　出番じゃないよ、デバンだよ。　

　※日雇いの一つでもある、デバン（Devanning＝コンテナからの荷降ろし作業）を指す。品川や東京流通センター側など、主に物流の拠点での作業となる。

　そもそもコンテナとはなんぞやって話にもなりうるので補足しておくと、サブカル的なアレでは、よく密航者や身売りされた子どもたちがすし詰めにされているあの仰々しい、港によくある長方形の箱の事だ。

　もちろんそんな物騒なものが混入している訳も無く、実際に降ろすのは大量のダンボールや家具、パレット（※フォークを挿す穴のついたすのこ状の板。プラスチック製が主）に載った重貨物など命の温もり無い無機質な物体郡である。

□業務内容

　朝から夕方にかけて到着するコンテナの荷物を、ひたすらに降ろしてはパレットに積み、やがて降ろした荷物を別の業者が取りに来ては、今度はそっちに移し替える、という単純な作業の繰り返し。※なおコンテナには20フィート（約6メートル）と40フィート（約12メートル）の二種類がある。当然20前者が多いほうが仕事自体は楽になる。

　とは言え送り主の殆どが中国だから、貨物の整頓については期待しないほうが良い。ボロボロに、或いは乱雑に、型番など関係なしに積まれくるそれらの状態によって、デバンの難度もころころと変わるからだ。

　現場の規模にもよるが、一日で15本（コンテナ数）前後が入る場所は、1コンテナ辺り5名（荷降ろし3名、フォーク1名、チェッカー1名）一組となって作業にあたる。

　チェッカーとは文字通り貨物のチェックを行う人物で、看板（どこそこのなにそれが何個入っていて、状態はどうか）といった精査に従事する。※ざっくりだが、個別のダンボールがカートン（CTN）カゴや木箱に入った貨物はパレット（PLT）間の子がパッケージ（PKG）といった略号となる。

□マスク・軍手は必須

　コンテナの中は薄暗くホコリまみれで、マスク無しには喉がやられてしまう（筆者は一度マスクを忘れたが、その結果痰がつまり翌朝まで風邪に近い症状に陥った）また、大量のダンボールを持ち続ける都合上、一双200円半ばの作業用手袋は必須で、これをケチって白の無地などにすると、仕事にならず大目玉を喰らう羽目になる。

□土木ほどでは無いが、怒声は飛びやすい現場

　物理的暴力は流石に無いが、余りに覚えが悪かったりちんたらと動いていると、何をしているんだと怒声が飛ぶ（特に過酷な現場であればあるほどその傾向は強い）事実、軽作業と思い込んだのか私服でやってきて初日でグロッキー、もう二度と姿を現さないといった前出の遺跡発掘によく似た光景を、筆者も何度も目の当たりにしている。元プロボクサーの居た現場などは、指2本でパチンコ台（数十キロする）を持ち上げながら檄を飛ばされるものだから、なるほどこれは太刀打ちが出来ないとおののいたものだった。

□スポーツドリンクと着替えも持って行こう

　軽作業以上土木未満といった趣が強い本業務。周りの目を気にしなければ、家から作業着でも一向に構わないが、行きと帰りの電車、それから家路に至る諸々を考えると、私服で出て現場で着替え、終業後はまた着替えて帰るという流れが良かろうと思う。安全靴は貸与の場合が多いから、着替えを一着と替えの靴下を数足、それにお気に入りのスポーツドリンクで万全の構えを果たして行こう。

□総括

　恒常的にあるデバンの現場は、余り当たりとは言えないケースが多い。それは軽作業と同じ日給で、にも関わらず業務内容が厳しい事による、そんな中レギュラーとして張り付いているのは、体育会系寄りのパット見はキツい性格の先輩たちだろう。

　だが彼らに一度認めて貰えれば、とても良くしてくれる事もままだ。その辺りもかつて体験してきた肉体労働系の現場に似通っている。怒声や過酷な労働に耐え、試練を乗り切った人間はある種の仲間。誰にでも出来る軽作業と違い、人を選ぶデバンの現場を確保しておく事で、いざという時の金策が容易になる事は確かなのだ。

　もし諸兄が即金の仕事を手元に残しておきたいのなら、少々過酷な現場であったとしても不抜の精神で耐えぬいて見る事をお勧めしたい。