知らない筈なのに、懐かしい。

 私の小学校時代には、「すずめの神社」はありませんでした。教室に入ってきたこともありません。知らないどこかの、誰かのお話。でも、どうしてか堪らなく懐かしい。作品は、セピア色の文体に、清冷なかなしみが流れています。子供の頃の、今はもう忘れてしまった淡い感覚を、少しだけ思い出せたような気がしました。