第2話 オペラ歌手登場

1960年台の頃の吹奏楽部は、どの学校も男女比率が女子7割、男子3割くらいというのが普通だったと記憶しています。


その後、数十年も経過した現代だと男子が一人もいないというのも珍しくないようです。それでも、当時は、他の部と比較すると女ばっかりというイメージが強かったのです。その当時の中坊になりたての男子は、本音はウキウキなのに「しょうがないから入部したる」みたいな理由づけを自分に言い聞かせないと納得できないという微妙な感情をかかえていました。


後で、わかったことだが、この部は、結構な強豪校で毎年1,2,3位の常連校ということだった。まだ、金銀銅という評価方式が導入される前でした。金銀銅という制度になったのは、ちょうどこの頃で、私が2年生になった年からです。それまでは、1位、2位、3位という順位が発表されていたため、県下でハッキリとランクがわかったのです。


当時この部を取り仕切っている顧問のF先生は、音楽教師の元々オペラのソプラ歌手を目指していたという経歴の持ち主です。日々音楽室から、F先生の声が学校中に響き渡る時があります。現実のオペラは見たことも聞いたこともないが、オペラ歌手が登場というのは、毎日聞いているので、こういうことなんだ、というのは分かりました。全国の声楽コンクールで2位という経歴の持ち主だったと聞いたことがあります。普段の化粧もオペラ風の派手化粧で生徒間では「オバケ」と呼ばれていた。実は、とっても怖い先生で他校でも有名な女先生だった。私は、半分騙された気持ちで今頃になって「えらいことに、なってしまった!」と慌てても後の祭りだったのです。


実は音楽がとっても苦手な自分だったのをころっと忘れてたのです。


楽譜やなんて読めるはずもないし、ましてや初見で楽器を演奏するなんてのは、夢のまた夢なのです。


心の内は「これから、どうする!」


今更「辞めます」やなんて言えるほど度胸もない。


そのうち全体練習にも参加しろっちうことで、

いきなり譜面を渡されてもなあ・・・途方にくれていました。


それを見透かしたように一貫しているのは有無を言わさないことで徹底していたのです。当然、楽典についての説明なんかは、一切無し!!音を出す練習のみなのです。楽譜は、読めて当たり前の世界なので周り連中を見よう見真似しかないんです。これが、守破離の守であったと気づくのは、ずいぶん後になってからのことです。


この前年までのコンクールでは、県で1位,2位,3位というランクを容赦なく付けられていた。金銀銅などという曖昧な評価になるので反対する人々も多かったということです。時代がそういう時期にさしかかっていたということです。ちなみに当時の我が校は、県下で常に3、4位に位置していた。この年以降は、金銀銅のうちのどれかで評価されるので、県下でどの位の位置なのかが曖昧になる。

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