とりあえず、話し合いをせねばなるまい。

 犬らは、顔をつきあわせて、ボソボソとやりはじめた。私は、それをながめながら、考える。

 私がゲージの外に出られるのは、ご主人が私を取り出す時のみだ。狭苦しいカゴに入れられれば、さまざまな獣のいる医者に運ばれる。狭いが丸い、ハムスターボールというものに入れられれば、ご主人のなわばり中を、かけまわる散歩となる。手のひらや、膝などに乗せられることもある。

 いずれも、ご主人の気分と意思により、おこなわれる。

 つまり、私がここにいるのは、ご主人の意思だ。ゆえに、私の場所が用意されていて当然なのだ。

 犬らは、その場所を知らぬのだろうか。

「わからぬようであるのなら、みずから探しにゆく」

 犬らに声をかけると、取り囲まれた。

「まあ、まってくれ。はじめて見るハムスターが、街中でうろついていたら、ほうぼうでおなじ質問に合う。どうやら、お互い敵ではなさそうだ。……モケモフさん。ちょっと、俺たちと来てくれないか。こちらも危害を加えないと、約束をしよう。別の場所で、くわしく話をしたいんだ」

 灰褐色の毛並みの犬に言われ、なるほどとうなずく。この犬らは、おとなしいようだが、犬の中には、突然に吠えかかってくるものもいる。そういう犬に遭遇すると、やっかいだ。

「申し出を受けるとしよう。私も、ここのことを、色々とたずねたい」

 犬らは、ほっとしたように気配をゆるめた。

「なら、モケモフさん。俺たちに、ついてきてくれ」

 敵意はないが、警戒は解かない。

 そう示すように、犬らは私を取り囲んだまま、話し合いの場へ足を向けた。

 

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