番外:風俗嬢

 読者層に男性を想定している本作にあっては、やや番外とも言えるが記しておこう。


 世に生きる女性陣に問いたいが、夢を目指す過程アルバイトで一時でも「所詮は性の対象としてしか見られてはいないのだ。或いはそれを対価にする事でしかのし上がれないのだ」そう感じた事は無いだろうか。


 居酒屋でバイトをすれば、泥酔した客からあれやこれやと絡まれ、夢を語れば頷きながら鼻息荒い男どもが寄ってくる。彼らは高説を長々と垂れはするが、その手が回すのは相手の腰だ。男なんて所詮はそんなものではないだろうか。※無論筆者も男であるし、まさにオフパコの意志に満ち溢れてはいるが、諸般の事情で相手が同性であるに過ぎない。


 何が言いたいのかと言うと、どうせ同じ嫌な思いをするのなら、その何倍も稼いじまおうぜというだけの話だ。体中に焼き肉の臭いを染み込ませ、手もギトギトに汚し、へとへとになって握りしめる諭吉にすら届かないバイト代と、その半分の時間で手にできる数枚の諭吉。天秤にかけて考えてみようとは思わないだろうか。




□求人媒体か、スカウトか。

 求人媒体については、最近は駅前に堂々と広告が貼られたり、宣伝用の車もあちこちを走っているから、昔ほどは抵抗はなくなっているものと思う。※キャバクラやガールズバーに至っては、もうバイトルだとか一般の媒体にすら顔を出している。


 一方でスカウト業だが、こちらは随分と厳しい。池袋や新宿での声かけが規制されはじめたことで徐々に南下し、筆者が面接を受けに行った二年前には、すでに渋谷まで活動のラインは下がっていた。


 この場合どちらを選ぶかという話だが、今ならば明らかに媒体だろう。いつ辞めてもいいように、連絡先を交換する相手は最小限のほうが良い。スカウトを利用するとすれば、本当にこの世界にどっぷりと浸かろうという覚悟をした上での、マネージャー的な位置づけとして考えよう。


 筆者がかつて勤めていた風俗店も昔はスカウトと契約していたそうだが、バックの支払い(※スカウトに払う契約料。女の子の出勤や稼ぎに応じる――が割に合わず、媒体一本に絞っていた)




□業種について

 ガールズバー、キャバクラ、おっパブ、オナクラ、出会い喫茶、ライブチャット、ヘルス、デリバリーヘルス、ハンドヘルス、ソープ。こんなところだろうか。

 とは言え中の人をやった事が無い業種については言及の仕様が無いので、基本は店舗型のヘルス店について述べていく。




□稼ぎはどんなもんだろう

 筆者の居たライトサービスのハンドヘルス店でも、人気の子は1日50k程度は持ち帰っていた。おおよそ時給が10kオーバーと考えて欲しい。


 一方で人気嬢以外となると20k前後となるが、それでも時給にすれば3k4kの世界だ。当然サービスが重くなればなるほど、稼ぎも良くなる。見た目に自信

なければソープに行けと言われるのは、その所以だ。


例:

お触り無しの手コキ10分:1k

お触り有りの手コキ10分:1.5k


 ちなみにヘルス(全裸でのサービス)の場合だと、サービスが軽めの場合は40分で5kほどのバックと思って欲しい。ここにオプション代や指名料が組み合わさって収入となる。


例:

40分:5k

50分:7k

60分:9k




□指名料って?

 女の子のお店には、指名料なるものが存在する。これにも幾つか分類がある為に記したい。


・写真指名:要はいちげんさん。この時の指名料金は、お店側の利益となる。

・本指名:リピーター。この時の指名料金は、女の子の利益となる。


 他にネット指名などで細かく分かれている場合もあるので、きちんと確認はしておこう。トラブルとして多いのは、指名料金をフロント側がくすねるケースだ。

 

 二度目以降の客とあたった時、可能性は二つある。一つは、客があなたを指名した場合と、二つはフリーで入った結果、偶然当たったというケースだ。精算の際に指名料金が付いておらず、おかしいなと思ったらフロントや店長に聞いてみても良いだろう。最近大手のチェーン店は、店員の不正を未然に防ぐべく、録音を行っているケースも多いからだ(最も、そんな店ならばさっさと辞めてしまったほうが良いかと思うが)


 


□オプション代で効率よく稼ごう

 手コキの場合、オプションを如何に付けられるかが稼ぎに関わる。具体例を示そう。


・お触り無し手コキ:10分=1k

・オールヌード:2k

・本指名:1k


 この場合、つまり10分のサービスで4kを稼いでいる事になる(ちなみに人気嬢ほどオプションの積み上げ方が上手い)




□人気嬢に学ぶ稼ぎ術。

 筆者は偶合にも当時No1だった嬢と仲良くなり、彼女が退店する際に一冊のノートを預かった。そこを紐解いてみると、日々の稼ぎ、反省点、客の特徴などが潰さに書かれており、どうやらこのマメさは全ての人気嬢に共通している様だった(これは筆者が主張ホストに身をやつした際にも充分に活かされている)


 なお女の子ブログを書く際は、その日会った客との話題を書くのが良いだろう。気をつけて欲しいのは、自撮りをする際には毎回同じアングルには決してしない事。容貌の欠点が客に丸わかりになってしまう。




□では可愛くなければ売れないのか

 そうとも限らない。筆者の知る限り、歴代のNo1嬢は皆美女というほどの外貌では無かった。これは男娼の世界でも言える事だが容姿=人気では無い。提供する気遣いやサービス内容こそが、リピーターを生み生活を支えてくれるのだ。

 

 実際見た目だけの女の子は、初動こそ予約が殺到するが、やがて目に見えて指名の数が減っていく。なぜなら可愛いだけの女の子は、どの店にも入れ替わり立ち替わり入店して来るからだ。新人であれば客も安く遊べる。代わりがいる女の子に、わざわざ高い金を払おうという客もいない訳だ。




□見た目で諦めるべきなのか

 あなたがそう思うのならそうかも知れない。ブスだと自虐したまま何の努力もしない人間は、もうどうしようも無くそのままだし、変わろうと思うのなら機会もある。どういう事かというと、稼ぎたいか稼ぎたくないか。目的の為に金は要るのか要らないのか、という一点だけなのだ。

 どうしても目的達成の為に、金も時間も要る。それに覚悟だってある。そういう人以外に、水商売を勧められる訳も無い。




□なら創作目線で見た場合、どのサービスが良いのか?

 ある意味本題だろう。つまり勤務中に余暇が生まれる仕事はどれかという事だ。例えばガールズバーの類は性的なサービスこそ無いかも知れないが、看板を持たされたり呼び込みをやらされる。待機中に幾らかの雑用も生まれるだろう。


 そういう意味ではキャバクラやデリヘルには呼び込みは無い。しかし待機の為の個室は無く、余っている全員が一堂に会する訳だから、面倒な人間関係を含め、自分の世界に入り込めない問題が発生する。


 チャットなどは一見安全にこそ見えるが、相手方に録画録音されている可能性がある。身バレの材料を与える危険性としては、実際のところコレがダントツと言っていい。


 そうなると必然的に落ち着くのは、やはり前述の通り店舗型のヘルス店だ。店舗型の場合、出勤の際各自に個室が割り当てられ、その中で客を待つ事になる。 暇な時は寝ていて良いし、携帯を弄ったり本を読んでいても良い。要するにここで創作の為の時間を作ることが出来るわけだ(実際、この待機時間で学校の課題を進める女の子も居た)




□店舗型が良い理由

 風俗業初心者にあって、店舗型を勧めたいのには他にも理由がある。まがりなりにも店員がフロントを預かってくれている為に、いざという時助けを呼ぶ事が出来るのだ。風俗店のコースにはそれぞれルールがあるし、本番行為は原則的に禁止でもある。だがそれらの規則を無視し、女の子への本番強要(※本強)を迫る客も存在する。事実筆者も、フロントに従事する半年の間に数度、かかる事由で客を囲み、免許証のコピーなどを取った事がある。

 

 一方デリヘルなどは、現地に直接向かう手前、派遣先のトラブルに店側が対応出来ない可能性も生まれてくる。もちろんそんな危険などそうそうあるものでは無いが、自分のテリトリーに客が居るのと、相手のテリトリーに自分が居るのとでは安心感も違うだろう。




□それはそうとして、周囲にバレはしないのか

 基本はバレない。店舗側もアリバイ会社を用意するなど万策を講じている手前、ただしバレるには幾つかの分かりやすいケースがある。


親友・・に話す。

 この子だけは私の親友。そう思っている友人に打ち明けた結果、秘密の秘密が巡り巡って周囲に伝わってしまうパターンが、実は一番多い。筆者の如きは、女同士の友情なんてのはこの程度に思っているから、フィクション上とは言え綺麗な百合には一ミクロンも心を動かされない。好きなモノは嫉妬と羨望。ドロドロのウテナタイプの作品だ。


・彼氏に見られる

 携帯で自分の出勤をチェックする。開いたままにしているそれを、彼氏に見つかって詰問にあう。これが二つ目に多い。大概は男の稼ぎが少ない為に女の子が働かざるを得ないというパターンな訳だから、そこで自らの不甲斐なさを責められない男なんぞとはとっとと別れてしまえと思う筆者ではあるが、フロントの手前うんうんと頷いて聞いてあげる他は無い。


・自撮りでバレる

 せっかく補正や目隠しをしても、店舗ブログにて自撮りで素顔を晒す女子がいる。あなたの友人や知人だって、男である以上風俗店のサイトをチェックして回っているかもしれない。こうして親類にバレたというケースを、筆者は風俗店で一件、出張ホストで三件ほど確認している。




□バレない為にどうするか。バレてしまったらどうするか。

 もし学生であるとすれば、途端に羽振りがよくなったアピールをしない事。夜の仕事では派手なメイクで、代わりに普段は地味に。生活圏内から離れた店舗での勤務を心がける事。


 ただしこれは飽くまで創作者として「万が一バレたとしても、ネタにする覚悟がある」というケースに限った話で、例えばあなたの目標がアナウンサーだとか公共に類するものであった場合には、そもそもこれらの仕事を選ぶべきでは無い。


 ちなみに出張ホストの場合、バレてしまった同僚がした事と言えば「写真の名義貸しを行っている」という躱し方だった。かなり苦しくはなるが、一応そういう手も無い訳では無い事を断っておく。




□総括

 水商売は一度足をつけると、中々抜け出せない沼とも言われている。理由はルーズな勤怠に当たれば大きい稼ぎ。これに毒された結果一般職が手につかず、結局は戻ってきてしまうケースが多いからだ。

 

 筆者の母親も水商売のクチではあったけれど、やはり男性トラブルは多かった。 ゆえに本当に自分の人生を捧げても成し遂げたい何かがあるのだとか、きちんとした覚悟と自制が無ければ、足を踏み入れては行けない世界だとも思う。


 筆者は、自身の渡世もあって水商売に対する嫌悪感は然程ないし、女性が働いていた経験があったからといって何だと感じるタイプではあるのだが、どうやら寛容を自称する・・・・・・・世間は違う。男共は自分は風俗で性欲処理をする癖に、いざそこで働いている異性はというと露骨に侮蔑を始める。だから些かでも迷いがあったり、将来夢を諦める可能性を考えてしまっているのなら、わざわざ虎穴に飛び入る事は無いだろう。


 ただそれでも尚やらねばならん。やる為に金が要るのだ。そう叫べるあなたの為にだけ、この道筋を記しておきたい。花が花として愛でられる時間は、長い人生の中でもごくごく僅かでしか無いのだから。




 追伸。

 昔「あのさあマネジャー。知らない男のちんこ舐めれるぶっちゃけ」と愚痴を零してくれた人気嬢A氏。なるほど君の苦労も分かった。頑張っていたのだな君たちも……

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