

 会長を遠くから見つめて、顔を赤くしている私が気持ち悪い。

 とてもショックでした。クラスメイトにそんなことを言われると、会長も遠くから見ている私のことに気付いていて、本当は私のことを気持ち悪いと思っているんじゃないかと信じ込んでしまうようになって。

 そう思うと、胸が苦しくなって。ここにいるのがとても辛くなって。



 逃げるしかなかった。私にできることはそれしかなかったのです。

 弱い人間だと笑われていいです。あんなところにいるくらいなら、自分の家に閉じこもっていた方がいい。



 高校ってこんなところだったでしょうか。


 勉強をして。

 友達と一緒に楽しい時間を過ごして。

 部活で汗を流して。

 運命の人と恋をして。


 そんなこと、私は何一つまともにできなかった気がします。恋心を抱いたことはできましたけれど。“高校生”に憧れていた時の私を嘲笑いたいくらいです。

 憧れが強かったからこそ、歯車が一つ狂うとあっという間に崩れてしまうのです。憧れなんて抱くんじゃなかった。憧れなんて自分も脆くするだけなのですから。現実を知ったときの苦みがより一層強く感じてしまうのですから。



 ひらり、ひらり、と。

 枯れきった葉が僅かに揺れ、力なく落ちてゆく。窓から見える景色がとても切なく、悲しく思えて。それ以降、外を見ることがめっきり減ってしまったのでした。

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