Childrens'.その壁砕く喜びの鬼

サンジ関数

第1話猫耳銀髪美少女と機械歩兵B-172

あぁ、どうしてこうなった?僕はただこんな世界にお別れをしたかっただけなのに…



3年前に起こったウィルス災害から僕たちの平穏な生活は終わりを告げた。僕らを産み、名付け、育ててきた親たちですら今や敵だ。


「…最後に母さんの唐揚げが食べたかったな。それじゃあ、さようなら。」

沈んだ空気をガラスでも割るようにこめかみに当てられた拳銃の発砲音が崩した。

…が、しかし。

「つぅぅ…いたた。やっぱり無理かあぁ。こんな何の役にもたたない能力需要ないってのに。…自決もろくに出来ないなんて…僕は何て駄目な奴なんだぁ。」

思わず涙ぐんでしまう。少し古ぼけた高層ビルの屋上でへたりこんだまま感傷にひた、浸る、ひたる?

「浸らせてくれない、何だあれ?…煙りがあがって、よく見えなぬわぁぁぁ!!?」


大きな音とともに後ろの貯水タンクから水が吹き出した。

「冷た!何だ、何が起きたの!?」

パニック気味の僕の前に一人の女の子が現れた。

「いったたたぁ…あいつ殺す、絶対スクラップ刑に処してやる。ん?…君、大丈夫?おーい、どうしたの?大丈夫!」

腰までの銀髪を可愛いピンで止めた整った顔。

水色の瞳の片方を真っ黒い眼帯が覆っている、

一目惚れしても可笑しくない美少女だ、色白な肌とは対称的な黒い軍服をまとっていなければ。

「っはい、大丈夫です!…すみません。あの、貴女こそ大丈夫ですか?今吹っ飛んできましたけど。」

「大丈夫大丈夫!!頑丈さだけが取り柄だからね!」

笑顔を見せる美少女。…本当に可愛い人だな。

それに膝立で前屈みになってるから谷間が見えて。…水に濡れて肌にくっついた軍服のせいでより艶かしく、とにかくエロい!!

「本当に大丈夫?ボーッとしてるし顔も赤いよ。」

「だ、大丈夫です!…と言うか、貴女は何で飛んできたんですか?もしかして向こうであがってる煙りと関係あるんですか?」

「んー…君は能力持ちだよね?なら実際に見た方が早いかも。百聞は一見にしかずってね!ほら、ちょうど向こうからやって来たし。」


「やって来たって何がですか?何を言っているんですか?」

 美少女は顎に指を当てるとイタズラっぽい笑顔で言った。

「【機械歩兵B-172】だよ!」

【機械歩兵B-172】?大人が壁の中から送り込んでる対Children用の…あの殺戮マシン!?

「そんなおっかないものがこっちに向かってきてるんですか!?は、早く逃げ…ない…と。」

僕と美少女の上を大きな影が覆った。

第一に思ったことはとにかく…

「で、デカイ!これが【機械歩兵B-172】ですか!?」

「その通り!君は死なないように隠れててよっ!!」

美少女がB-172に飛びかかる。そんな少女の体が光につつまれる!!

「昔見たアニメの魔法少女みたいだ。猫耳…尻尾も。それに速いや…あれがあの人の特異能力。」

殺戮マシンをどんどん追い込んでいく美少女。

水色の瞳が爛々と輝いている。

「みゃはははは!!さっきはよくも吹き飛ばしてくれたな、お前はスクラップの刑に処すにゃっ!」

口調まで猫みたいになってる、不謹慎かもしれないけど無茶苦茶可愛い!

「あっ!!あぶないです!!」

そんな少女をB-172の拳がとらえ、壁に叩きつけられる。

「がっ!…くっ、あにゃ。絶対にスクラップにしてやるんにゃからっ!!」

悶える少女にB-172が拳から突き出た銃口を向ける。

…嫌だ、また目の前で人が殺されるのは。血を見るのは、涙を見るのは絶対に嫌なんだ!!

「おいっ!こっちだ鉄屑や…野郎ぅ。」

ヤバい震えが止まらない、怖い怖い。銃口がこっちを向いた瞬間心臓が破れそうになる。

「ちょっ、なにやってるの君は!?隠れてて!私は大丈夫だから!」

目を見開きギョットする少女。

強がっているけど重傷なのだろう変身も解けてしまっている。

「貴女、頑丈さだけが取り柄だって言ってましたよね。それだったら僕だって負けていません。いや、硬さに関しては誰にも負けません!!」

叫び終わった瞬間無数の弾丸が打ち込まれた。

「…う、嘘。直撃…な、何で出てきたの?」

会ったばかりの僕の身を心配してくれていることに思わず頬が緩む。

だから僕も精一杯に強がってみる。


「…かすり傷。」


-内心-

ああああっぁふぁふぁふぁくあっつ!!!痛い痛い痛いよー!!何これこんなに痛いなんて聞いてないよおおぉ!


で、でも今更そんな事言えないし...

うぅ、やるしかないのか。

そ、それになんだか弾丸を受けてほぼ無傷な僕に羨望の眼差しがむけられている気が...

「…すごい。一体どんな特異能力を持っているの?」

『目標ヲヘンコウ、目標ヲ排除シマス。』

ロボットぽい無機質な声に恐怖感が増幅する。

だけど、

「ぼ、ぼぼぼ僕が相手だ!!!かかってこい!」

怖い、足の震えがとまらない....でも僕がやらないとあの人が...

『目標ヲ排除排除排除排除シマスシマス!!』


銃口が再び僕に向く、...またあの痛いのが来る。

その前に奴を...いや、駄目だ真正面から行っても避けられるだけだ、...ならこれしか。


『目標ヲ即効に排除シ...マス!!!』


無機質な声に発砲音が重なった。



今だッ!!!!


私は今有り得ない出来事に遭遇しているいや、この世界に有り得ないことなど無い事は3年前に嫌という程に証明されてしまっている。

私達Children軍でも手を焼く機械歩兵に弾丸を受けながらも跳躍する得体の知れない男の子、年も私と変わらない位だろうか?

思わず声が出た...

「いけっ!!」

彼の拳が空気を廻した。


「あぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

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