第10話 坊主まる儲け

遠征帰りのバスの中は、男女で席につくことが多い!

そういう伝統を作った先輩がいたようだ。

本音は嬉しいのだが、伝統だからしょうがないという素振りで皆が席に着く。


その時は、クラのM子の隣だった。普段、周りに仲間がいれば平気で囃し立てたりする男子も大抵が1対1だと途端におとなしくなる。「ケッカン」もK子の隣で赤くなっている。今日から3日間は、練習も休みなのでテンションも上がっているのだ。しかし明日何もすることがないとなるとお互いどうしようと算段をしはじめるのです。


結局、翌日はパーカッションのマサの家(寺)に遊びに行くことになった。防府市、防府天満宮を中心にした門前町なので寺が多いのだ。マサん家の隣も禅宗の寺で小学時代は、週1回は座禅に通っていた寺だが、中学生時代は、同級生のマサ君ちが、浄土宗系の寺ということで遠慮して行かなくなった。マサ君ちは、自分ん家のことを自虐的に「坊主まる儲け」と言っていた。


それを見るまでは、寺が儲かっているなんて思ってもいなかった。通された洋間は、場違いに設えられた立派なオーディオ・ルームでした。マサの目的は、そこの大量のレコードコレクションを片っ端から聞くことが目的だったのだ。そのころ、はじめて聞いた、マイルスの「ウォーキン」(初期バージョン)に衝撃を受けてました。少なくともまがりなりにトランペットを吹けるようにはなっていたが、マイルス・デビスによる人間技とは思えないアドリブフレーズと音を聞いてから、ますます自分の実力の無さに直面していた頃です。


http://www.youtube.com/watch?v=WMW3RloxEyA

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