忘却ゲーム-2

『死神同値』


屋敷の園庭。


「はあっ……はあっ……」


群城すずは、門番の1人、風霧濃霧と対峙していた。

風霧の横には、東門門番・音無騒音と、南門門番・光華星晶が気絶して倒れている。


「さすがはー、群城すずさんですねー。門番を2人も倒すとはー」


風霧は鎖鎌を振り回しながら、群城に話しかける。

群城は息を乱すだけで、声を出すことができない。


「でも、そろそろ限界なんじゃないんですかー?その腕の傷も相当深いようですしねー?」


群城の左腕には、伊藤確率から受けた切り傷を隠すための包帯が巻かれていた。

無言の群城に対し、風霧は鎖鎌を回す速度を上げる。

周囲の風が、彼女を中心に渦のように回り始める。


「じゃあ、最期に聞きたいんですけどー、そもそもなんであなたは闘っているんですかー?」


風霧は群城の攻撃範囲に入らないように気をつけながら、そう問いかける。


「だって、あなたの好きな本条圭介は、北条環が好きなわけですよねー?いわゆる自分の恋敵をあなたは助けに来ているわけでー、それって何かメリットあるんですか?」


風の渦は極大値に収束し、庭園の草木が大きく揺れ始める。

いくつかの小枝がパキッと音を立てて、地面に落ちる。


群城は両足で大地を踏みしめて、笑顔で答えた。


「好きなやつの好きなやつは好き、それがアタシの好意すいい律だ。」


風霧は少しの間の後、微かに笑い震える。


「ふふっ。なるほどー。じゃあ、好きな人のためにも、ここで死んでくださいねー。ベクトル場→rot回転!!!」


高速に回転する鎌が群城の首に目掛けて放たれた。


――ブチッ


刹那、何かが切断された音が庭園に響き渡る。

無惨にも地に横たわるのは、引きちぎられた鎖鎌だった。


「日比高山流、三の型、長蛇ストリング


群城は人差し指と中指を剣のように延ばし、周囲の草木を切断する。

風霧はその姿に動揺して声を荒げる。


「ば、馬鹿な!群城すずは近距離打撃型の数学徒のはず!」

「三の型を出すのは久しぶりだからな。錆びてなくてよかったぜ。」

「ふ、ふざけるのもいい加減にしなさい!」

「お前の鎖鎌はもう壊れた。もう投降しろ。中距離攻撃のできないお前にもう勝ち目はない。」

「まさか……最初から鎖鎌の破壊を狙ってて……!!」


綺麗に両断された鎖を見て、風霧は呆然とする。

完全に形勢逆転した状況。

彼女はもう頭を抱えるしかなかった。


「しまった……こんなはずでは……どう竹内様に報告すれば……ああ……どうしよう…どうしよう…どうしよう」


戦意を失いぶつぶつと独りごつ風霧を余所目に、群城は屋敷の中に進もうとする。


「さて、圭介と環奈ちゃんはどうなっているかな。」


群城が近くを通っても、まだ彼女の独り言は続く。


「どうしよう…どうしよう…どうしよう…どうしよう…どうしよう…どうしよう…どうしよう……もう…………こうしよう」


風霧はポケットから、「A」と刻まれた錠剤を取り出すと、口の中でゆっくりと咀嚼した。

次の瞬間、群城の背中に得体の知れない数力スーラが纏わりつく。


「群城サン!危ナイです!」


スパッと切れた群城の毛髪が、宙を浮遊する。

杉浦の叫びに、間一髪、彼女は斬撃を避けることに成功した。

目の前には、さっき倒したはずの風霧が、大きな鎌を持って立っていた。


「なんだ……こいつの数力スーラは……。さっきより上昇している……?」

「群城サン、下がっててくだサイ。ここはワタシが対応しマス。」

「杉裏……お前、いたのか!?」

「ずっといましタヨ!?」


群城のボケにも冷静に対応する杉浦。


「とにかく……今の風霧さんは高層レベルの数力スーラを有してイマス。」


豹変した敵の姿に対し、そう説明を加える。

彼が眼鏡を外すと、青い瞳が日の下に露わになった。


「ゔぉおおおおおおお!!!!!」


獣のように叫びながら、突進してくる風霧。

杉浦は侮蔑の眼差しを向けて、小さくつぶやいた。


数圧解放プレス・リリース至所微分不能連続関数ブラマンジェ


杉浦の体から、無数の黒いナイフが放たれる。

その斬撃は、風霧の体の至る所の滑らかな点を、微分不可能にしていく。

肉体的にも数学的にも、行動不能になった彼女は、その場で倒れて動かなくなった。


群城はその光景を唖然と眺めるだけだった。


「杉裏……お前、こんなに強かったのか……!?」

数圧解放プレス・リリースくらい、高層なら誰でも使えマスよ。」

「プレス・リリース……?」

「時間制限付きで、数力を極限まで高める奥義のことデス。そんなことより、この風霧濃霧、『アルキメデス』を持っているトハ。」

「アルキメデス……だと?」


初めて聞く言葉に、疑問符を浮かべる群城。

杉浦は風霧のポケットから錠剤の殻を取り出して、言った。


「高層第一位『色中英佑』の開発した、悪魔の薬デスヨ。」


***


和室。

俺は竹内層から、ゲームの説明を受けていた。


「本条はんはババ抜きって、もちろんご存知やろ?」


薄ら笑いを浮かべながら、竹内は俺に問いかける。

俺は何か気に食わない感情を抱きながら、奴に返答する。


「ああ、ババ抜きって、トランプのゲームだろ?ペアが揃ったら捨てていって、最期にジョーカー持っていたら負けっていう。」

「その通りや。この『死神同値』の基本ルールも同じ感じや。互いに相手からカードを1枚引いていき、ペアができたら場に捨てる。」

「……でも、このトランプには絵柄も数字も書いてないじゃないか。」

「死神同値では、数字や絵柄の代わりに『数学の条件』を使うんや。」


条件……だと?

どういうことだ……?


「同値な条件ってあるやろ?例えば、自然数nが偶数であることと、nの1桁目が偶数、これは同値や。」


竹内は2枚のカードの空欄に、それぞれペンで文章を書き始める。


カード1:"自然数n: nは偶数"

カード2:"自然数n: nの1桁目は偶数"


「この2枚のカードは同値であるから、ペアとして捨てられるんや。一方、」


カード3:"自然数n: nは3の倍数"


「というカードがもしあったなら、」


カード1:"自然数n: nは偶数"

カード3:"自然数n: nは3の倍数"


「は同値ではないから、ペアにはならへん。」

「……なるほど、条件のペアっていうのはそういうことか。」

「理解が早くて助かるわ。ここに合計20枚のカードがある。本条はんと、うちでそれぞれ10枚ずつ、つまりそれぞれ『同値なペア』を5組作るんや。それらのカードを使ってババ抜きをしてくんや。」


なるほど、要は普通のババ抜きの数学版ってところか。

いかにも数学徒が考えそうな、いやらしいゲームだ。


……ん、待てよ?


「それだと、ジョーカーがないじゃないか。」

「さすがは本条はん、いいところに気づきますわな。ジョーカーを作るために、20枚の中からランダムに1枚抜いて、19枚にするんや。これなら、1組揃わなくなって、ジョーカーが1枚できる。」

「いわゆる"ジジ抜き"のルールみたいなものか。」

「まあ、そう考えてもらってよろし。」


竹内は、20枚のトランプの半分とペンを俺に渡した。


「それじゃあ、早速始めるんやけど、その前に審判を呼んでおきましょう。『注目』、出てきいや。」


竹内が2回手を叩くと、座敷の奥から、松葉杖をついた1人の男が入ってくる。

男の片腕と片足には分厚いギブスが巻かれている。


「……どうも、平等院注目です。以後、よろしく。」


平等院注目と名乗るその男からは、どこかふてぶてしさを感じる。

平等院?ということは、こいつも数戟管理委員会のメンバーなのか…?

命題に、補題に、注目……こいつらの名前は論文の出てくる名称みたいな縛りがあるのか?

つーか、そんなことより怪我しすぎだろ。


「注目には、これから死神同値の審判をして欲しいんや。」

「……了解です。この私めが、傲慢に、怠惰に、強欲に仕切らせてもらいます。」


やる気があるのかないのか、よく分からない態度で注目は発言する。

平等院命題とも、平等院補題ともまた違ったタイプのやつらしい。

その姿に違和感を持ちながらも、俺はあることを思い出す。


「あ、待ってくれ!俺は東数の会員権を剥奪されてるんだぞ!数戟は出来ないはずだ。」

「公式には、な?これはただの、うちらだけの遊び。本条はんもできるんや。」

「なんだと?じゃあ、何で数戟管理委員がここにいるんだ?」

「注目は、うちの専属の管理委員やからね。知っての通り、高層には1人1人に専属の管理委員が付くんや。」


そんなの初耳だったぞ。

でも言われてみれば、平等院命題も導来圏の専属だったのかもしれない。


「……だるんいんで、そろそろ初めていいでしょうか。」


注目は寝癖のついた頭をボリボリと掻きながら言う。

全然やる気ないな!こいつ!


「勝負の前に、ルールと賭けるものの確認ですが、こちらでよろしいですか?」


平等院注目が合図を出すと、奥の間から黒子がホワイトボードを持ってくる。

そこには、細かいルールが書かれていた。


****************************

ゲーム「死神同値」

ルール:

・プレイヤーはそれぞれ10枚のカードに条件を書く。その時、同値なペアが5組作れるようにする。

・20枚のカードから無作為にカードを1枚選び、除外する。この時、除外したカードはプレイヤーには分からないようにする。

・手札に同値な条件があったら、場に捨てられる。もし同値ではない2つの条件を捨てた場合、敗北する。

・先攻・後攻はコインによって決める。

・先攻はランダムな9枚、後攻はランダムな10枚の手札からスタートする。

・先攻から交互に相手のカードを1枚選び、自分の手札に加える。


勝利条件:自分の手札が0枚になったら勝利。

報酬:

竹内層:本条圭介の記憶

本条圭介:北条環および本条環奈の身柄。

****************************


いつの間にこんなの用意してるなんて、手際よすぎだろ。

実は仕事できるタイプか?


「……本条様、どうでしょうか?」

「ちょっと待ってくれ、今確認してる。」

「……竹内様はどうでしょうか?」

「うちはこれで問題ありまへん。」


うーん……さっきも言ったように、ルールの根本は普通のババ抜きだ。

カードを公開する以上、不正をする余地もない。

変なルールも見当たらない。


「俺も大丈夫だ。」

「……それでは、これより非公式数戟『死神同値』を開始いたします。それぞれ10枚のカードに条件を書き込んで、同値なペアを10個作ってください。制限時間は20分です。」


覗き見防止の衝立の裏で、俺は思考を始める。

相手は高層の第4位だ。

舐めてかかって勝てる相手じゃない。

ここは最初から全力でいく。


数楽者イマジン・ラヴァー戦闘体勢アクティバス


俺は静かに目を閉じた。ドクドクと、心臓の鼓動が頭の中で反響する。

全身の血が激しく流れ、脳髄を満たしていく。

目の裏の映像が高速に移り変わっていくと、どこからか声が聞こえ始めた。


「お兄ちゃん!また会えたね?やったー!」


目を開けると、そこにはふわふわと宙を浮いている妹の姿。

いや、妹の姿をした"何か"だ。


「また世話になる。助けてくれ。」

「嬉しいなあー!お兄ちゃんも嬉しい?お兄ちゃんだーいすき!」

「お兄ちゃんはやめろ。俺はお前の兄じゃない。」

「そんなこと言わないでよー!それに、お前じゃなくて、私は『反転環奈』。略して、ハンナちゃんって、呼んでいいんだよ?」


きゅぴーん✨みたいな顔をして、反転環奈は俺の方を向いてくる。

簡単に言うと、ハンナは俺の無意識を具現化した存在だ。

俺にしか見えておらず、会話も他には聞こえない。


「反転環奈、お前なら、この状況どう思う?」

「ハンナって呼んでよー!もう!」


反転環奈は、ぷんぷんと頬を膨らませながら、クラゲのように空中をぐるぐると泳ぐ。

このまま何もしなかったら時間の無駄だ。

仕方ないか。


「……ハンナ、どう思う?」

「やったあ!」


大袈裟に喜ぶハンナ。俺は無視して質問に答えるように促す。

ハンナは熟慮の後に返答した。


「……うーん、竹うっちーだっけ?何か企んでいると思うよね。そもそも数戟を持ちかけてきた時点でめっちゃ怪しいし、何かしらの勝算はあると思うよ?私があいつの心の中に入って読んでこようか?」

「いや、いい。今の情報の量では、相手の心を読み切れない。心を読むと言っても、俺の無意識の主観から想像するだけだしな。」

「りょーかい!」

「今は、自分の手札をどうするか考えよう。」


俺は自分の手持ちのカードを見つめる。

この死神同値、20枚のカードのうち、半分のカードは自分が作るから、その同値判定は当然できる。

問題なのは、相手が作ったカードだ。


「つまり、相手が同値か分からないカードを作ることが大事ってことだよねー?お兄ちゃん?」

「ああ、そうだな。」

「じゃあ、お兄ちゃんの得意なグレブナー基底に関する条件をたくさん作ればいいんじゃない?竹うっちーの専門は圏論なんだし、グレブナー基底は分からないっしょ。」

「確かにな。」


ハンナの言うことは一理ある。

……でも得体の知らない不安を心の奥で感じるのは、なぜなんだ。


「グレブナー基底関連で同値な条件はないの?」

「うーん、そうだなあ……。あ、例えば、グレブナー基底であることの同値条件は有名だな。」


Gが空ではない多項式の有限集合の時、次の条件は同値。

条件1: "G が > に関して I のグレブナー基底"

条件2: "G の各ペア f_i, f_j に対し、S(f_i,f_j)を f_1,...,f_k で、>に関して割った時の余りは 0"


「おー、なんか難しいね。」

「簡単に説明すると、与えられた多項式の集合がグレブナー基底か判定できるすごい方法なんだ。ブッフベルガーの判定法とも呼ばれる。」

「あ、反転じゃない環奈に説明してたやつだね。」

「そう。反転じゃない環奈って、普通の環奈な気がするが。」

「じゃあ、この条件をカードに書けば、1つペアが作れるってわけだね。」


時間もないので、俺はカードに条件を書き込む。


「他には、何があるの?お兄ちゃん?」

「そうだなあ……。単項式順序の必要条件とかもあるな。」


>を単項式の間の順序とする時、次の条件は同値。

条件3: ">は単項式順序。つまり、次の条件をすべて満たす。

(i). >は全順序である.

(ii). 任意の単項式 x^a, x^b, x^c に対し、x^a>x^b ならば、x^a x^c > x^b x^c.

(iii). >は整列順序である."

条件4: ">は次の条件をすべて満たす。

(i). >は全順序である.

(ii). 任意の単項式 x^a, x^b, x^c に対し、x^a>x^b ならば、x^a x^c > x^b x^c.

(iii). >に関する最小値は1"


「これまた難しそうな……。」

「単項式順序は知っているか?」

「えーと、x^2>yとか、単項式の間の順序だっけ?」

「そう。単項式順序の例として、辞書式順序などがある。単項式順序は上の条件(iii)にも挙げている次の条件を満たすものだ。」


(条件3)

(i). >は全順序である.

(ii). 任意の単項式 x^a, x^b, x^c に対し、x^a>x^b ならば、x^a x^c > x^b x^c.

(iii). >は整列順序である.


「確かいい感じに割り算ができる順序って、お兄ちゃんは言ってたよね?反転じゃない環奈に。」

「そうそう。それで、実はこの(iii)の『整列順序』というのは、次の条件に置き換えることができるんだ。」


(iii). >に関する最小値は1


「最小値が1……?」

「ああ、つまり、1以外のどんな単項式x^aをとってきても、1の方が小さい(x^a>1)ってことだ。」

「なるほどー?なんか整列順序よりは分かりやすい気がする。」

「その(iii)だけを置き換えたのが、条件4ってわけだ。」


(条件4)

(i). >は全順序である.

(ii). 任意の単項式 x^a, x^b, x^c に対し、x^a>x^b ならば、x^a x^c > x^b x^c.

(iii). >に関する最小値は1


「もへー。なんだかよく分からないけど、単項式順序にも色々表し方があるんだね?」

「そうだな。同値な条件を見つけるメリットというのは、『状況に応じて使いやすい形』で利用できる点がある。数学では条件を同値変形していって、証明するのはよくある方法だな。上の例だと、整列順序を示すより、最小値が1であることを示す方が楽な場合が多いから、そっちを使った方がいいかもねってことだ。」

「もへもへー。じゃあ、これもカードに書けるね!」


そうだなと、俺は上の2つの条件をカードに記した。

これで2ペアできた。

残りは3ペアだ。


「んー……」


ハンナが眉間に皺を寄せて、難しい顔をしている。


「どうした?」

「お兄ちゃん、これ思ったんだけどさぁ?このままじゃ、バレバレじゃない?」


ハンナは4枚のカードを指差して言う。


「バレバレ?」

「うん、だって、4つの条件」


条件1: "G が > に関して I のグレブナー基底"

条件2: "G の各ペア f_i, f_j に対し、S(f_i,f_j)を f_1,...,f_k で、>に関して割った時の余りは 0"


条件3: ">は単項式順序。つまり、次の条件をすべて満たす。

(i). >は全順序である.

(ii). 任意の単項式 x^a, x^b, x^c に対し、x^a>x^b ならば、x^a x^c > x^b x^c.

(iii). >は整列順序である."

条件4: ">は次の条件をすべて満たす。

(i). >は全順序である.

(ii). 任意の単項式 x^a, x^b, x^c に対し、x^a>x^b ならば、x^a x^c > x^b x^c.

(iii). >に関する最小値は1"


「が、それぞれペアなんでしょ?でも、条件1と条件3は、Gと>でそもそも対象が違うんだから、同値じゃないのはバレバレじゃない?」


……確かに。言われてみれば、それはそうだ。

バラバラにペアを作っても、相手にすぐ分かってしまっては意味はない。

作るならば、対象は同じで、同値かどうか悩むペアを複数作った方が良い。


「……本条様、残り時間5分となりましたので、急いだ方がよろしいかと。」


平等院注目に話しかけられ、我に返る。

いつの間にか結構時間が経ってしまったようだ。

このままではまずい、とにかくペアを作らなければ……。


俺は急いでペンを走らせる。

残酷にも時間は矢の如く去っていく。


「……それではタイプアップです。お互い10枚のカードを渡してください。」


俺と竹内は注目に自分のカードを預ける。


「……十分シャッフルされたので、ここから1枚除外します。」


そう言って注目はカードの山の1番上を、裏返しのまま場に伏せた。

そのカードのペアの相手が、この死神同値の「ジョーカー」となるわけだ。


「……では、次に先攻と後攻を決めるコイントスです。表だったら竹内様、裏だったら本条様が先攻です。」


宙に高く上がるコイン。

落下するコインを注目は勢いよく松葉杖で抑えた。


「……コインは裏。すなわち、本条様の先攻で開始します。」


……よし、先攻が有利のはず。まずは順調のようだ。

9枚の手札が手元に配られる。


この時、俺はまだ知らなかった。

既に竹内層のに嵌まっていたことに。

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最近、妹がグレブナー基底に興味を持ち始めたのだが。 グレブナー基底大好きbot @groebner_basis

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