大きな影

 少年は両腕で自分の体を抱きかかえるようにし、歯をガチガチと鳴らしてその場にしゃがみ込んでいた。

 冷や汗が止まらず、体が凍りつくかのようだ。


 こんな事はいつ以来だろうか。

 いや、これほどの事は今までなかった。


「・・・・・・な、何だよあいつらは?」

 あれは正直自身の想像以上。

 わかっていたつもりだが、わかっていなかった。

 そう少年は思った。


 少年の目の前には山のように大きな二つの影がある。

 いや、そう見えるだけかもしれない。

 

「・・・・・・でも逃げないよ。やるだけやってやるさ」

 

 少年は立ち上がってそう呟くと、黒い槍を振り回しながらその影に向かっていった。



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