中学に入ってからも状況は変わらなかった。変わらないどころか、郁彦を取り巻く女子達のせいで、私と郁彦の仲は険悪になりつつあった。といっても、私が一方的に避け出しただけなんだけど・・・

「なー、何か最近、お前俺無視してない？」

「してないよ。話したくないだけ。」

「何だよ、それを無視って言うんじゃ・・・」

「あんたと話してると、取り巻きうるさいから。」

「取り巻きって、俺が頼んで来てもらってるわけじゃないし。」

「だけど、嫌がりもしないじゃない。」

「まぁ、来るものは拒まず、去るものは追わず、ってやつか？」

「あっ、そう。」

こいつの、こういうところも好かれる要因なんだ。ということを、郁彦は気付いていない。そしてそれが、どんどん二人の距離遠ざけていることも。私はただ・・・友達としてでいいから、普通に接したいだけなのに・・・

「なぁ、もしかしてまたいじめられたりしてんの？だったら言えよ。俺がキッチリ・・・」

「キッチリ何？来るものは拒まないんでしょう？」

「いや、それとこれとは話が・・・」

「いじめられてない。私には‘学園七不思議‘って強い味方があるから。」

「それって・・・」

「いじめられもしないけど、本当の友達も出来ない。」

「詩織・・・」

「郁彦もさ、もう子供じゃないんだからわかるでしょう、自分の置かれてる状況。だから・・・私にはあんまり話しかけないで。私に同情してくれるなら放っておいて。去るものは追わないで、お願いだから。」

ここまで言えば郁彦だって、私が何を言いたいのかわからないはずがない。

「・・・わかった。」

「じゃあね。」

「だけど詩織。」

振り向いたら目の前に郁彦の顔があり、とびきりの笑顔でこう言った。

「わぁっ！な、何なのよ、いきなり！」

「バーベキューはすんからな！」

はぁ・・・このタイミングで言うか、こいつは！何がバーベキューだ！人の気も知らないで、バカ彦！あっ・・・そういえば・・・高学年になった頃から、私だけ行かなくなったんだ。二家族恒例のバーベキュー・・・楽しかったな、バーベキュー・・・何て感傷に浸る暇さえ、私は与えてもらえない。背中を向けた先、振り向かなくたってわかる。私が側を離れた途端、ここぞとばかりに待機していた女子が郁彦に近寄って来たことくらい。あんなの見せられたら・・・郁彦の側にいていいのはやっぱり私じゃない。思った・・・