第8話 能ある虎は話合う

「シャーナ!、シャーナ!」

「ほら、行くわよ」


四肢を必死にばたつかせる小さな白虎の首の背を器用に加えて雌の小虎は奥へ奥へと進んでいく。

その力強さは将来の有望さを思わせる。


「オレ、シャーナと一緒がいい!」


抗議の声を挙げた黒虎を噛み殺さんばかりの眼力でアニラが睨み、それに負けた黒虎がピタリと口を噤む。


「行くわよ!シャーナにメイワクをかけない!」


その剣幕に逃げる機を逃した黒い仔虎がトボトボと着いて歩く。


そんな三匹の姿をシャーナはほっこりとした気持ちで見送った。





「これからだんごをはじめます!」

そう高らかに宣言するアニラに2匹の子虎は首を傾げた。

「だんご?」

「おれしってる!甘くておいしいやつ!」


疑問符を頭に浮かべるクジャに対し、ヴァルが元気良く答えを返す。


「ちがうわよ!みんなではなしあうのがだんごなのよ!」


ヴァルの答えに文字通り噛み付かんばかりにアニラは否定を返した。


「えー、でもシャーナが言ってたぞ!だんごは甘くておいしいって」

「シャーナがいうならそれもだんごよ!」


アニラがプイっとそっぽを向く。


「アニラのだんごはちがうの?」


クジャが不思議そうにアニラへと疑問を投げると、アニラはうー、と唸る。


「みんなでないしょばなしするのがだんごってママが言ってたもの」

「ボクもそれしってる!オトナがはなしあうのをだんごって言ってた!」

「でも、シャーナがあまくておいしいって……なんだろう?」


その場に疑問を伴った沈黙が訪れた。


「わかった!」


叫んだクジャに2匹の子虎の視線が集まる。


「オトナがないしょで甘くておいしいのを食べる為にはなしあうんだ!」

「「なるほど!」」


3匹は一斉に腑に落ちた。とばかりに笑顔を浮かべた。


「それで、なんのはなししてたんだっけ?」

「だんごは甘くおいしくって、みんなにナイショってこと?」

3匹は示し合わせたように首を傾げた。





_____________________________________

補足

◯談合

×団子

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