季節の妖精

三月近いというのに、大雪、氷点下。

せっかく都会から田舎へ移住してきたのにこれはきつい。

今年は春が遅いようだな、などと思いながら庭いじりをしていると、スコップの先に変な感触が。


掘り出してみると、赤ん坊くらいの大きさの人形のようだ。

頭に花だのつくしだのをかたどった、妙な冠をしている……と思ったとたん目を開けてしゃべりだした。

「こんにちは、ボクは『春の妖精』さ! ちょっと寝坊しちゃった。起こしてくれてありがとう!!」

言うなり妖精はいきなり空中に飛び上がると、どこかへ行ってしまった。

すると、たちまち気温が10℃くらいまで一気にあがったのには驚いた。

しかも庭のあちこちから、急につくしや花が見る間にニョキニョキ生えてきたのである。

「春の妖精? そんなものがいるのか」

感心していると今度は突然、大きな物音。

近所でガケ崩れがあったらしい。


あわてて駆けつけると山が大きく崩れていて、人だかりができている。

とにかくすごい土煙……と、中から全長20m近い巨大な影が現われた。

見ると二足歩行の大きなトカゲのような生物?である。

「うわ~な、なんだ!?」

すると、なんとトカゲがしゃべった。

「まあまあ、落ち着いてください。私は『ジュラ期の妖精』です。」

「よ、妖精~!?」

「すっかり寝坊しちゃいました。おや、恐竜全滅しちゃってるじゃないですか。まいったな」

妖精?はぶつぶついいながら、空中に舞い上がると

「お騒がせしました。さようなら~」

すごいスピードでどこかに行ってしまった。


その姿が見えなくなると同時に、気温が一気に20度ほど上がった。

……そして、あちこちから聞いた事もない大型の動物のほえる声が上がり始めた。

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