むかしばなし ~変態紳士編~

海鴨

都会で売られている【ようじょの蜜】

 むかしむかしあるところに、

 おじいさんと、おばあさんと、バツサン熟女と、金髪碧眼幼女がいました。


 おじいさんは川へ洗濯に、

 おばあさんは山へ獣をしばきに、

 バツサン熟女は都会へ男漁りに、

 金髪碧眼幼女はビンを持って縁側に座っていました。



 おじいさんは、家族みんなの洗濯物を担いで川へ行きました。

 まず最初におばあさんと、バツサン熟女の洗濯物から綺麗に、丁寧に洗い始めます。

 おじいさんの洗濯物と一緒に洗ってしまうと、『匂いが移る!!』と言われてしまい怒られるからです。


 おばあさんと、バツサン熟女の洗濯物をえたおじいさんは、最後に金髪碧眼幼女のパンツを頭にかぶり、川へ頭を突っ込みました。


「がぼがぼ! がぼぼぼぉ!」

(かわいい娘のパンツは良く洗わないとな!)


 おじいさんは年甲斐も無く張り切って頭を振っていたために、手を滑らせて川へ落ちてしまいました。

 おじいさんは必死に泳ごうとしましたが、パンツがずれて視界をふさいでしまいます。

 どんぶらこ~どんぶらこ~と、おじいさんは川に流されてそのまま帰っては来ませんでした。


 

 山深くに入ったおばあさんは、殺気を感じてナタを抜き放ちました。

 殺気の先には三体の大きな熊が待ち構えていたのです。


「っひゃっはーー!! 今日は熊鍋じゃぁぁぁ!!」


 おばあさんは、鍛えられた体を惜しげもなく晒しながら、三頭の大きな熊と戦い始めました。

 しかし、この熊には何となく覚えがありました。

 おばあさんは戦いながら熊を観察していると、熊の顎に大きな傷があることが分かりました。

 なんと、この大きな熊は数年前に倒した親熊の子供だったのです。


「憎いか? 憎ければ己を鍛えろ。その時相手になってやる」


 昔にそう言ったのを思い出したおばあさんは、少し嬉しくなってしまいました。

 ですが、この程度で同情するようなおばあさんではありません。

 ナタを手にしたおばあさんは、一匹目の熊を斬り殺し、二匹目の熊を殴り倒しました。

 おばあさんは勇敢に戦いましたが、復讐に燃える最後の熊の手によってばらばらにされて食べられてしまいました。

 


 バツサン熟女は都会に舞い降りると、公衆トイレに長時間篭って化粧を直していました。

 いつもより厚く、さらに厚く、今度こそ男を落とすと念じながら塗られたその化粧は厚さ2センチにもなっていました。

 その原型も分からないほどに描かれた顔は、誰が見ても美しい女性に見えました。


 バツサン熟女は、パッド盛り盛りの偽巨乳に、清楚を装った黒髪のカツラを被り、カラコンを入れ、猫なで声を出し、やたらと多いボディタッチを駆使して、合コンで狙いを定めた年収一千三百万で三十代の医者を見事にだますことに成功しました。


 しかし、バツサン熟女には弱点があったのです。


「すみません。少し失礼します」


 男性に対してのみ使う声音こわねで席を立つと、お化粧を直しに行きます。

 お化粧の崩れがない事を確認したバツサン熟女が席へ戻ると、すっかり騙されてしまった医者が、バツサン熟女の顔をさすりながらささやきます。


「とっても綺麗だよ。この後も一緒にいないか?」


 バツサン熟女は『やったぜ! 後はガッチリホールドだぜ!!』と心の中で思いながら返事をしようとしたその瞬間――


――ぱき。


 と、触れられていた部分が耐え切れずに、厚い化粧がひび割れてしまいました。

 魔法が解けたバツサン熟女は泣き崩れ。

 魔法が解けた医者は『ファッ!?』と、叫びながら走って逃げていきました。



 夕方になっても誰も帰ってこない事を気にも留めずに、金髪碧眼幼女は縁側で夕焼けを眺めていました。

 その小さな手には黄色い液体が入ったビンが握られていました。

 暫くすると、大きな荷物を背負った中年が通りかかって、金髪碧眼幼女を見て声を掛けました。


「お嬢さん。今日は何本売ってますか?」


 いつも買いに来てくれる常連さんだと分かると、金髪碧眼幼女はニッコリと微笑んで答えました。


「今日は二本だけです」


 金髪碧眼幼女がそう答えると、常連さんは金髪碧眼幼女の足の間にあった空ビンを指さしました。


「三本あれば高く買い取りますよ」


 それを聞いた金髪碧眼幼女は、自分の下腹部をなでた後に自分の服の裾を捲り上げました。

 片手に持った空ビンの中に『ちょろちょろ』と音を立てながら、ビンを満たしていきました。


「ごめんなさい。今日はこれだけしか……」


 そう言って、ビンの半分まで溜まった物を常連さんに渡しました。


「ふぅー! ふぅー! いえいえ結構!

 さぁ! これは御代だよ!! またお願いするね!!!!」


 ビンを満たす行為を間近まじかでガン見ていた常連さんは、すごく興奮した様子を見せながら、お金がぱんぱんに詰まった袋を渡しました。

 常連さんはビンを荷物に詰め込むと、顔中に掛かった金色の雫を『ぺろ』っと舐めてから都会へ帰っていきました。


 このビンに入っている液体は、都会の紳士たちに大人気の商品で、一瓶で一ヶ月は暮らしていけるほどの高値で取引されていました。

 運良くそのビンが売られているのを見た紳士はこぞってこう言ったそうです。


『ようじょの蜜! ようじょの蜜をおくれ!!』


 ――と。



 夜になっても金髪碧眼幼女は月を眺めながら縁側に座っていました。


「あしたのパンツどこ?」

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