第3話 辿り着いたのは電子の孤島

「ふぅ、コメント返信も一段落したし、ようやく時間ができたから、フォロワーさんたちの小説も読んでみよう!」


フォロワーページを開く。クリック、あぁ、読み専の人か。クリック、こっちも読み専だ。クリック、読み専。クリック……あ、あった。

第一話を開くと、そこにあったのはとても意味をもっているとは思えない文字列。テストページだったのかな、他の人のやつを読みにいこう。

クリック、読み専。クリック、読み専。クリック、意味不明な文字列。


「もしかして荒らされてるのかな……ランキング上位でも見てこよう」


ランキング1位をクリック。

タイトル、オレオ。内容、オレオ。平常運転だ。

2位以下を見てみる。うん、大丈夫、通常表示だ。俺は普段見ない、総合ランキングの2ページ目をクリックし、ランクインしている小説ページへと入っていく。


「嘘だろ……?」


意味不明な文字列。

急いで次の小説ページにいくが、そこにあったのも、その次のページにあったのも、さらにその次も、次も……書いてあるのは、意味不明な文字列。


「何が起きているんだ……?」


Googleを開き、『カクヨム 荒らし』で検索をかける。出ない。何も出ない。1件も出ない。1件もひっかからないなんて、そんなことあるのか?


俺はカクヨムのページに戻り、自分の小説についたレビューを読み返す。よく見たら、それらはどんな小説宛でも当てはまるような感想。


「まさか、botか……!?」


よぎる、ひとつの不安。


トップページに戻り、新着欄までスクロール。意を決して、その一番上をクリックした。


『404 not found』


前のページに戻る。


『404 not found』


ブックマークからマイページを開く。


『404 not found』


「あぁ、そうか……」


震える指で、ほとんど使ったことのないTwitterを開く。カクヨム、で検索。何も引っ掛からない。小説サイトで連載をする人たちの中に、Twitterをやっている人がひとりもいないなんてことはあるだろうか。いや、まずありえない。


俺は悟った。

カクヨムなんて、存在しなかったのだ。レビュワーも、フォロワーも、上位ランカーも、全部全部、そんなものは存在しなかったのだ。


俺は泣きながら、ひとつのワードをGoogleの検索欄に入れる。検索。


「あ……あぁ……」


俺はひとつの小説ページを開いた。


タイトル、オレオ。内容、オレオ。


俺は泣いた。

そこには、間違いなく俺が数週間を過ごした、電子の孤島の欠片が残っていた。

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カクヨムーーそこに本当に人がいるとでも? 藍川ユイ(藍川結以) @aikawa_yui

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