その壱 瓢箪から――。 

■マスターシーン*


 桜花皇領国。

 見事な桜並木が広がるその国は、別名”春の国”とも呼ばれていた。

 そんな穏やかな国のある山で、一人の少女が数名の男に囲まれて山道を急ぐ。

 まるで何者かに追われているかのようだ。


「くっ、ここは我らが! 姫はお逃げくだされ!」



 姫と呼ばれたのは黒髪の美しい少女。

 先の桜花皇の長女である。



 男達が何者かの凶刃に倒れる中、姫と呼ばれた少女は駆けてゆく。しかし、その華奢な身ではいくらも走る事は出来ず。

 山中の朽ち果てたお堂の中へと隠れた。

 もはやこれまでだろうか……。しかし、少女はまだ諦めることは出来ない。

「妹が……まっているのです」

 焼け付くような喉を潤そうと、少女はから*貰った瓢箪の水入れを開けた。



 その時、光りが溢れた ―――― 。



====

*マスターシーン

 PLではなくGMが主体となって、幕間の話を物語る場面。

 これが過ぎると吟遊GMとか言われちゃう。でも大事。


*途中で助けた女から

 今は目的のため先を急ぐ少女だったが、その途中で荷物を道に撒けてしまった眼鏡女が居た。

 少女は急いでいながらも、親切心で拾うのを手伝うことに。

 散らばっていたのは、書籍。最近、マスラヲが閲覧を禁じたものばかりだった。

 眼鏡女は秋の国から桜花へ、それら禁書類を仕入れに来た商人であった。

「いやぁ、すまないねぇ。助かるよ」

 お礼とばかりに金品を差し出すが少女はそれを断る。本来なら禁じられる必要の無い書を国外へと保管してもらえる事は、文化を重んじていた桜花の姫としてはありがたいことであったからだ。

「それじゃぁ、こちらの気がすまない」

 と眼鏡女は笑う。

 少女はそれならと瓢箪を指差した。

 その瓢箪は決して高価なものではなかった。しかし、丁寧な作りではあった。

「お、お客さんお目が高い。きっとあなたの役にたつでしょう」

 女はそう言うとどこかへと去っていった。

 瓢箪は振るとからからと音を立て水は入っていないようだった。

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