「隣の冷凍室から、マサヒロが俺を見ていた」

兄:

「今日の晩御飯は麻婆豆腐だぞ、感謝して頂け」


私:

「ありがたき幸せですわ、お兄様。――あら? このお豆腐…」


兄:

「気づいたか、がめつい奴め。普段と違ってお高いやつだ」


私:

「その表現に物申したい気持ちはありますが…。美味しいです」


兄:

「うむ。たまには贅沢をしてみようと思ってな。見切り品の豆腐を手にした時、隣の冷凍室の中からマサヒロが見ていることに気づいたのだ」


私:

「ま、マサヒロ…?」


兄:

「男前豆腐で検索してみるといいだろう。ともあれ、奴は言っていた。――そこの貴様、そんな豆腐で大丈夫か?」


私:

「なるほど。お兄様はこう答えたわけですね。――1番良いのを頼む」


兄:

「うんにゃ。見切り品じゃない、20円高いやつにした」


私:

「なんてこと…。違いが分かると言っても、所詮は庶民でありましたのね…」


兄:

「我々には、この豆腐で十分だということさ」


私:

「ですね。お兄様、おかわり」


兄:

「たんとおあがり」



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