飛行機は、少年の夢だからだ。

 だから飛行機に憧れる人々はみな、子供のように無邪気なのでしょう。現在と過去の回想という二つの世界を交互に行き来しながら、主人公の飛行機への憧れが美しい文体で語られていきます。

 「飛行機に憧れ、空を飛ぶことを夢に見ない少年はいない。」作者の描く作品世界は、ヒコーキや少年を多く描いた、イナガキタルホの再来にも思えました。繊細に構成された世界は、ずっと肌を浸していたい、清冷でどこか懐かしい世界でした。

 作品に出てくる、子供のような目をした人々。それは主人公も同じで、少年の憧れを持ち続けるものは、大人になっても少年であり続ける。空に憧れた少年は、大人になって夢を叶えた。でも、彼はまだ少年であり続けています。彼の出会った人々もそうです。飛行機は、少年の夢だからだ。だから、彼らはずっと少年なんだ。

 忘れたくなかった少年の心を、思い出させてくれる素晴らしい作品です。