第5話 ……もうオマエも、分かっているはずだ……


頭の中で何かが囁き続ける。



NHKの深夜番組……オイコレミロヤとかいう番組名だったか……

そこにレギュラー出演してたロン毛のお笑い芸能人……

あいつが書いた『火鼻』だっけか。いやすこし違ったかな……

芸人業界の内幕は鼻から火が出るが如し……とかいう内容の……まあいい

そいつが大売れ。

販売部数の記録更新。

テレビのワイドショーでは特集が組まれ、

出版社は左うちわ……


文学を志す新人の登竜門……

菊池寛や石川達三の時代から延々と続いてきた、直木賞と並ぶ芥川賞……

その芥川賞が、このザマだ。


確かにな……一定のレベルには達してたさ。

読む価値の無いゴミってワケじゃなかった。

だがな――


騙されねえ。


そこから浮かび上がる――現実。

表現技法も内容も文学も面白さもクソも無い、目立った者勝ちの、……現実。



あれにオマエも怒って、2ちゃんねるに「文学は死んだ」だの、書き込んだよなぁ?



――覚えは、あった。



そして今……。

何日も掛けてカクヨム廻って読みまくったんだろう? 

カクヨムの作家連中の方が、芥川賞のロン毛芸人よりも、よっぽどマシな作品書くヤツが居たんじゃないか……?



――たしかに、居た。



そいつらが、何故★0のままなんだ? なぜ誰にも評価されない? ――良かったらこっちにも教えてくれや。



――そんなの、俺に、聞くな……。



★相互狙いと思われるんじゃ無いかと――

この作品に自分が最初に★を付けてもいいのだろうかと――

迷惑になるんじゃ無いか――と

★を付けるのをオマエも躊躇っただろう……


あるいは、そんなもっともらしい理由を付けて――

自分と同じ★0の苦しみを――味わわせるためか……?



――ッ!



人を騙してはいけない……人の裏を搔いてはいけない……人を陥れる必要も無い

――そこだけはオマエも嫌いなハズだ。

それによ……もしそんなマネをすりゃあ、どこぞの名無し様たちに生涯ずっと、ぶっ叩かれる。



…………。



ただ――目立て。

売り込め。

プライドを捨てて……

オレの作品を読んで下さいっ! と

頭を下げ……ホコリを捨て……道化を演じ……ただひたすらに……

それが――お前の憧れ続けた、小説家の本当の姿だ……



――違うッ!!

私は頭の中の虚空に叫んでいた。



……違わねえよ。

またしても、何かは囁く。



……もうオマエも、分かっているはずだ……



――沈黙。



しきりに頭の中で囁いていた何かは、いなくなっていた。


私は悄然としながら

カクヨムの小説管理を開く――


★は、依然として0のままだった。



――そう、この頃から私は――少しずつおかしくなっていった。

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