拾捌

 十二月十九日

 明日にこの日記帳を優奈に託すことになっているので、これが最後の日記だ。

 書きたいことは山ほどある。でも山ほど書いていたら夜が明けてしまうし、だいいち体がもう持たないので、私が好きだった三人へのメッセージを記して、それで最後とする。


 由希へ。

 私の妹として生まれてきてくれてありがとう。

 だめなお姉ちゃんだったと思うけど、私はあなたの屈託のない笑顔にいつも力をもらっていたわ。本当に大事で、かわいくて、自慢の妹でした。

 それなのに、あなたの成長を見届けることができなくて悔しくて仕方がない。本当にごめんなさい。

 きっと今頃、あなたはこの日記を見ていることでしょう。どうか自分を信じて、まっすぐに生きてください。あなたは本当に、素敵な子だから。


 優奈へ。

 思い出はつきないわね。私のほうが一つ年上だったとはいえ、会話はお互いタメ口だったし、友達のような……いや、本当の姉妹のような関係だったわ。何度も喧嘩して、何度も笑いあった。

 最後はギクシャクしたこともあったけど、それでも私にとってはあなたは一番の親友です。どうかそれだけは忘れないでください。私はあなたのことを嫌いになったことなんて、友達になってからは一度もないから。

 色々なことを背負わせることになって、ごめんなさい。でも私がここまで頼れるのは、あなたしかいないの。

 どうかよろしくお願いします。どうか由希と隆一を幸せにしてあげてください。


 隆一へ。

 感謝の前に罵詈雑言を浴びせたくなったのはなぜかしらね。自覚があるのなら胸に手を当てて悶絶していなさい。

 たぶんこの日記を見ただけでは、あなたのどこが良いのかさっぱりわからないでしょう。ただのクズにしか見えないでしょう。もし誰かにこの馬鹿がと言われても、あなたは絶対言い訳をせずに、自分が悪者であるかのように振舞うでしょうね。

 でもそれでいいの。あなたはどうしようもないヘタレでもいい。あなたのことを好きになるのなんて、優奈と私だけで十分だわ。二人でさえこうだったのに、これ以上人に好かれようなんて思わないことね。

 最後に一つだけ、約束させて。

 もしどこかの世界で私とまた会う日が来たら。今度は私とウェディングベルを鳴らしましょう。

 ずっとずっと。私はあなたのことが好き、だから。

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